数学切り抜き帳
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道の問題 その1
桜花学園大学教授
岩井 齊良
 次の問題を考えてみよう.
 図のような街がある.A 地点から B 地点まで最短コースで行くとき,P地点を通る確率を求めよ.

 よくある解答は次のとおりである.
解1 A 地点から B 地点に行く最短コースは東行き→5個と北行き↑4個の順列で表されるから,その場合の数は,
       5+4 C 5=126 通り
 A 地点から P 地点までの最短コースは,
       3+2 C 3=10 通り
 P 地点から B 地点までの最短コースは,
       2+2 C 2=6 通り
 よって,求める確率は,
        □

解2 ある地点で,東行きと北行きの2つの選択肢があるとき,どちらかのコースを選ぶ確率は1/2である.

        

 したがって,A地点からP地点に行くどのコースも選ばれる確率は である.
 また,A地点からP地点に行く道は 3+2 C 3=10 通りあるから,これらが選ばれる確率は,
        □

 解1 と 解2 では答が違うがどちらも正解である.
 答が違うのは,なにをもって「同様に確からしい」とするかという解釈の違いによる.
 サイコロを振るとかカードを引くという問題であれば,自然な解釈によって,なにをもって同様に確からしいとするかただ 1 通りに決まる.
 しかし,この問題の場合は 2 通りの解釈があって答も 2 通りあるのである.この問題に出会う人が「 A 地点から B 地点までの最短コースは126通りある.1 から126までのカードを作って,このカードを引いてコースを決めよう」と考えれば答は 解1 のようになる.別の人が「東行きと北行きの分かれ道にきたらコインを投げてコースを決めよう」と考えれば答は 解2 のようになる.
 この問題の場合,どちらの解釈が正しいか決め手がない.
 決め手はないが,人によってどちらが好きかという好みはある.僕は「出たとこ勝負」,「行き当たりばったり」という性向なので 解2 が好きである. 解1 は好きになれない.