数学切り抜き帳
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片手で31まで数えられる
桜花学園大学教授
岩井 齊良
 指折り数えるということばがあるが,片手(かたて)でいくつまで数えられるだろうか.
 「5つまで」と思うのは気が早い.

 じつは31まで数えられるのである.
 次にそれを紹介したい.

 あせらずに基本からやっていこう.
 次の指の折り方が 1,2,3 である.

 目の前で実演するのが一番わかりやすいのであるが,それはできないのでこの図を見ながら,諸君が実演してみてください.指の体操だと思って数回繰り返せば感じがつかめると思う.
 次は7までやってみよう.指を1つも折らない状態を0として0から7までを図に表す.

 この図をただ見ただけでは何もわからない.じっさいにこの通り指を折ってみて,からだで覚えてもらう以外に伝える手段はない.
 
 ここまでの指の運動はなにを意味しているのだろうか.これを別のイメージで説明しよう.

 1つ玉のそろばんというものを想定しよう.普通のそろばんの上の部分だけの道具である(下図).

 この図が1つ玉そろばんの0(ご破算,クリア)の状態である.ここに1が入ると次の図になる.

 さて,ここに1を加えたいのであるが,最後の桁はすでに満席の状態である.しかたがないので,ここで「繰り上げ」という手を使う.
 ここで普通のそろばんの繰り上げについて学習してみる必要がある(くわしい説明はここを押してください).
 最後の桁を0の状態に戻し,1つ上の桁に1を入れる(下図).

 これが 1+1=2 の状態である.
 ここにさらに1を加えるとすると,最後の桁が空席の状態なのでここに1を入れることができる(下図).

 これが 1+1+1=3 の状態である.
 ここにさらに1を加えると,最後の桁は満席の状態から空席の状態に戻り,1つ上の桁に1が繰り上がるが,1つ上も満席なので,ここも空席となりもう1つ上の桁に1が繰り上がる(下図).

 これが1+1+1+1=4 の状態である.
 同様に1を加えていくと,そろばんの状態はどうなるだろうか考えてみてください.
 0から7までの結果は次のようになる.

0 

1 

2 

3 

4 

5 

6 

7 

 1つ玉そろばんの話はここまでとする.最初の指の運動に話を戻そう.
 ここまでは1つ玉そろばんという特別な道具を使ったが,それを使わなくてももっと手近な道具である指を使ったのが最初の話である.

 はじめの指の運動を一連のドラマとして考えなおしてみよう.   
 一番はじめは0,これは何も入っていないご破算の状態である(下図).

0 

 ここに1が入る.親指がいつも1が加えられる入り口である(下図).

1 

 ここに1を加えたいのであるが,1の入り口である親指は目下取り込み中(入ってます)である.しかたがないので,無理やり1を入れて繰り上がり処置によりこのピンチを切り抜ける.この場合、繰り上がりというのは人差し指を折ることである(下図).

2 

 次に自然に1が加えられる(下図).

3 

 今度は親指も人差し指も取り込み中である.ここで無理やり1を入れると親指と人差し指の地点で繰り上がり現象が起こる(下図).

4 

 以下同様である.
 手のひらを1つ玉そろばんと同じ装置と考えると,指の運動に上のような意味がつく.

 最後に片手で31まで数えられることを図示しておしまいとする(下図).
 ここには0から31まで32通りの状態がある.