数学切り抜き帳
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ペントミノから展開図へ
桜花学園大学教授
岩井 齊良
 立方体の展開図が全部でなん種類あるか調べてみよう.
 その作業に入る前に,まずペントミノについて調べてみよう.

 次のように正方形が5個つながった形の図形をペントミノという.

 ペントミノは全部で12種類あることが知られている.
 このことを確かめてみよう.
 そもそも,正方形が2個つながった形は1種類しかない.

 英語ではこれをドミノという.ドミノたおしのドミノである.われわれには,おなじみの畳の形である.
 次に,正方形が3個つながった形といえば,次の2種類に限る.

 じっさいに,ドミノに正方形をくっつけるとしたら,この2種類のもの以外はできないから,そういう結論になる.
 これらの図形にさらにもう1つの正方形をくっつけて,正方形が4個つながった形はどれだけあるか調べてみよう.
 最初の図形から生まれるのは次の3種類である.

 あとの図形から生まれるのは,次の4種類である.

 ここでダブっているものを除くと,結論は次の5種類になる.

 最終段階は,これらの図形にもう1つの正方形をくっつけて,なん種類の図形ができるか調べる作業である.
 くっつける個所は次の図のマークしたところである.
 ただし,各図形について同じ形が生まれる場合は取り除いてある.

 見かけ上は22通りあるが,さらに同形のものは取り除く.下の図の青いマークの個所が取り除いてよいものである.

 赤いマークが12個残った.
 したがって,次の12個がペントミノのすべてである.

 これらの図形には,それぞれ,アルファベットの形に似せて F,I などの名前がつけられている.
 名前があるというのは有り難いもので,12個の形を忘れても,アルファベットを手がかりに思い出すことができる.

 われわれの目的は立方体の展開図をすべて決定することであった.
 立方体の展開図は6つの正方形がつながった形であるが,そのうちの1つの正方形をはずすとペントミノになる.
 そのペントミノを組み立てると,上部の開いた箱になる.

 そこで,12個のペントミノのうち,このような箱になるものを探してみよう.箱にならないものは捨てる.

 これらの図において,青い正方形が箱の底になる部分で,赤い線が箱の口になる部分である.
 赤い線のところにもう1つ正方形をくっつけると,この正方形が箱のふたとなり立方体ができあがる.
 このようにしてすべての展開図が求められる.
 ダブっているものを取り除いて整理すると,結論として,立方体の展開図は次の11種類である.

 以上の話で私が言いたいのは,たんに立方体の展開図が11種類あるという結論ではなくて,問題解決の心構えということである.
 問題解決にはつねに工夫が必要で,ちょっとしたアイデアでかんたんに解けることもあり,考えること解くことが楽しい場合もあるということである. 
 私は若い諸君にそういうことを伝えようとしてこのシリーズを書き進めてきている.わかりやすい解説をしようとしてさんざ工夫しているつもりである.この話のどんなところが工夫の個所か,それを読みとってもらえば幸いである.