数学切り抜き帳
数学目次へ
正十二面体の体積 2
桜花学園大学教授
岩井 齊良
 正十二面体の中には立方体が隠れている


 前回はこのことに着目して正十二面体の体積を求めた.今回はそれと異なる観点と異なる方法で正十二面体の体積を求めてみよう.

 まず,準備として正五角形の対角線の長さを求める.
 正五角形ABCDEにおいて,BDとCEの交点をFとする.
 このとき,AE//BD,AB//ECより,四角形ABFEは平行四辺形で,
      EF=AB


 1辺の長さを1 (AB=1),対角線の長さをx (BC=x) とする.
 △BEFと△CDFは相似だから,

     


 この x の値を黄金比という.
黄金比は数学で重要視される定数で,ギリシャ文字τ(タウ)で表される.
近似値は τ≒1.6180 である.余談だが 1マイル≒1.6093km とよく似ている.
次の関係式がよく使われる.
    τ2=τ+1, τ−1=τ−1

 正五角形ABCDEにおいて,△ABEと△BCEの面積を比べてみよう.

 点A,Cから辺BEに下ろした垂線を,それぞれ,AH,CKとする.
 △ABHと△CEKは相似であるから,

     

 また,正五角形ABCDEは3つの三角形△ABE,△BCE,△CDEに分けられるから,
(正五角形ABCDEの面積)=(τ+2)△ABE=(τ+2)△CDE
となる.

 正十二面体を投影図で見てみよう

正十二面体の1辺の長さを1とすると,対角線の長さはτである.

 下図は上図の一部分である.これは正五角形ではないが,左右に縮めると正五角形になるので,以前に議論した比△ABE:△BCEと同様に,
        h1h2=1:τ
となる.

 h2 だから,h1

 以上により,必要な部分の長さが確定した.

 下図の正十二面体において,その中心をOとし,1辺の長さを1とするとき,三角錐 O−CDE の体積を求めよう.

 三角錐O−CDEを投影図で見ると次のようになる.

 三角形OCDの面積が ,この面に対する高さが だから,三角錐O−CDEの体積は
     
 正五角形ABCDEの面積は△CDEの τ+2倍だから,五角錐O−ABCDEの体積は,
     
 正十二面体はこれと合同な12個の五角錐よりなるから,辺の長さ1の正十二面体の体積は,
     
 一般に,1辺の長さ a の正十二面体の体積 V は,