数学切り抜き帳
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 平行四辺形の面積
桜花学園大学教授
岩井 齊良
 このタイトルを見て「こんなこと誰でも知っているのに」と思う読者もいるに違いない,
 確かに面積の求め方は誰でも知っている.しかし,この求め方(計算法)の根底にあるものを高校生の目で見直してもらいたい.

 平行四辺形の面積は,
   (面積)=(底辺の長さ)×(高さ)
で求められる.底辺と高さを共有する長方形を考えることにより説明できる.
 じっさい,

となるからである.

 ここでは,長方形の面積の公式はわかっているものとする.また,長方形は平行四辺形(の一部)であり,長方形で底辺といえば下側の辺のことであり,長方形で高さといえば縦の長さのことであると理解する.

 上の説明で,平行四辺形の面積の公式は説明しきれたように見えるが,次の平行四辺形でも公式は成り立つのであろうか.

しばらく考えて下さい.この答を見るには「次へ」を押して下さい.

したがって,平行四辺形の面積の公式はこの場合も成り立つのである.
 上の操作をよく観察すると,次のことがわかる.

  平行四辺形を長方形に変形するには,
  平行四辺形をいくつかの線分で切り分けて,
  各部分を平行移動すればよい
  しかも,水平に(底辺に平行な方向に)平行移動するだけでよい

 さらに面白いことに,平行四辺形を切るときは縦方向にのみ切ればよい.
 図中の点線は平行四辺形を切り分ける線分(赤線)を引くための補助線で,この線で切るわけではない.

 ここまで書いて気になったので小学校の教科書を見てみた.すると,驚いたことに「平行四辺形の面積は三角形の面積の2倍」と説明してあった.そこで三角形の面積の説明は下図のような流れであった.

 これはわかる.要するに,三角形をこのように長方形に変形できるから,面積は
    (底辺)×(高さ)÷2
になるというのである.
 ところが三角形の中には下のように傾いた三角形,不安定な三角形がある.

 これについては,別の機会に取り上げたい.