授業実践記録
場合の数・確率の単元で魅力ある授業をめざして
兵庫県立北摂三田高等学校
山崎俊喜
 
1.はじめに

 今年度、兵庫県立北摂三田高等学校に異動した。本校は、県下でも有数の進学校である。今年度の進学実績では、国公立大学169名である。
 全体の特徴として、非常に勉強熱心である。授業以外の行事についても自分たちで中心となって取り組んでいる。何事においても生徒は前向きである。
 今年度1年生の授業を担当している。苦手意識はあるものの、本当に理解していない生徒はほとんどいない。しかしながら、数学の単元によっては、苦手としている生徒は少なくない。
 
2.場合の数・確率について

 場合の数・確率という単元について、本校に限らず、苦手としている生徒が多い。私自身も教師になるまでは、場合の数・確率については、苦手意識を持っていた。
 どうして苦手意識を持つかというと、次の2点が考えられる。

[1] 場合の数・確率については、試行のルールが理解できない。
[2] ルールは理解できたが、どの公式を使ったらよいのかわからない。

 [1] については、国語と関連してくる。読解力がないと問題の意味を理解することはできない。私自身も国語が苦手であったため、苦労することが多かった。
 [2] についても [1] とも関連性がある。ルールは理解できたが、それが順列なのか、組み合わせなのか。また、試行で言えば、独立試行なのか、そうでないのかといったことが、理解できていないのではないかと考えられる。
 [2] について、なぜそんなことが起こるのか、おそらく、順列の内容を取り上げるときは、順列の公式(Permutation)を指導するので、生徒は順列の公式を意識する。そのため、問題を与えたときに、無意識に順列の公式を使うことを考え、「なぜ順列なのか?」ということを深く考えていないためではないかと考えている。そのため、順列の後、組み合わせを指導し、2つを混ぜ合わせたときに、どちらの公式を使えばよいのかわからなくなる。そのため、問題を提示して、解かせるときに、「これはP(順列)の公式、C(組合せ)の公式のどちらを使えばよいの?」という質問が出てくる。また、確率に入り、独立試行までを取り上げると、生徒にとって、一体どの公式を使えばよいのかわからなくなってしまう。わからないからつまらないという意識を持つようになってしまいがちである。

 
3.場合の数・確率の指導方法について

 どの公式を使えばよいかについては、キーワードが出てくるので、そこを強調するようにしている。順列については、「並べる」。組合せについては「選ぶだけ。並べない」ということを強調している。 コインやサイコロを投げる場合などは、「反復試行」を意識させるようにしている(必ずしも、反復試行として考えなくてもよい場合もある。)

(例1) 10人の部員の中から、部長、副部長、マネージャーを1人ずつ選ぶとき、選び方は何通りあるか。
(例2) 赤球5個、白球4個から4個の球を取り出すとき、赤球2個、白球2個である確率を求めよ。
(例3) 赤球5個、白球4個から2個の球を取り出すとき、ともに同じ球である確率を求めよ。

 例1は順列、例2、3は組合せの問題である。例1では、「選ぶ」という言葉があるが、部長、副部長、マネージャーという順に並べているということを確認する必要がある。例2、3では、「取り出す」に注意し、「選ぶ」だけであるということを確認する必要がある。一度、順列・組合せの内容で、小テストをすると、どちらの公式を使うのかがはっきりする(反復試行については、別途取り上げる方が効果的である。)
 また、例2の問題については、積の法則、例3では和の法則を使うことも確認させておく。実際の授業では、積の法則か和の法則といった問い方はしていない。というのは、その言葉を頻繁に使うことにより、難しいという意識を持たせてしまうことになりかねないという配慮からである。「難しいことをいかにやさしく、イメージを持たせながら指導するか」を肝に銘じて指導している。そのため、×でつなぐ(積の法則)か+でつなぐ(和の法則)という形で、問うようにしている。見分け方としては、実験(試行)の途中であるのか(積の法則)、1つの実験(試行)がすでに終了し、1つの結果(事象)が表れているかということを基準に考えさせている。そのため、演習させたときや小テストにおいても、積の法則と和の法則を混同させる生徒はいなかった(本校だけでなく、前任校(兵庫県立宝塚北高等学校)でも同様の結果が出ている)。
 また、図を用いると視覚に訴えることになり、理解させやすいと言える。顕著な例として、円順列があげられる。

(例4) 男子4人、女子2人が円卓に座るとき、女子2人が向かい合うとき、何通りの座り方があるか。

 一瞬難しく感じるかもしれないが、本校生に問題を解かせたところ、難しく感じることなく、すぐに解答を導けた。

(考え方)□は男子、○は女子を表している。円順列は回転して同じ並び方になるものは同じと考えるので、1人を固定し、回転しないようにする必要がある。そのため、誰かを固定する必要があるが、誰を固定するのかが、解答のポイントになる。固定したことを表す記号として、(釘)のマークを入れさせるようにしている。演習の際、誰に釘を打てばよいか考えなさいというヒントを入れるようにしている。実際に解けた生徒には、教卓まで持ってこさせるようにしている。正解の場合は、「正解」と大きな声で言い、達成感を味わうよう配慮している。
 間違えた場合は、ヒントを与えて、もう一度解いてくるよう指示している。
 この問題の場合、女子1人を固定すれば、残りの女子が自動的に決まるので、男子4人の並び替え 4! =24(通り)であるということが容易に解答できる。そのため、少々複雑な問題についても意欲的に問題に取り組んでいる。
 その他、同じものを含む順列や重複組合せについても図を用いることで、難しいという意識をなくすようにしている。このあたりについては、教科書にも載っており、いかにわかりやすく指導するかがポイントになる。

(例5) 方程式 x + y + z =10 を満たす x, y, z の自然数の組の総数を求めよ。

 この内容については、「同じ種類の10個のお菓子を3人で自由に分ける方法は何通りあるか。ただし、1人に1個は必ず与えること。」と同じであることを示した上で、あなたが、親で3人の子どもに分けさせるにはどうすればよいかを考えさせた。そうすると、まず1人1個ずつ与えて、残り7個を3人で分ければよい。つまり、○7個と|(仕切り)2本の並び替え ○○○○○○○|| の順列ということで、図をかき、
 (通り)と簡単に答えることができた。

 
4.おわりに

 今後とも、ヒントを与えながら、身近な問題に置き換え、イメージを大切にした授業を続けていきたいと考えている。