授業実践記録
板書の工夫と数学の知識・知恵について
福島県立須賀川高等学校
北原千尋
 
1.はじめに

 生徒のノートを見て,毎回感じることがあります。それは,このノートがはたして復習で利用できるのかどうかです。最近書店でノートの取り方に関する本が販売されています。また,数学を得意とする生徒のノートはたいていきれいなものです。(一部例外もありますが)やはりノートの取り方から指導し授業の受け方についても生徒に話をすることが必要と考え,1年間このような取り組みをしてみました。この授業実践記録を機に全国各地の先生方と板書や授業について話ができれば幸いです。ほんの少しばかりの工夫ですが紹介します。
 
2.チョークの色

 ノートの取り方でまず取り組んだのは,ペンの色です。今はいろいろなチョークの色があり助かります。私の板書は白色・赤色・黄色・青色で書かれています。そして私はチョークの色に意味を持たせています。多くの先生方と同じようには赤色は最重要事項・黄色は重要事項(逆の方もいるとは思いますが)といった具合です。そこに青色を加えています。青色は過去の復習として利用します。今までに習ったことを板書するときに用います。(三角関数の導入で三角比の公式の復習など)4月の最初の授業で,チョークの色の違いについて説明します。そして生徒にはこれを守ってノートを取るよう徹底します。生徒のノートの一部をアップします。

(1)ノートその1

男子生徒のです。よく書き込んでいます。

(2)ノートその2

女子生徒のです。若干,色使いが違いますが丁寧に書かれています。

 
3.予習について

 ノートのペンの色についての説明の後,今度は授業についてです。特に予習・授業・復習といった勉強のサイクルを生徒に確立させるため,予習をやらせてみました。予習といってもごく簡単に教科書の例・例題をノートに書く程度にしました。(これが本当の予習とは言わないと思います)生徒の実情を考えると結構無理な要求でしたが,私はこの程度なら授業前の休み時間でもできると思いました。そして授業が始まるとすぐに,クラス全員のノートを見て回り予習の状況を確認しました。私の予想通り,最初のうちはよくやってくるので,そこを逃さず授業展開を工夫したり,板書のチョークの色を強調したりしました。今でも毎回,授業開始直後にクラス全員のノートを見て回っています。
 
4.授業について

 さてここまでやると,教師もそれに伴って準備が必要です。当たり前ですが,板書案を考えて授業に臨みます。ここは何色で板書しようか,最重要事項は,重要事項は何か。復習として必要な事項は何かです。板書案の中で黒板の使い方や黒板とそっくりに作成することで授業の展開が組み立てやすくなります。また少々授業の展開を早くしても生徒は,予習でノートを書いているのでついてくることができます。そして授業とは何かと考えると私は,西岡康夫先生がおっしゃっていた「授業とは知識の習得と知恵の伝授である」と思っています。数学の授業で生徒にいかに知識と知恵を授けるのかが重要だと思います。知識は,どんなことをしても覚えなくてはならないものでしょう。また問題に対して,知識をどのように用いるかが知恵でしょう。覚えた知識・伝授された知恵を使って問題を解き,解答が導かれることを生徒に伝えていければと思います。そして授業の中で知識は何か,知恵は何かと考えて展開していくことが大変重要なことだと思います。
 
5.最後に

 私は,生徒が素直にノートを書くときのペンの色について実行してくれたことに驚きました。しかし生徒にノートのペンの色について徹底すればするほど,実は考査前の復習の効率が上がることに気付きました。なぜならやっぱりノートが見やすいからです。また定期考査の点数が伸びてきた生徒や数学を得意とする生徒のノートはきれいです。私自身ノートの取り方やペンの色の使い方は上手ではありませんから生徒に見本を見せられるノートなどあるはずがないです。しかし生徒が書いたノートをチェックし,きれいにまとめてあるノートを生徒に紹介することはできます。そうすることで生徒同士がノートの取り方についてアドバイスをしてノートの取り方が上手くなっていきます。また私は,予習について「とにかく毎回クラス全員のノートを見る。そしてやってきた生徒を褒める」ことにしています。これが生徒の毎時間の予習の取り組みにつながると思います。また授業については「知識の享受と知恵の伝授」を考え展開しています。例えると,知識は道具,知恵はその道具の使い方です。道具の使い方が分からなければいくら道具を持っていても使い物になりません。すなわち,知識=定義・定理・公式,知恵=問題の考え方・解き方でありこれをどうやって生徒に授けるか。そこを日々考えています。今後も数学の問題が解けた,解けるようになった,数学が好きになったといった生徒を多くしていく努力をしていきたいと思います。