授業実践記録
三角形によって生成される正方形
群馬県立高崎高等学校通信制
中島隆一
はじめに

 三角形ABC の辺上に,正方形 AA1A2B, BB1B2C, CC1C2A を左回りにつくり,さらに正方形 A2A3B4B1, B2B3C4C1, C2C3A4A1 を左回りにつくる.次に,正方形A3A4A5A6, B3B4B5B6, C3C4C5C6 を左回りにつくるとき,この図形の性質を調べ定理としてまとめてみました.
 この研究は,2004年12月頃に行ったものです.推薦できる文献としては, Floor van Lamoen [1] をあげておきました.インターネット上にありますので,読んでみることをおすすめします.

[定理.1] 三角形 ABC の辺上に,互いに相似な長方形 AA1A2B, BB1B2C, CC1C2A (AA1 : AB = BB1 : BC = CC1 : CA = n : m) を左回りにつくり,次に正方形 A2A3B4B1, B2B3C4C1, C2C3A4A1 を左回りにつくる.このとき,

(1)

(2) 台形 B1B4B3B2 = 台形 C1C4C3C2 = 台形 A1A4A3A2 =
が成立する.

[証明]

(1) 直線 BB1 上に F, H, DAH || A2F || B4D || B1B2 となるようにとり,直線 CB2 上に I, G, EB3E || B1B2 || C1G || AI となるようにとる.
B1B4D ≡△A2B1F, △B2B3E ≡ △C1B2G, △BA2F ∽ △ABH, △CC1G ∽ △ACI だから,

    

明らかに,BH = CI だから,

    

よって,四角形 B1DEB2 は長方形となるので,

    

また,

    

より

    

[1] , [2] から

    

が成り立つことがわかった.他の2つの等式も同様にして成り立つことがわかる.

(2)  

台形 C1C4C3C2 = 台形 A1A4A3A2 = も同様にして成り立つことがわかる. 

(Q.E.D.)

[系.1] 三角形 ABC の辺上に,正方形 AA1A2B, BB1B2C, CC1C2A を左回りにつくり,さらに正方形 A2A3B4B1, B2B3C4C1, C2C3A4A1 を左回りにつくる.このとき,

(1)

(2) 台形 B1B4B3B2 = 台形 C1C4C3C2 = 台形 A1A4A3A2 = 5△ABC
が成立する.

[補題.1] 三角形 ABC の辺上に,正方形 AA1A2B, BB1B2C, CC1C2A を左回りにつくり,さらに正方形 A2A3B4B1, B2B3C4C1, C2C3A4A1 を左回りにつくる.正方形 AA1A2B = S1, 正方形 BB1B2C = S2, 正方形 CC1C2A = S3, 正方形 A2A3B4B1 = T1, 正方形 B2B3C4C1 = T2, 正方形 C2C3A4A1 = T3 とおくとき,

    T1 + T2 + T3 = 3(S1 + S2 + S3)

が成り立つ.

[定理.2] 三角形 ABC の辺上に,正方形 AA1A2B, BB1B2C, CC1C2A を左回りにつくり,さらに正方形 A2A3B4B1, B2B3C4C1, C2C3A4A1 を左回りにつくる.直線 A1A4 と直線 A2A3 の交点を P1,直線 B1B4 と直線 B2B3 の交点を Q1,直線 C1C4 と直線 C2C3 の交点を R1 とすると,

(1) A1P1 = C2R1, B1Q1 = A2P1, C1R1 = B2Q1

(2)

(3) △P1A1A2 = △Q1B1B2 = △R1C1C2 =

(4) △P1Q1R1 = 3△ABC

が成り立つ.

[証明]


(1)[系1]-(1) によると, だから,明らかに成り立つ.

(2) だから,P1A2 : A2A3 = 1 : 3.
よって,

    

同様にして,

    

が成り立つこともわかる.

(3)[系1]-(2) によると,台形 A1A2A3A4 = 5△ABC だから,

    
同様にして,

    

が成り立つこともわかる.

(4)[系1],[定理.2]-(1),(2),(3) によると,

([補題1]によると 3(S1 + S2 + S3)= T1 + T2 + T3 だから)
(Q.E.D.)

[定理.3] 三角形 ABC の辺上に,正方形 AA1A2B, BB1B2C, CC1C2A を左回りにつくり,さらに正方形 A2A3B4B1, B2B3C4C1, C2C3A4A1 を左回りにつくる.次に,正方形 A3A4A5A6, B3B4B5B6, C3C4C5C6 を左回りにつくるとき,

(1)

(2)台形 A3A6B5B4 = 台形 B3B6C5C4 = 台形 C3C6A5A4 = 24△ABC

が成立する.

[証明]
(1)[定理.2]-(2) によると,

     

だから,[定理.1]-(1) により m = 3, n = 4 とすれば

     

同様にして,

     


(2)[定理.2]-(2) によると,

     

だから,[定理.1]-(2),[定理.2]-(4) により m = 3, n = 4 とすれば

     

同様にして,

     台形 B3B6C5C4 = 台形 C3C6A5A4 = 24△ABC

が成り立つ.

(Q.E.D.)

参考文献
[1] Floor van Lamoen., Square Wreaths Around Hexagons, Forum Geometricorum Volume 6(2006)311-325.