授業実践記録
対数(log)はいらない!
(神奈川)聖ヨゼフ学園中学・高等学校
吉野英男
 
1.はじめに

 高校2年の文系の生徒(数学を受験科目に使用しない)対象の授業において、定義などを教える(覚える)時間を極力減らし、具体的な例、応用問題などを解く(考える)時間をできるだけ多く取ろうというねらいのうえに行った授業である。
 誤解を受けるようなタイトルをつけてしまったが、高校数学において、「対数・対数関数」が不必要であるということではない。
 
2. 授業にあたって

 「指数・指数関数」をしっかりと学習した後、対数を導入することなく、対数による計算、応用例を指数表示で学習した。いくつかの例題を次にあげる。
 
3. 計算問題

問1. 対数の加法 log102+log105 は、2×5は10の何乗? すなわち
     2×5=100.3010×100.6990=100.3010+0.6990=101=10
という計算を意味する。
問2. log2 は、 は 2 の何乗? すなわち
      という計算になる。
問3. 底の変換公式を用いる計算 log816は、16は8の何乗?と置き換えると
     8x=16 とおくと、8=23、16=24 より
     (23)x=24 ⇔ 23x=24 ⇔ 3x=4 ⇔ x
という指数方程式になる。
 
4. 常用対数

問1. log102=0.3010、log103=0.4771として、log1018 を求める問題は、次のように置き換えた。
     2=100.3010、3=100.4771 として、18 は 10 の何乗?
これを解くと
     18=2×32
      =100.3010×(100.4771)2
      =100.3010+0.4771×2
      =101.2552
ここで、101.2552=101×100.2552 とし、対数表の 100.2553=1.8を確認する。
問2. 630 は何桁か? は、 630 は 10 の何乗?を考えればよい。
       6=2×3=100.3010×100.4771=100.7781より
       630=(100.7781)30
         =100.7781×30
         =1023.343
         =1023×100.343
よって、24桁の数である。
また、 100.343の値を対数表で調べると、先頭の数もわかる。
 
5. まとめ

 今回は文系生徒対象だったので、対数を用いることなく指数表示のみでいろいろな例題に取り組んだが、十分指数の世界を楽しめた。可能であるならば、このような学習の後で対数を導入し、そのことにより、対数表示の便利さ、有意性を生徒が実感できると思われる。
 
6. おまけに

 本校の中学校入学試験問題から、指数の考えを取り入れた問題を1つ紹介して、本稿をしめくくることにする。
問. 1時間たつと、重さが2倍に増えるようなアメーバについて、次の問いに答えなさい。
(1) このアメーバ 1g が、16g になるには何時間かかりますか。
(2) ある時刻に、このアメーバ 1g と、同じアメーバ 2g があるとします。それぞれの重さが 100g になるまでの時間は、どれだけちがうでしょうか。答えと、その理由をかんたんに説明しなさい。

(平成4年度 聖ヨゼフ学園中学校入学試験問題より)