授業実践記録
重複順列の指導について
筑波大学附属高等学校
矢野一幸
 
0.はじめに

 個数の処理,特に,場合の数の指導では,起こりうる場合を順序よく整理・分類して,漏れや重複のないように場合の数を数え上げていくことが大切です。ここでは,様々な順列・組合せの中から,重複順列の指導について述べてみます。
 
1.重複順列

 一般に,異なる n 個のものから,同じものを何度使ってもよいものとして,r 個を取り出して1列に並べたものを,n 個から r 個とる重複順列といい,その総数は,n の r 乗,nr である。

 先ずは,比較的やさしい例から

例1 5個の数字1,2,3,4,5を使って,3桁の数はいくつできるか。ただし,同じ数字を何度使ってもよいものとする。
解  百の位,十の位,一の位に使う数字は,それぞれ5通りずつあり,互いに他の位の数字に関係なく選べる。
 よって,積の法則により,
     5×5×5=53=125(個)

 では,次の例はどうでしょうか。

例2 Tさんは,Aさん,Bさん,Cさんの3人に,1通ずつ手紙を書いた。Tさんの自宅のそばには郵便ポストが5個所ある。3通まとめて投函してもよいこととして,何通りの投函のしかたがあるか。 
解  3通の手紙は,どのポストに投函してもよいから,それぞれ,5通りの投函のしかたがある。
 よって, 5×5×5=53=125(通り)

 しかしながら,生徒に答えさせてみると,53であるのか,35であるのかと,迷ってしまうケースが多いようです。
 ここのところを迷わずに,自信を持って答えられればしっかりと分かったことになるのですが,そうなるには少々時間がかかるようです。
 そこで,例2を次のようにアレンジしてみました。

例3(アレンジその1−1)
 Tさんは,Aさん1人に,1通手紙を書いた。Tさんの自宅のそばには郵便ポストが5個所ある。何通りの投函のしかたがあるか。
解  5通り(51通り)

例4(アレンジその1−2)
 Tさんは,Aさん,Bさんの2人に,1通ずつ手紙を書いた。Tさんの自宅のそばには郵便ポストが5個所ある。2通まとめて投函してもよいこととして,何通りの投函のしかたがあるか。
解  25通り(5×5=52通り)

例5(アレンジその2−1)
 Tさんは,Aさん,Bさん,Cさんの3人に,1通ずつ手紙を書いた。Tさんの自宅のそばには郵便ポストが1個所ある。3通まとめて投函してもよいこととして(するしかないが),何通りの投函のしかたがあるか。
解  1通り(1×1×1=13通り)

例6(アレンジその2−2)
 Tさんは,Aさん,Bさん,Cさんの3人に,1通ずつ手紙を書いた。Tさんの自宅のそばには郵便ポストが2個所ある。3通まとめて投函してもよいこととして,何通りの投函のしかたがあるか。
解  8通り(2×2×2=23通り)

そろそろ分かってくるころでしょうか。では,

例7(アレンジその2−3)
 Tさんは,Aさん,Bさん,Cさんの3人に,1通ずつ手紙を書いた。Tさんの自宅のそばには郵便ポストが3個所ある。3通まとめて投函してもよいこととして,何通りの投函のしかたがあるか。
解  27通り(3×3×3=33通り)

 3の3乗ですが,手紙が3通,ポストも3個所,どちらが底で,どちらが指数でしょうか。確認できたでしょうか。

・・・・・・・・・

 というわけで,アレンジ2−4(または,1−3),つまり,もう一度,

例2 Tさんは,Aさん,Bさん,Cさんの3人に,1通ずつ手紙を書いた。Tさんの自宅のそばには郵便ポストが5個所ある。3通まとめて投函してもよいこととして,何通りの投函のしかたがあるか。
解  5の3乗で,125通りですね

もう一度,例1に戻って,

例1 5個の数字1,2,3,4,5を使って,3桁の数はいくつできるか。ただし,同じ数字を何度使ってもよいものとする。
解  5の3乗で,125個ですね。

 
2.まとめ

 例1(例2)では,5個の数字(5個所のポスト)の中から数字(ポスト)が選択されるわけですから,使われない数字(ポスト)があってもよいわけです。一方,3桁の各位の場所には(3通の手紙は),3個所全てに数字を当てはめななければなりません(3通全て投函しなければなりません)。
 5と3について,5のうちいくつかは利用されなくてもよいわけですが、3は全て利用されなければなりません。
 いくつかは利用されなくてもよい5が底,全て利用されなければならない3が指数となり,5の3乗,53となります。