授業実践記録
数と式
和歌山県立日高高等学校
辻本純一
 
1.はじめに

 整式の加減,乗法や因数分解は,高校数学を学習するために大切なものであり,しっかり理解させたい。そこで,乗法公式や因数分解の手順を覚え,それらをあてはめられるようにする。そのために,時間をかけて,じっくりと勉強させる必要がある。
 しかし,形式的に公式を覚えるのではなく,その意味を見つけ,いろいろな計算に応用できるようにしたい。
 
2.整式の乗法と面積・体積

 整式の乗法の公式について,それらを長方形の面積や直方体の体積と関連して,次のように考えてみるとよい。
 乗法公式を,(a+b)2=a2+b2のように間違うこともなくなるだろう。



 
3.乗法公式と計算の工夫

 乗法公式を利用して,次のような数の計算ができる。
  522=(50+2)2=502+2・50・2+22=2500+200+4=2704
  482=(50−2)2=502−2・50・2+22=2500−200+4=2304
  52・48=(50+2)(50−2)=502−22=2500−4=2496
さらに,
  22・28=(20+2)(20+8)=202+(2+8)・20+2・8
      =202+10・20+2・8=20(20+10)+2・8
      =616
この計算から,一般に,a+b=10のとき,
  (x+a)(x+b)=x2+(a+b)x+ab=x2+10x+ab
        =x(x+10)+ab
となる。このことを用いると,次のように計算できる。
  43・47=40・50+3・7=2021
  71・79=70・80+1・9=5609
 
4.因数分解と計算の工夫

 因数分解の公式を利用すると,次のように計算できる。
  73−5・72=72(7−5)=72・2=49・2=98
  332−172=(33+17)(33−17)=50・16=800
さらに,a2−25=(a−5)(a+5)を変形して
  a2=(a−5)(a+5)+25
となることを用いると,次の計算ができる。
  352=(35−5)(35+5)+25=30・40+25=1225
  752=70・80+25=5625
  952=90・100+25=9025
 
5.おわりに

 以上のように考えると,整式の乗法や因数分解が「味」のあるものになると思う。このような計算を経験することによって,公式を確実に理解させたい。そして,場合に応じて使えるように指導する必要があるだろう。