授業実践記録
2次方程式と不等式
−高校ではじめて扱う内容の授業について−
和歌山県立日高高等学校
辻本純一
 
1.はじめに

 2次方程式は因数分解できれば,その解を求められることは中学校で学んできている.ここでは2次方程式の解の公式を学ばせる.中学で学習していない項目なので,その公式の導き方をていねいに指導する必要がある.
 さらに,中学校では数の大小だけを学んできているが,不等式を解くことはここで初めてなので,取り扱いには注意したい.
 
2.2次方程式とその解

 ( I ) 2次方程式の解の公式

 平方根については第1章で学んできているが,例1を通じて方程式の解として説明する.例2では,実数の範囲には解が存在しない2次方程式があることを知らせる.例3で,2次方程式の解の公式を求めるための準備をする.

  例1.次の方程式の解を求めよ.
    (1) x2=9     (2) x2=2

  例2.方程式 x2=−2 には,実数の解がない.

  例3.次の方程式を解け.
    (1) ( x−1)2=4    (2) ( x−3)2=3

 解の公式を導き出すために,次の例4で平方式について学ばせる.
2次関数は第3章で学ぶので,平方式に変形する練習をする.この変形は生徒にとっては難しいものなので,ていねいに説明する.

  例4.次の □ にあてはまる数をいえ.
    (1) x2+4x+□=( x +□)2
    (2) x2−6x+□=( x −□)2
    (3) x2+5x+□=( x +□)2
    (4) x2−3x+□=( x −□)2

      

 例5で2次方程式を解くための変形を学ばせる.例4で練習したことを方程式に応用できるようにする.生徒のなかには分数計算を間違うものがいるので注意する.時間が許せば,練習したい.

  例5.次の □ にあてはまる数を求め,2次方程式を解け.
    (1)  x2−6x +1=0 より ( x −□)2=□
       これを解いて,  x =□
    (2)  2x2+6x −1=0 より x2+□x =□
       両辺に□を加えて変形すると,  ( x +□)2=□
       これを解いて,  x =□

  ◇ 2次方程式の解の公式 ◇

     ax2bxc =0の解 

 2次方程式の解の公式を導き,公式を使って解を求める練習をする.
生徒にとって,公式にあてはめて解を求めることは難しくないが,練習を数多くすることが大切になる.


 ( II ) x=α を解にもつ2次方程式

 例6で,ある実数を解の1つにする2次方程式を求める.2次方程式を求める計算によって,解の公式を見直させる.ほとんどの生徒は [1] の方程式を求めるが,[2] [3] のような方程式も考えられることを注意する.

 例6.x=1+ を解とする2次方程式の1つを求めよ.
    また,他の解を求めよ.

   解 [1]  x−1= の両辺を2乗すると  ( x−1)2=3
       これを展開して整理すると  x2−2x−2=0
         他の解は  x=1−

   解 [2]  x =1 の両辺を2乗すると  ( x )2=1
       これを展開して整理すると  x2−2 x+2=0
         他の解は  x −1

   解 [3]  x=1+ の両辺を2乗すると x2=4+2
         他の解は  x=−1−

 
3.不等式とその解

 不等式の性質 [1] 〜 [3] を使って不等式の解を求めることを指導する.

  ◇ 不等式の性質 ◇
      [1]  a b  ならば ac bc , acbc
      [2]  a bm >0 ならば a mb m ,
      [3]  a bm <0 ならば a mb m ,

 性質 [1] を使うと,不等式で移項することができる.性質 [2] [3] を使うと,不等式の両辺に定数を掛けたり,両辺を定数で割ったりできる.特に,性質 [3] については,不等号の向きが変わることを注意する.
 例7では,数値を代入することにより,不等式を満たす x の値がどんな範囲のものかを考えさせる.そして不等式を解くことによってそのことを確認させる.

 例7.−3, −2, −1, 0, 1, 2, 3 のうち次の不等式を満たすものをいえ.
    (1) x+2>1   (2) 2x >3   (3) −2x >1


 不等式はその性質 [1] 〜 [3] を使って解くことができるが,いくつかの数値を代入することによりその解が正しいことを確かめさせる.