地学授業実践記録
感動を伝える地学現象
千葉県立我孫子高等学校
武田康男
 
1.はじめに

 地学には自分の目で楽しめる現象がたくさんある。この2年間,勤務校や校外で私が観察した現象を紹介したい。これらの内容は,授業においても生徒の関心が高く,身近な地学現象に興味を持つきっかけになった。
 
2.地学現象の例

(1) しし座流星群のビデオ
 2001年11月のしし座流星群は,生涯に一度というようなすばらしい出現であった。超高感度ビデオカメラ(WATEC WAT-100N)には肉眼で見えるすべての流星が映り,流星雨を大きなスクリーンに再現しながら,流星の出現数の変化を調べる授業を行った。図1はそうした取り組みでわかった出現数の変化である。
 同じ画面を見ても,出現数の記録には生徒の個人差がかなりあった。また,流星の明るさや速さに違いがあることや,爆発性の輝きや流星痕もビデオで確認することができた。


図1 ビデオによる流星カウントの時間変化

(2) 落雷のビデオと写真
 2002年8月2日に千葉県北西部で激しい落雷があり,その様子を学校の教室からビデオ撮影し,それを利用して稲妻の流れ方や雷鳴を観察する授業を行った。目の前の橋や沼,そして校庭に落ちる映像や静止画は,身近に起こる恐ろしく不思議な現象として生徒の目に焼きついた。


図2 落雷とそこから枝分かれする稲妻(ビデオから)


図3 橋の照明への落雷(ビデオから)


図4 フェンスを伝わり,校庭のショベルカーへの落雷(上部は映っていない)(ビデオから)


図5 落雷によって幹が裂け,表皮が剥がれた樹木


図6 教室から稲妻を撮影する生徒(2001年)


図7 デジカメで,光った瞬間にシャッターを押して撮影した稲妻(2001年)

(3) 台風通過の記録
 2002年は台風の中心が学校の近くを通過することがあり,10分ごとの気象観測の記録から,台風通過時の気象の変化を知ることができた。風速は中心通過の前後に強く,風向は見事に回転した。また,雨は台風中心通過後に止んでいった。


図8 台風通過時の気圧,風速,風向,降水量の変化

 また,2001年9月の台風通過後には,西の晴れた空から夕日が射し,雲からの降水(雨)が輝いて見えるという不思議な現象を学校で観察した。また、その降水域には短い虹も見られた。


図9 太陽光線で輝く,風で曲がる降水

(4) 川面のブロッケン現象
 ふつう山の稜線などでしか見られないブロッケン現象が,福島県只見町の川面で見えることを知り,地学部の夏の合宿時に観察した。ダムから流れてくる水はたいへん冷たく,その水面上に薄く霧が発生し,朝日に当たってブロッケン現象が見られた。写真では橋の上にいる生徒の影も左に写っているが,ブロッケン現象が見えているのは撮影者の私の周囲だけである。つまり各々がこの虹色の輪を見ている。


図10 橋から川面に見えたブロッケン現象

(5) 竜巻と虹
 2002年12月23日,鹿児島県与論島から海上に竜巻が見られた。積乱雲が周囲から積雲を集めて成長し,その雲の端からストロー状の物体が海に向かって伸び始めた。3つの漏斗雲が降りてきて,その1つが海面に達すると,海面付近に水しぶきと思われる渦ができた。そして,竜巻は揺れながら移動し,10分ほどで消滅した。
 また、竜巻からやや離れた,雲の中心に近い部分から激しい降水が見られ,冬の高度の低い太陽光線によって,白昼の虹が水平線上に小さく現れた。


図11 雲から伸びた竜巻が海面に接した瞬間


図12 水平線上に現れた白昼の低い虹

 
3.おわりに

 これらの観察と撮影は私のライフワークとなっている。そして,自然科学は現場で確かめながら探究するという姿勢を大切にしたいと思っている。幸いに,生徒も自分で観察する楽しさを感じ,地学現象により興味を持ってくれる。現象にはまだまだ未知の部分があり,複雑な関係がある。もしかしたら,一緒に観察する生徒が新しい発見をしてくれるのでは,という思いもある。

(なお,筆者は2003年4月より千葉県教育庁へ勤務している)