地学授業実践記録 |
|
海陸風−アメダスのデータの解析とモデル実験 |
|
茨城県立鉾田第一高等学校 村田 一弘 weatherman.murata@nifty.com |
|
1.はじめに
|
|
日頃,屋外で生活することが少ないせいか,生徒は実感としてどのように風が吹いたり雨が降ったりしているかという知識はほとんどないのが現状である.そこで,気圧と風の関係の学習をするさいに地元の気象データを利用して授業を進めてみた. |
|
2.アメダスCD-ROMについて
|
|
アメダスは十数kmに1つの間隔で観測点が設置されている.したがって,どこの学校でも近くに観測点があるはずである(ちなみに,本校の場合,学校から約1kmはなれたところに観測点がある).しかも,そのデータは,手軽に入手することができる. ※日本中すべての観測点のデータが1年分まとめて1枚のCD-ROMにおさめられ,気象業務支援センターから2600円で販売されている. 気象業務支援センター:http://www.jmbsc.or.jp/ |
|
3.授業の進め方
|
|
(1)目的 海陸風の実態を知り,海陸風が吹く基本的なメカニズムについて理解する.
[2] 海陸風のモデル実験(演示実験)をみて,風向の変化のメカニズムを理解する. (3)用意するもの
アメダスデータCD-ROMから鉾田の3月の風向風速データを抜き出し,海陸風が発生したと思われる日のデータをあらかじめ選んでおく. [2] 60リットルの水槽,バット2個,砂利(金魚などの水槽の底に敷くもの),ビーカー(50mlのものを底同士をくっつけておく),工事用ランプ2基,線香,お湯,氷,工事用ランプを支えておくためのスタンドのようなもの |
|
4.実際の授業展開
|
|
(1)下記のデータとグラフ用紙を生徒に配布し,1時間毎の風向・風速のベクトル図を作成する.
(2)海陸風のモデル実験を行う(図2).この方法は,山内によって紹介された方法である.
水槽に入れたぬるま湯(海)と砂利(陸)をライトで暖め線香の煙のたなびく方向の変化を観察する.→MOVIE
[2] 線香に火をつけ,水槽の中央に立てる. [3] その上に,氷の入ったビーカーを接着したビーカーをかぶせる. [4] 線香の煙は,いったんビーカーに入り,冷やされてビーカーの下方に流れてくる. [5] 煙は砂の入ったバットからお湯の入ったバットの入った方向へたなびく(陸風のシミュレーション). [6] ライトを点灯する. [7] やがて砂側の方が高温になり煙はお湯側から砂側に流れるようになる(海風のシミュレーション).
|
|
5.指導上の留意点
|
|
生徒は,海陸風を勉強するといつでも海陸風が吹いているように思ってしまう.しかし,風向に関しては実際には季節風や特に低気圧の影響が強く,海陸風が顕著にみられる日はそう多くはない.余裕があれば連続した数日分のベクトル図をかかせたほうがよい.
また,発展的な学習として,ホドグラフ(図3)を書いてみると風向の変化のパターンがわかる(観測地点によって,時計回りのところと反時計回りのところがあることがわかる). ただし,きれいなホドグラフがかける日は1年間のうちでも数日あるかないかくらいであるから,データを探すのが大変である.また,クラブ活動などで関東地方から長野県にかけて酸性雨の調査をしているような場合,酸性雨とこの地域の海陸風との関わりを調べてみるとおもしろいデータが得られるかもしれない. |
|
6.まとめ
|
|
実際に生徒のレポートを読んでみると「海陸風のことがわかりやすかった」とか,「風向きも結構奥が深いと思った」という感想があり,生徒の反応もよかった. 参考文献 浅井 冨雄,1996:ローカル気象学,東京大学出版会 茨城地学会,1999:茨城の海陸風,茨城県自然博物館第2次総合調査報告書 山内豊太郎,1998:気象の教室「海陸風を作ろう」,「気象」1998年11月号, 日本気象協会 |