地学授業実践記録 |
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火成岩の顕微鏡観察 |
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富山県立魚津高等学校 寺島禎一 |
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1.はじめに
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地学分野は、広大な空間や地質時代などの長い時間を対象としているために、実験を行うのはきわめて困難である。その中で、岩石や鉱物は、時間的な制約が少なく、試料として岩石そのものが用意できれば観察が可能である。しかし、実際には肉眼などによる観察に限定されているのが現状である。 岩石や鉱物の観察は、偏光顕微鏡の利用によって、その組織や構造、光学特性から化学組成の推定や鉱物の同定など、実験の内容がはるかに広がり、より効果的な学習に繋がることが期待される。また、偏光顕微鏡で見る岩石や鉱物は、ステンドグラスのように美しく、幻想的な宇宙のようでもあり、生徒の興味関心を高めることが考えられる。 ここでは、火成岩を例に、岩石や鉱物の顕微鏡観察について述べたい。 |
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2.火成岩の学習
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(1) 火成岩の組織 火成岩の組織は、ガラス質の有無から、完晶質(完全に結晶からなり、ガラス質なし)と半晶質(結晶とガラス質から成る)に分けられる。ガラス質の有無は、火成岩の冷却速度に関連し、深成岩と火山岩の組織の違いに大きく関与する。 徐冷された深成岩の組織を等粒状組織というが、これは、結晶の粒径が等しいと考えるのではなく、急冷された火山岩の示す斑状組織が、ガラス質や微小な結晶(石基)と粗粒な結晶(斑晶)のように明らかにオーダーの異なる粒子を含むのに対し、オーダーの異なる粒子を含まないと考えるべきである。 生徒には、等粒状組織と斑状組織という術語を暗記させるのではなく、冷却組織を意識させるためにも完晶質等粒状と半晶質斑状という組織が形成されることを理解させたい。そのためにも、それぞれの組織が明らかに区別できる顕微鏡観察をぜひとも実施させたい。 (2)火成岩の鉱物組成 火成岩の分類は、化学組成によって行われているが、これは、直接的には、岩石に含まれる鉱物に反映される。つまり、火成岩中に含まれる鉱物組成(鉱物種とその割合)がわかれば、火成岩を分類することができる。 実際に鉱物を同定することは困難であるが、顕微鏡観察の場合、多少の訓練は必要ではあるが、光学特性から簡単に識別できる鉱物も多く(今回は、紙面の都合上詳しくは述べない)、鉱物組成の観点からも、ぜひとも火成岩の顕微鏡観察を実施させたい。 |
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3.火成岩の顕微鏡観察
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(1) 偏光顕微鏡による観察
第二の問題としては、試料となる岩石プレパラートの確保である。岩石プレパラートは高価で、実習用に生徒数用意することは困難である。また、岩石プレパラートを作製することは、時間と熟練が必要で、これも火成岩の顕微鏡観察実施に大きな障害となっている。
砂糖岩(?)プレパラートの作製方法
クロスニコルで黒く見える部分は、アメ状(ガラス質:液体)の部分で、石基部分に相当し、まるで火山岩の斑状組織のように見える。
結晶が集合し、他の結晶とぶつかり合って他形を示している(図5)。自形結晶が集合体を形成している(図6)。このように、他形と自形などの組織について理解することができる。 |
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4.まとめ
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従来、火成岩の顕微鏡観察の実施は、装置や試料などの面からなかなか困難であった。しかし、不足する試料を、別のプレパラートで補ったり、簡単に短時間でプレパラートを作製できる方法を使うことで、火成岩の顕微鏡観察が実施され、多くの生徒が、偏光顕微鏡下での岩石や鉱物の美しさにふれることができれば幸いである。
参考文献 |