実践研究 物理
電気分野の2実験
大阪市立此花総合高等学校
飯 尾 吉 司

1.はじめに

  本校では,総合学科独自の授業として実験中心の「実験理科T」「実験理科U」(各2単位)を開講しています.
 「実験理科U」で行う実験の中から,電気分野の2つの実験を紹介したいと思います.

2.導通チェッカー

 一昔前には「ラブテスター」?というおもちゃが市販されていました.2人でプローブを片方ずつ握り,握手をします.好きな相手と握手をしたときには,緊張して手に汗をかいて流れる電流が大きくなりメータが大きく振れるというものです.
 人体に電気が流れるということを示すために,静電気をプラコップのコンデンサーにためて,放電する実験があります.静電気特有の電気ショックのため,実験に参加することをいやがる生徒もいます.そこで,トランジスターとメロディーICを使った導通チェッカー1)を製作して授業で使用しています.

(1)回路について
 このメロディーIC,UM66は,3端子で,曲名によって7種類あります.UM66とトランジスターでスピーカーをならす回路を作って,テスターで電流を測定したところ約26mA流れていました.人の体を流れる微弱な電流でこの回路を動作させるために,トランジスター2つをダーリントン接続します.ダーリントン接続とは,簡易にトランジスターの電流増幅率(hFE)を大きくするためによく用いられる方法です.プローブの間の物体を流れた電流は,ダーリントン接続されたトランジスターのベースからエミッタに流れます.このことによって,トランジスターのコレクタからエミッタに大きな電流が流れ込むようになります.この電流によってメロディーICが動作します.

(2)製作
【準備物】メロディーIC(UM66),トランジスター(2SC1815)×3,抵抗(300Ω,3.3kΩ,100kΩ),電解コンデンサー(10μF/15V),小型スピーカー,006P用電池スナップ,陸軍ターミナル(赤・黒),スナップスイッチ(2P),万能基板
 図1の回路図を参考に部品を万能基板上で組み立てます.簡単な回路なので時間があれば生徒が製作するようにしてもよいでしょう.ハンダ付けの際,半導体の加熱しすぎに注意して下さい.私は授業に持っていきやすいように,これをコーヒー豆の空き缶に収めています.


図1 導通チェッカーの回路図

(3)実験
 授業の導入で人間の体にも電気が流れることを示します.1人の生徒にプローブを左右の手で触らせます.導通してメロディーがなるか確認します.次に生徒2人でプローブを片方ずつ触り握手します.握手をすると導通してメロディーがなります(写真1).2人の生徒から順次,手をつないでいきます.クラス全員,手をつないで最後の生徒どうしが握手をすると,全員の体に電気が流れメロディーが流れます.全員参加型の実験が行うことができ,自分の体を電流が流れているのを安全に実感することができます.


写真1 導通チェッカー実験の様子

3.携帯インジケータの製作実験

 高校生の間で携帯電話は,身近な道具の1つとなっています.実験に利用すると多数の送信機と受信機が手に入ったことになり,個人実験も可能です.ただし,電話番号等プライバシーには充分注意して下さい.携帯電話のアンテナに取り付け,着信すると光るアクセサリーが市販されています.携帯電話からの電波を,ループ状のリード線で受けショットキーダイオードで検波し,LEDを点灯させるものです2).ショットキーダイオードの特徴は,高速,高周波の信号を整流することができること,順方向電圧降下が小さい(0.2V〜0.3V,一般のダイオードでは0.6V程度)ことです.

(1)製作
【準備物】高輝度LED,小信号用ショットキーダイオード,リード線
 回路図を見て高輝度LEDとショットキーダイオードの端子を短くカットし極性に気をつけて端子どうしを直接ハンダ付けします.(加熱しすぎないように注意して下さい.)携帯電話のアンテナの先に合うようにリード線を切ってハンダ付けします(写真2).


図2 携帯インジケータの回路図


写真2 製作した携帯インジケータ

(2)実験
 携帯電話のアンテナに取り付け,リード線の位置をいろいろと調整してよく光る位置を見つけましょう(写真3).PHSでは,点灯しませんでした.送信出力の違いと考えられます(携帯電話:800MHz or 1.5GHz ,800mW程度,PHS:1.9GHz ,80mW程度).自分で製作したものが電源なしに明るく点灯することは,生徒の興味をひきます.
 携帯電話からエネルギーが出ていること,医用電気機器や精密機器に影響を与える可能性があることなどを学ぶことができます.物理的な内容だけでなく,病院等で携帯電話を使用しないなどの使用上のマナーにも発展できそうです.


写真3 インジケータの調整

4.おわりに

 演示実験より,グループ実験,さらに生徒一人ひとりが行う個人実験の方が,生徒はより主体的に取り組むことができます.しかし,高等学校レベルのこのような実験教材は,多くありません.もっと多くの素材を個人実験として教材化を図っていきたいと考えています.

【参考文献】
1)田中義朗:“面白い電子工作”,理科の教育,1993.11 ,p48-49

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