物理授業実践記録 |
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コンピュータを用いた力学実験 ―斜面を転がる鋼球のv−tグラフの作成― |
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福岡県立城南高等学校 西村衛治 |
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1 はじめに
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コンピュータを活用した物理実験は,従来の実験方法では測定が難しい計測を可能にします。本校で実施したA/Dコンバータを用いた簡単な物理実験を紹介します。 |
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2.物理計測における
コンピュータ利用のメリット |
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コンピュータの物理教育への利用は,物理計測だけでなくレポートの作成,シミュレーションなどさまざまな方法がありますが,A/Dコンバータを用いた物理計測を行った場合,以下のようなメリットが考えられます。
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3.A/Dコンバータを用いた
物理実験例 ―斜面を転がる鋼球のv−tグラフの作成― |
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コンピュータを用いた物理計測の基本を学習するため,電極つきのレールを転がる鋼球の速度を測定し,得られたデータを表計算ソフトで処理しv−tグラフを作る実験を行いました。(図1)
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4.実験を指導して
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今回のコンピュータを用いた実験を行う前に,記録タイマーを用いた重力加速度の実験を行い,手作業でv−tグラフを描きました。 自分自身の目で実験を観察し,計測し自分で実験データの処理を行うことは,実体験が少なくなっているといわれている現代において,科学的なものの見方・考え方を身につける上でも,ますます重要になると思います。 手作業で重力加速度の実験を行った後に,その体験をふまえてコンピュータ計測を行うことにより,コンピュータ計測のメリット・デメリットを実感しながら理解することができます。v−tグラフの作成では,手でグラフを描くときには誤差を考慮して直線を描きますが,コンピュータでは折れ線グラフしかできません。コンピュータで同様な処理を行うためには近似計算をさせる必要があります。手作業とコンピュータの2つの実験を自分で行うことにより,それらのことを実感させて理解させることができます。 コンピュータ計測のもうひとつのメリットは,一度操作方法をマスターすれば,センサーを交換するだけでいろいろな実験に利用できることです。この実験は,コンピュータ計測の導入としての位置付けであり,その後の物理実験における,測定方法のひとつとして,運動量の測定,比熱の測定,電球の電流―電圧特性などの場面で利用しました。 |
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5.おわりに
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現在2台のコンピュータを実験室の廊下にむけて設置し,気温の連続測定を行っています。現在の気温をリアルタイムでデジタル表示とグラフ表示を行っています。廊下を歩いている生徒が,現在の気温とその変化をグラフで見ることができ,多くの生徒が足を止めて見ています。コンピュータによる連続計測の例を示す意味でも手軽で実施しやすい演示実験です。(図9)
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