続・高校における情報教育
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教員の意識改革と自己研鑽
聖心女子大学教授
永 野 和 男

 情報教育を,そのねらいどおりに達成できるかどうかは,まさに先生方の意識にかかっている.
 普通教科「情報」の授業展開を,従来の高校の授業と同じように捉えて,まず先生方が学習内容を知識として完全に理解し,それを学生に教え込むというような方法では,この授業は展開できない.
 しかし,情報活用の実践力の育成では,教師自身が情報活用能力を身に付ける努力をしないと,子供たちに指導できるわけがない.そういう意味では,情報を担当する先生たちは,情報科学の内容,ディジタル化技術,あるいは社会への影響という知識面での勉強もさることながら,授業を展開していくときに,教師がどういう役割を果たし,子供たちと関わっていくのかをイメージし,今から少しずつその役割ができるように練習していく必要がある.
 情報教育ではクリエイティブな発想が非常に重要であり,生徒が良いアイデアを出したときに先生たちがそれにどうコメントを返すか,というようなことが実際の学習の中で大切になってくる.
 評価の方法も,大いに改善が求められるであろう.特に,演習の部分をどうやって評価していくかである.お手本があって,その通りつくれば正解といった発想では,真似する子供たちが育つだけで,クリエイティブな能力は育成されない.できるだけ,バツ(×)というよりはマル(○)のメッセージを返してあげたい.しかし,教科の成績は,あくまでも,5,4,3,2,1の評定をつけることになる.そういう具体的な評定の問題と,それから実際に子供たちに返すべき評価(アセスメント)を区別して,授業を運用することが重要になってくる.
 また,教師自身も普段からクリエイティブな発想を自己トレーニングしていく必要がある.教員研修の方法も,従来のように,講義中心に内容を理解させるだけでなく,教師自身が何人かでグループになって,課題を討論したり,創作したりといった方法を中心にすえる必要があろう.情報の収集やコミュニケーションにはインターネットの利用が前提となるので,これを活用することは必要不可欠になる.
 普通教科「情報」は,技術者養成をするために設置されたわけではない.情報化社会に生き抜く力というものを,高等学校の段階で身に付けさせようというのが,この教科の非常に大きなねらいである.こういうことを十分理解して授業を展開してほしい.