続・高校における情報教育
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ネットワーク社会を生き抜く力を集大成する「情報C」
聖心女子大学教授
永 野 和 男

●「情報C」のねらい

 「情報C」の目標は,「情報のディジタル化や情報通信ネットワークの特性を理解させ,表現やコミュニケーションにおいてコンピュータなどを効果的に活用する能力を養うとともに,情報化の進展が社会に及ぼす影響を理解させ,情報社会に参加する上での望ましい態度を育てる」と記述されている.
 よく「情報社会に参画する態度」のための科目といわれるが,「情報の科学的な理解」も重視している.例えば,情報のディジタル化(文字,数値,画像,音などの情報のディジタル化の仕組みの理解),情報通信ネットワークの仕組み(情報通信ネットワークの仕組みとセキュリティを確保するための工夫),社会で利用されている情報システムの信頼性を高める工夫などが扱われる.
 情報Bが,情報システムを作り出す側の立場の必要な基礎知識や技術を重視していることと比較すると,情報Cでは,作り出されたシステムに,質の高い価値ある情報を流通させ,社会的に機能させていくための基礎的な知識技術の習得を目指している点に特徴がある.
 情報Cのもうひとつの特徴の1つとして,「マルチメディアによるプレゼンテーションの演習」と,これまでの学習を集大成させた「ネットワークを活用した社会調査実習」の比較的長時間の実習がある.これらの実習は,単にそれぞれのソフトウェアの活用演習にとどまらず,「生徒一人ひとりが主体的に問題を発見する学習活動を設定し,その課題解決の過程を通して,必要な情報の収集,判断,処理し,発信することなどを体験させる」という一連の情報活用の演習であると同時に,インターネット等を利用した情報の収集の方法,調査の時点でのデータ処理や報告書のまとめにおける表計算やDTP(デスク・トップ・パブリッシング)の活用,情報を発信するための方法や効果的な表現方法など,これまで学習してきたさまざまな知識や技能を実践的に活用し,評価する機会として重要な実習であり,全員に体験させることが求められる.
 また,調査した結果をネットワーク上に公開して相互に評価しあったり,情報交換させることにより,理論的にも学習した情報の表現に対する実践的な評価が可能になるとともに,他の人たちとネットワークでコミュニケーションするためのルールやモラル,情報の公開・保護と個人の責任についても実践を通して体得していく,きわめて魅力的な新しいタイプの科目となろう.