続・高校における情報教育
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コンピュータを個人の道具として使いこなす「情報A」
コンピュータの仕組みや処理のメカニズムを考える「情報B」
聖心女子大学教授
永 野 和 男

●「情報A」のねらい

 「情報A」は「情報活用の実践力を中心とした科目であり,主としてパソコンを個人の道具として活用できるようにすることに焦点がある.
 情報Aでは,1/2(35時間)以上が演習に指定されていて,「統合的な処理とコンピュータの活用」,すなわち,マルチメディアをいろいろ駆使して,具体的な作品を作ったり発表したりする活動が期待される.
 しかし,これは単なるものづくりの演習が目標の科目ではない.作品作りや発表といった学習活動は,すでに小中学生の段階で幾度も経験してくる.高校では,活動を中心としながらも,情報の収集,分析,発信などの各段階で,情報やメディアの選択や処理の方法が適切だったかといった,自らの情報活用の方法や成果を意識化させ,自己評価させていくこと,それらの技術を支えている仕組み(従来,別々のメディアで扱われてきた情報が,コンピュータでディジタル化されて統合化できることや,ディジタル技術がこの先もさらに発展して,実際の生活の中に生かされていくこと)の理解や注意すべきモラルや社会的な影響にも目を向けるように指導していくことが求められる.情報Aの実施を考えている学校では,十分な演習の時間の確保とコンピュータの利用環境の整備をととのえておくことが重要である.

●情報Bのねらい

 「情報B」は,コンピュータにおける情報の表し方や情報処理の仕組み(逐次処理やアルゴリズムの理解),問題解決でコンピュータの効果的な活用の考え方(モデル化やシミュレーション,関係データベースの設計)などを学習する.しかし,高度な専門的内容を扱うわけではない.
 情報Bでは,プログラミングの具体的な演習指導は行わないということになっている.これは,情報を学ぶ上で,プログラミングが不要と考えているからではない.短時間の演習が単なるプログラミング言語の教育になったり,機器の操作演習になったりするのを懸念したからである.したがって,プロセスをシミュレートしたり,処理のメカニズムを考えたりするような,机上の思考演習は大いに奨励される.
 プログラム開発演習や情報科学など,より専門的な内容のためには,専門教科「情報」(課題研究を含め11科目ある)の科目の中から,普通科の内容に取り入れてもよいことになっており,そちらでの展開を期待しているわけである.