情報目次へ高校における情報教育(3)

静岡大学情報学部教授 永野和男

新教科「情報」の目標は万人のための「情報教育」

 普通教科「情報」は教科なので,指導のためには「情報」の教員免許の取得が必要である.他の教科の免許で代行することはできない.
 文部省では,課程認定や集中的な教員研修を実施して,平成15年までに必要な教員数を確保すべく免許の交付計画を進めている.免許が出される以上,巷で噂されているような「理科や数学の授業で当面代行する」という処置はとられない.では,どうすれば「情報」の免許を取得できるのか.
 文部省では,来年度から年間3000人ずつ,3年間で,9000人規模の15日間の長期教員研修を実施して,免許を交付(平成15年から実際にこの科目を教えることを前提)する.これらの研修への参加は,各教育委員会からの推薦となりそうなので,関心のある教師は,その情報が得られるよう注意が必要だ.ただ,普通教科「情報」の免許は,専門教科「情報」(専門的な内容の11科目)と兼用となったので,研修内容は情報科学やコンピュータシステム等の高度な専門知識が中心になる.
 しかし,あくまで普通教科「情報」の目標は万人のための「情報教育」であり,情報技術者の育成が目的ではない.教師に求められる資質はハードやソフトの高度な専門知識よりもむしろ,情報リテラシーやネットワークモラルなどの知識であろう.
 また,コンピュータの科学的側面にやや理解の重点を置いた情報Bでは,コンピュータの逐次処理やアルゴリズムの理解,関係データベースの設計作成,また,モデル化やディジタル化についても指導していくことになるが,これについても「高度な専門的内容」を指導するわけではない.
 普通教科「情報」では,「情報活用の実践力」を身につけさせるため,座学よりも演習を重視している.しかし,それは,ただコンピュータの前にすわって,キーボードを手早く操作させたり,プログラムを組む練習をさせるというものではなく,生徒の主体的な情報活用と問題解決のための活動をさす.例えば,情報Aでは,マルチメディアによる作品づくりや,インターネットでの情報収集.情報Bでは,モデル化やシミュレーションによる問題解決.情報Cでは,インターネットを活用した調査活動,レポートのまとめ,発信などが予定されている.
 高校ではこの生徒による主体的な情報活用を中心とした学習の展開のために,ネットワーク環境やレイアウトの変更可能なフレキシブルな教室環境の整備が急がれよう.