情報目次へ高校における情報教育(2)

静岡大学情報学部教授 永野和男

主体的に課題をもち,主体的に情報を活用する

 平成15年からの新しい学習指導要領の実施に備えて,中学校では,平成12年度から移行措置に入る.情報教育についていえば,技術科の87.5時間の内容の約半分程度が,「情報とコンピュータ」に関連する内容になる.その内容は,(1)生活や産業の中で情報手段が果たしている役割,(2)コンピュータの基本的な構成と機能及び操作,(3)コンピュータの利用,(4)情報通信ネットワーク,(5)コンピュータを利用したマルチメディアの活用,(6)プログラムと計測・制御とで構成される.このうち,(1)〜(4)は,中学生全員必修である.したがって,情報教育のうちの,基礎的な知識内容と技術指導は,中学校において全員が体得してくることになっている.
 高等学校に新設される教科「情報」では,3つの科目が設置されることは前回述べた.「情報A」は情報活用を中心とした科目であり,主としてパソコンを個人の道具として活用できるようにすることに焦点がある.進学を重視しない高校向きか.「情報B」は,情報活用していくのに必要な基本的な考え方として,コンピュータにおける情報の表し方や情報処理の仕組み,情報技術の役割や社会への影響,問題解決においてコンピュータを効果的に活用するための科学的な考え方などを学習する.演習としては,モデル化とシミュレーションなどコンピュータを活用した問題解決が主となっている.理系に進学する学生向きか.「情報C」は,「情報社会に参画する態度」のための科目との誤解があるが,メディアの仕組みやディジタル化,ネットワークの仕組みや情報通信の方法なども扱っており「情報の科学的な理解」も重視している.情報Bが,どちらかと言えば,情報システムを作り出す側の立場に必要な基礎知識や技術を重視しているのに対し,情報Cでは,作り出されたシステムに,質の高い価値ある情報(コンテンツ)を流通させ,社会的に機能させていくための知識技術の習得を目指している点に特徴がある.情報化社会の問題を扱った課題研究があるなど,人文科学系へ進学する学生向きの内容になっている.
 これら3つの科目は,いずれも演習の時間を規定(情報Aでは,全体の2分の1以上,B,Cでは,全体の3分の1以上)していて,生徒自らが課題をもって情報や情報機器を主体的に活用するという,情報教育の基本的な考え方を重視した構成となっている.