情報授業実践記録
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グループによる問題解決学習
−合宿問題を通して−

東京都立紅葉川高等学校 全日制
坂野幸治

 
1.はじめに

 本校は全日制普通科であり,葛西臨海公園に近い自然豊かな場所にある。平成22年4月現在の在籍人数は735人であり,生徒の多くは江戸川区,江東区から通学している。学期は3学期制で,授業は1コマ50分単位で行われている。
 授業は,通常の授業に加えて,土曜補習や定期考査後の教科集中指導などが設けられて生徒の学習意欲を向上させている。

 
2.情報の授業における本校の実態

 本校課程では1学年に「情報A」を必履修科目2単位,3学年に「情報C」と「コンピュータデザイン」(共に自由選択科目として2単位)を展開している。
 設備はコンピュータ室に構内LANを44台で組まれており,インターネットはブロードバンドの光ファイバー回線で接続されている。
 生徒は入学当初の段階で,インターネットを活用した授業を小学校・中学校でほぼ全員が受けている。しかし,パソコン操作やコンピュータの基礎知識の量について生徒間に差が見られるため,1学期は生徒のコンピュータのスキルの差を縮めていく授業を行っている。2学期からは,生徒によるプレゼンテーションやWebページ制作などを行っている。これらの単元は個人で作業することが多くなるので,グループで協力しながら学習を進めていく授業も行っている。

 
3.グループによる問題解決学習の授業実践

(1) はじめに

 各クラス4人一組になって,チーム対抗戦として授業を進めていく。グループ分けは生徒の自由に決めてしまうとうまく行かない場合が多いので,教員がコンピュータ室の近くの座席どうし(出席番号順の座席)で4人組を決めている。
 グループを決定したら,問題解決学習のテーマを発表する。テーマは「合宿問題」という仮の部活で合宿に行くことを想定して課題について最も良い3つの案をグループで考えさせる。制限時間は4時間で行い,評価は早く答えを出したグループから順位をつけることで行っている。早く終了したグループは追加課題を出すことにしている。

(2)課題

 あなたは,部活動の合宿先を確保する責任者になりました。合宿先を確保する手順を決め,下級生にその手順を伝えて作業させます。
 合宿には,練習用のスポーツ施設と宿の両方を確保する必要があります。以下の条件をできるだけ満足する合宿先と施設を確保するためによい方法を考えて手順を下級生に紙に書いて伝えてください。
 なお,参加するのは,全員同性で部屋割りは考慮する必要はありません。

<条件>

a 合宿は,7月20日〜7月31日の間の3泊4日で行い,初日は午後,中2日,最終日午前は,施設を借りて練習すること。
b できるだけ多くの部員が参加できること。
c 全員が同じ宿に宿泊でき,期間中は宿の移動がないこと。
d 期間中の施設使用料と宿代(食事代等込み)との合計が一人当たり2万5千円未満でできるだけ安いこと。
e 練習施設までの移動が10分未満であり,できるだけ短時間であること。

(3)資料及びワークシート,レポートの配付

 課題を伝えたら,各グループで班長を決め,班長が今回の課題を解決するために必要な資料を教員より受け取る。各グループに渡される資料及びワークシートは以下の6枚である。

   資料(表1) 合宿用のスポーツ施設と宿の候補

   資料(表2) 施設と空き状況と費用

   資料(表3) 部員の都合(45名分の部員名簿)

   資料(表4) 宿と空き状況と費用

   ワークシート1 集約用

   グループ提出用レポート (下記参照)

 また,パソコンに宿情報や練習するための施設情報もLANのネットワークドライブに情報が掲載されているので参考に使わせている。


 
4.生徒の授業風景

 どのように解答を出すかは各グループの話し合いに任せているので,班長を中心にして班員が作業手順や資料の情報分析,費用の計算,役割分担を決めていく必要がある。出席番号の近くの座席どうしで話し合いながら作業を進めていくので,必ずしも仲良しの生徒とグループを組めるわけではないが,お互いに協力しながら楽しく授業を行っている。教員は生徒の質問にできるだけ答えないようにして,「あなたはその質問についてどう思いますか?」と逆に聞き返して生徒に考えさせている。レポートが完成したら,班長は解答が正解であるか教員に見せに行く。答え合わせの時は生徒が一番緊張する瞬間である。
 
5.おわりに

 生徒はクラスの出席番号順でグループを決めているので,あまり話をしたことがない生徒と作業をすることもある。この授業のよいところは,初めて会話する生徒とお互いに協力し合いながら学習ができることである。本校の生徒にはあらかじめグループを決めて,必要な資料を教員が用意しているが,もし,教員の支援がなくても生徒が自主的に学習活動できるのであれば,グループ決めや資料の集め方,役割分担などすべてを生徒に一からやらせてみるのもいいのかもしれない。
 この授業を毎回行って思うことは,グループでレポートを完成させて,解答が合っていた場合に見せる笑顔は生徒の充実感そのものでないかと思われる。今後も情報の授業では生徒にわかりやすく指導しながら,生徒の充実感を味わうことのできる教材を研究していきたい。