情報授業実践記録
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素敵なプレゼンテーションをつくる

(神奈川)藤沢翔陵高等学校
柴田功史朗

 
はじめに

 本校は私立の男子単独校で普通科(文理・特進コース)と商業科を併設している。
 校内には2つのPCルームのほかに,マルチメディア教室×2,図書室,進学指導室,就職指導室にPCが配備され,LAN制御管理されていて,生徒は入学時にIDカードを取得し,授業以外に休み時間,放課後に,自由に入室使用することができる。
 普通科(文理・特進コース)では『情報A』,商業科では情報関連の商業科目でスキルアップをはかっている。
 今回は,普通科1年生(文理・特進コース)『情報A』で行った独自テーマによるプレゼンテーションの実習について紹介したい。

 
1.実習の目的

『情報A』(1年生・普通科;文理コース,特進コース 2単位で実施)

 ツールとして,PCや周辺機器を選択できるようにする。どんなことができるのか,発展性を含めて正しい使い方を定着させる。

書く・描く・作る・まとめる・残す・送る・提示して話す

 スキルに差があるので,基本を丁寧に指導しながらも経験者の関心を刺激するような技術も伝える。繰り返しの訓練にならないように,進度や教材提示のタイミングを工夫する。

 
2.プレゼンテーション実習

(1・2学期で35〜40時間程度の授業と実習の実施後,3学期に実施)

(1)4〜5時間かけて,プレゼンテーションソフトの使い方を説明する。
 イラストや画像・音声の挿入,スライドの切り替え設定,動作設定ボタンなどの技法を全員に習得させる。

(2)教科書で何度か触れた,『著作権』,『肖像権』,『情報マナー』などを確認した上で,各自3〜5分のプレゼンテーションを作成する。
[1] 題材は基本的に自由。3〜4時間で作成できるものとし,作成前に独自テーマを登録する。
できるだけ自分の得意な分野で知識があり,資料や素材の集めやすいもの,オーディエンスの前で話しやすいもの,共感や関心を与えるものをテーマ設定するように指導する。
[2] 校内で使用できる周辺機器を提示し,デジカメの貸出や携帯画像のキャプチャーも可とする。
[3] Web上にフリー素材が存在することを教える。
[4] 各自様々な手段で工夫を施し,独自テーマにそったスライドを7〜10枚程度作成する。
[5] 完成後は発表原稿を考え,各自でリハーサルをイメージして,同時にスライドの点検も行う。

(3)1クラス40名弱の生徒が,順番に独自テーマでプレゼンテーションを行い,オーディエンスになった側は簡単な評価と感想を記録する。
 全員のプレゼン終了後に,ファイルを回収する。

 プレゼンテーション・独自テーマ例
  ・美味しいご飯の炊き方
  ・アイヌ語
  ・春高バレーへの道のり
  ・ペンまわしについて
  ・50種類のゴキブリ
  ・犬の能力
  ・野菜炒めの作り方 等

 ここ数年で,最もオーディエンスの評価が高かった「美味しいご飯の炊き方」というプレゼンテーションを以下に紹介する。

 「美味しいご飯の炊き方。」テーマをマイクロフォンで宣言した後,タララッタタラタ,タララッタタラタ,タララッタッタッタ〜...!
 TVの料理番組のジングルが流れる。1枚目のスライドはタイトルと和食の画像で,プレゼンターは着目した動機を説明する。2枚目のスライドでは「はじめに用意しておくもの。」の文字に,計量カップや炊飯器などの画像が1つ1つ使用する順番にアニメーションで映し出される。

 統一された背景に,象徴的な文字と画像。色には背景に適しているものと,文字色に適しているもの。補色の関係や類似色。暖色は膨張色で,寒色は収縮色。…etc. 見やすいスライドを作るための知識が生かされている。

 スライドは「米のとぎかた」から「炊飯」,「蒸らし」へと進み,最後は「お櫃からお茶碗へ」で誰もが箸をはこびたくなるイメージ画像で終わる。

 他には,「カップラーメンの変わった食べ方」で実演を交えながら紹介したものや,「管楽器の紹介」で実際にトランペットを演奏したものなどが記憶に残っている。

 年々進化していると感じている点は,スライドの完成度を上げようと工夫しだした者が,「ここは実物(実演)の方が良い」「オーディエンスを引きつける,ほかのツールはないか」と考えはじめている点である。
 独自テーマを考えているときに,過去のテーマを列挙したり,優秀作品を紹介したりしていることが良い効果につながっているようだ。
 完成して喜べる実習。他者から刺激を受けて,自らのスキルアップを考える授業。1年次に上手く経験できた者は,上級生になってもPCルームに帰ってくる。進路選択時などの自己表現で,1つのツールとしての可能性を理解して。

(4)評価について
[1] 行程表を作り,すべての段階でチェックポイントの到達度を見る。
ア.準備(テーマの設定,資料・素材集め)
イ.スライドの作成
ウ.発表原稿の作成,リハーサル
エ.プレゼンテーション
[2] 提出されたファイルで,スライドの工夫を点検する。
枚数,背景,文字,文字色,画像,音声,切り替え,ボタン,アニメーション他
[3] オーディエンスの反応を加味する。

文化祭のポスター作成例(専門教科・情報の『情報と表現』にて)

  

マフラータオルのデザイン(生徒会)

 

 ご質問・ご意見は以下までお願いします。
 sibata@shoryo.ed.jp 情報科主任:柴田功史朗