情報授業実践記録
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高校生活スタート時の
『基本的な情報活用能力』の向上

千葉県立高等学校
林 一雄

 
1.はじめに
  義務教育終了時の『情報活用能力』の実態

 教科「情報」では、入学当初より系統だった指導をすることにより、『基本的な情報活用能力』の育成が基礎になると考えて取り組んできました。
 情報化の進展により、実践的な経験の機会が増え、高校生の入学時における『情報活用能力』は一気に向上してきました(*1)。
 しかし、個々の知識や技能については、体験の有無による偏りや、体験の量による格差の拡大が感じられます。
 以前に、入学早々の生徒を対象として、用語の知識を問う簡単なアンケートを実施し次のようになりました。

アンケート内容はこちら(PDF形式)


 全体のポイント(図1)にピークが二つあることから、格差がはっきりと読み取れました。両極端の生徒がいることから、家庭間の格差、グループ実習による弊害などを感じ取りました。
 分野ごとの平均ポイント(図2)から、基本操作とWeb検索の経験を読み取ることができますが、表計算やワープロを使いこなしての処理や各種アプリケーションの経験が少ないことが読み取れました。
 授業の中でも、ブラウザのことを「Yahoo」といい、特定のポータルサイトの経験しかない生徒や、プレゼンテーションソフトに未経験の生徒が少なくないことなどからも、確かめられました。
 本稿では、昨年まで勤務した前任校での、1年次の「情報A」の1学期中間考査まで(7回)の実践を報告します。(*2)

 
2.情報Aの授業展開

(1) 概要
 「基本的な情報活用能力」の育成を目的としました。
 特に入学早々には、全員が基礎的な実習を通して基本を再確認し、経験の少ない生徒を引き上げることを目標にしました。
 曖昧なままになりやすい名称や用語、操作方法なども、できるだけ正確に紹介するとともに、その後の学習の基礎となる事柄を意識的に盛り込むように工夫しました。そして、経験が豊富な生徒にとっても、「科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の学習の基礎として、その後の学習に活かせる内容となることを期待しました。

(2)授業展開

テーマ
概要(実習項目)
備考(解説事項・用語等)
0

オリエンテーション
(教室)

・シラバスの説明
・コンピュータ室の使用上の注意

・教科「情報」の目的(e-Japan戦略を含む)
1

基本操作(1)
「ハードウェア
・ソフトウェア」

・ ハードウェアの構成
・ 起動
・ ログオン
・ 基本画面
・ 終了
・ もう一度起動
・ タイピング練習

・ 本体・周辺機器
(入力装置・出力装置)
・ ブート時の状態
(ボタン ランプ)
・ 認証 パスワードの管理
・ GUI デスクトップ アイコン
 ホットスポット
 ダブルクリック
・ プログラムの起動
・ プログラムの終了

2

基本操作(2)
「教室内LANについて」

・ 起動
(タイピング練習)
・PCの性能について
 本体内部の構成
・サーバ
 ネットワークプリンタ
・ 描画ソフト起動
(ペイント)
 名前をマウスで描く
・ ネットワークドライブに保存
・ ログオフ
・ 席を移動してログイン

・ データと信号の伝達
 CPU 主記憶装置 他
・ 教室内LANとWAN
・ スタートメニューからの起動
・ データの管理
(保存場所,ファイル名,
ファイルの種類)
・ ネットワークについて

3

基本操作(3)
「キーボードについて」

・ 起動
(タイピング練習)
・ キーの数を数える
・ キーボードのランプを点滅
・ 特殊キーの位置の確認
 キャラクターキーの確認
・ テキストエディタ
(メモ帳)
 ウインドウの操作
 Shiftキー CapsLock

・ キーボードの種類,歴史
・ ランプの状態の確認
・ キーの種類,名称,位置
 ホームポジション
・ 特殊キーからの起動
 タイトルバー メニューバー 他
 文字の入力

4

文字入力(1)
「半角英数の入力」

・ 起動
(タイピング練習)
・ 文字の削除、挿入
・ キーを順番に押す
 Shiftキー CapsLock
・ 名前をつけて保存

・ 正し姿勢 タッチメソッド
(手の上に布をのせて)
・ カーソル
 Backspace Delete
・ Shift+0 \
 記号の入力と名称
・ ファイル名 拡張子

5

文字入力(2)
「半角文字・全角文字」

・ 起動
(タイピング練習)
・ アナログ量とディジタル量
・ 文字コード表
・ 半角文字と全角文字
・ 日本語コード表
・ 機種依存文字
・ ローマ字入力
(保存)

・ 2進16進 ビット バイト
 1バイト文字 2バイト文字
・ 文字化け
・全角ひらがな

6

文字入力(3)
「漢字変換」

・ 起動
(タイピング練習)
・ かな漢字変換
・ 日本語言語バーの表示
・ 連文節変換
・ 再変換

・ 漢字変換 IME
・ 手書き入力 他
・ 単語 文節 文
・ 変換関連キー



(3)効果
・ はじめに、実習でつまずきそうな事柄を前もって指導しておくことで、小さなトラブルは自分たちで解決できるようになりました。
・ それまで、曖昧にしていた各部の名称や操作方法などを、あらためて正確に説明しておくことで、その後の実習を円滑にすることができました。
・ 意識的に、先の単元の学習に必要な知識を盛り込むことで、授業の質の確保をするとともに、習熟度の高い生徒にとっても、発展性を感じさせることができました。(授業はその後、プレゼンテーションソフトの活用、HTML言語、画像・音声の処理、日本語ワードプロセッサ、電子メール、表計算ソフトと展開していきました。)
・ 授業のはじめにタッチメソッド(タッチタイピング)の演習時間を5分程度とることで、キーボードに慣れるようにするとともに、機器とログインのトラブルに対応することができました。(写真1:手の上に布をのせての練習。机の配列は変更前)
・ 生徒は一般的な操作方法を共通に理解しているので、他教科との連携を円滑に行うことができました。(写真2:「美術 I 」の授業風景。机の配列は変更後)


写真1


写真2

(4)課題
・ 授業の中で実技力を向上させるための繰り返し演習の時間を、とることができませんでした。(2単位で、「基本的な情報活用能力」の獲得のために必要な内容を盛り込むと、致し方ないことかとは思います。放課後等の自主的な取り組みにまかせました。)
・ 机の配列について、当初は写真1のように机間巡視のしやすさを重視した形でした。しかし、アンケート調査をしたところ、教卓に背を向ける位置の生徒から「全体説明が聞きにくい」という意見が多く、写真2のように変更しました。その結果、改善されました。どのような配置が良いのか、事例を知りたいと思います。(なお、作業は夏休み中にコツコツトやりました。)
・ TT(チーム・ティーチング)について、二人の指導者の役割と動きについて、まだ改善の余地があると感じています。外国語のALTの授業や、球技での複数の審判の役割と動きのように、今後研究が進むことを期待します。

 
3.まとめ

 「情報教育」(=教科「情報」)は、卒業後に「情報化社会」を生きぬいていく今の高校生にとって、とても重要です。また、高校在学中も「総合的な学習の時間」の他、さまざまの教科の「授業の情報化」が進むことも期待されています。これらを円滑にするためにも、入学時点での「基本的な情報活用能力」が大切だとあらためて思います。
 将来的には、小学校から高校まで、発達段階に応じて、情報に関する基礎基本を系統立てて学んでいけるように、機運が高まることを願っています。
 例えば、小学校高学年の算数で2進数を、中学校の数学または技術家庭科で16進数(できればsRGBコードなどと関連付けて)を学ぶことは、児童生徒の興味関心とも一致することと感じています。そして、高等学校でHTML言語やプログラミングなどと出会うときの基礎として効果的だと思います。
 決して義務教育や高等学校の現状を批判するつもりはありません。これから、皆で考えられたらいいなと思っているということです。

(*1)1995年から5年間、旧学習指導要領による教育課程の開始時から、県立高校(普通科、女子)で3年次選択科目として「情報処理(商業)」を(専門の理科と並行して)担当していました。この間にOSはMS-DOSからWin95へ、学校もインターネットにつながるようになりました。
 当時は、マウスの持ち方から指導したものでした。現在は、ダブルクリックができない生徒は皆無です。このように高校生の『情報活用能力』は高まっていますが、つまずきやすいところは共通していると感じています。
(*2)前任校(普通科、共学)の教育課程は、1年次に「情報A」(必修)、3年次に「情報C」(選択)となっていました。1年次に普通教科「情報」を全員履修とすることは、入学直後に『情報活用能力』の基礎基本を徹底できる長所があると考えます。