情報授業実践記録
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フリーソフトを利用したWebサーバ活用例

三重県立四日市南高等学校
田辺照祥

 
1.はじめに
  本校における情報科教育の状況

 本校では,2年生の全8クラス(普通科数理科学コース2,普通科6)において,情報Cを2単位履修しています。入学生のほぼ全員が大学進学希望で,国公立大学に約40%,私立大学に約50%の生徒が進学しています。特に,数理科学コースにおいては,数学や理科に関心を持ち,理系の大学に進学を希望する生徒も多く,情報科の授業内容についても工夫を重ねている状況です。コンピュータは第1情報メディアルーム(43台),第2情報メディアルーム(40台),コミュニティスペース(5台),図書館(4台)の他,各教室に1台ずつ設置し,校内LANを経由してサーバにて管理しています。各教室のコンピュータはフリーソフト等を活用して,リスニング試験の音源再生や電子掲示板システム,緊急連絡の表示に活用しています。
 年度初めの授業で,2年生全員にアカウントを提供し,授業で作成したデータは,他の生徒がアクセスできない個人フォルダに保存しています。教員は配布専用フォルダを活用し,授業時に必要なワークシートや資料を生徒に提供します。また,生徒が作成したデータは,提出専用フォルダを活用することで,教員しかアクセスできない領域にデータが収集され,添削や評価を円滑に行うことが可能です。

 
2.Webサーバの活用

 本校では,授業の円滑な進行と各生徒の理解度に柔軟に対応するため,状況に応じてWebサーバを設置し,活用しています。以下に活用例を示します。

(1)校内LANに限定したWebサーバ
 生徒への資料提示や問題解決のツールを提供するためには,校内LANに限定したWebサーバがあると便利です。ここでは,04WebServer(*1)を例に,授業実践を以下にまとめます。
 (*1)フリーウェア。Soft3304が開発。インストールや設定が簡単な上に,WebフォルダやCGIが活用でき,SSL暗号化通信も利用可能。

[1] 授業用のページ
 学外のネットワークと切り離して使用できるので,生徒にインターネット等の学外の情報を参照せずに授業に専念させることができます。また,生徒が作成したレポートやホームページを参照し,授業に必要な情報だけを選択できるようにしています。  
 

図 [1] - 1 授業用のページ(一部抜粋)


 図 [1] - 2 課題レポートの一覧を表示

図 [1] - 3 課題レポート(生徒作成)

[2] Webサーバの設定
[3] ユーザ認証

 Webサーバに設定できるユーザ認証機能を活用して,シーザー暗号の考え方を用いたパスワードを設定しました。正しく復号されたパスワードが入力されると,下図 [4] のように復号が成功したことを称える画面が表示されます。

図 [2] Webサーバの設定


図 [3]  パスワードを当てよう!

図 [4]  復号が成功した画面


(2)授業時以外の学習にも対応したWebサーバ

 レンタルサーバ等のインターネット上に,生徒自ら授業内容を確認できる領域を提供しています。個人情報の扱いには充分留意する必要がありますが,テスト対策として活用したり,授業を休んだ生徒が内容を確認したりすることが可能です。

[1] フリーのCGIスクリプト(*2)を活用したタッチタイピングの実施
  校内のコンピュータ(コミュニティスペースや図書館に設置)からはもちろん,家庭のコンピュータからインターネットに接続して利用することが可能です。ランキングも表示されるので,生徒の向上心を高めることができます。昨年度は,授業中に5分程度時間を割いて,タッチタイピングを実施しました。
  (*2)「打鍵トレーナー」 えむさんが開発。

 

図 [1] - 1 タッチタイピング


図 [1] - 2 ランキングを表示


[2] 考査前の特設サイト(携帯にも対応)を設置
 考査前には下図 [2] - 1 のようなプリントを教室に掲示し,生徒が各自で復習できるような領域を提供しています。特設サイトは携帯アクセスにも対応しているので,パケット定額契約の有無を生徒に確認させた上で,確認テスト等に取り組ませました。携帯で復習ができるということで,生徒には好評でした。また,考査直前に試験範囲等の変更があった場合に,迅速に対応することができ,教員にとっても使い勝手が良いと 考えられます。

図 [2] - 1 考査前の復習を促すプリント


図 [2] - 2 考査向け特設サイト


[3] 授業内容の小テスト(携帯にも対応)
 授業で提示した解法や用語について,生徒が授業の終盤や放課後に復習できるように,択一式問題で問題を作成,確認するWebページを設置しました。ここでは5択問題まで作成できるCGIスクリプト(*3)を利用しました。クイズ形式に特化されたシステムのため,ログ収集や正答率,成績分布等の集計機能も豊富で,評価資料として活用しやすいのが利点です。
 (*3)「 QQQ Systems 」ジュン☆さんが作成。成績分布のグラフ表示やテキスト入力形式の出題も可能。

図 [3] - 1 択一式問題の画面


図 [3] - 2 記述式(計算)問題の画面

図 [3] - 3 成績分布を表示
 
3.最後に

 検索サイト( Yahoo! や Google など)が提供するフリーメールやフリースペースを,授業で利用する機会も多くなってきましたが,このような場所に保存された個人情報は,いったいどのように維持・管理されているのでしょうか。各検索サイトを運営する企業は,情報技術を駆使して多様なサービスを提供し,利用者の興味・関心を寄せていますが,サービスのしくみは秘密のベールに包まれていてわかりません。そのようなサービスを利用することに不安があるからと言って,専門の業者に委託して,万全の体制で授業を展開するだけの経済的な余裕はなかなかありません。
 情報科に携わる教員のなかには,昼夜問わずコンピュータの対応に追われている方も多いと聞きます。とても不幸な状況です。そもそも情報科の教員は SE ではありません。授業のパイオニアであり,生徒の様々な問いかけに柔軟にサポートできるだけの情報環境が予め整備されていることが望まれます。
 今回の報告でフリーソフトを紹介させていただいたのは,授業の質を高め,生徒の関心を高めるツールがインターネットの世界には数多く存在することを知っていただきたかったからです。また,インターネットを通じて教育サービス の提供(教育の情報化)を図ることは,国が推進する e-learning を実践したものと捉えることもできるでしょう。Web ブラウザ等の WWW 技術を利用したものを特に「 Web ラーニング」と呼びますが,今回の授業実践はこの一例であるといえます。
 フリーソフトを駆使して,教員が生徒の取り組みを把握し,最適な情報環境を提供するためのツールとしてご活用いただければ幸いです。