情報授業実践記録
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教育番組を活用した授業実践
八千代松陰中・高等学校
井上 勝
 
1.はじめに

科目設定
 本校の教育目標の一つに「知性・教養を深め、マナーを重んじ、社会に感謝する心を育む」があり,授業を通してこの教育目標を実際のものにしていくために、情報社会に参画する態度に重きをおいた「情報C」を1学年2単位の必修科目として設定した.

時間割
 習熟度別クラス編成で授業を行っている関係で,情報の授業は3クラス同時展開になるような時間割になっている.

スタッフ
 情報専任 私1人  他教科と兼任 4人(うち新任2人)

施設
 コンピュータ教室は2教室あり,幸いなことに昨年夏,機器の更新が行われ,いまどきのしくみになった.この2教室とプロジェクター常設のホールを授業教室とし,普通教室はほとんど使用しなかった.

 
2.「できることからやろう!」

 免許は取得したが,どうやって準備をやっていけばいいのか不安だらけの毎日だった一昨年11月,あるセミナーで元文部科学省の方の講演を聞く機会があった。その講演の中で,「各学校の実態に合わせ授業を展開していけばよい」という話があり,かなり気分が楽になった.授業実践の基本スタンスを,「できることからやろう! でもできること(生徒のためになること)はすべてやろう!」とし,高望みをせず,やれることをやっていこうではないかと他のスタッフと確認した.幸い本校には付属の中学校があり,中学校「技術・家庭」の技術分野にある「情報とコンピュータ」の授業の手伝いをやっていたので,中学生の実態(情報関連分野についての)はある程度わかっていた.
 
3.講義と実習は1:2

 「家にコンピュータはない」,「あるけれど触ったことはない」,「触ると親に怒られるから触りたいけど触らない」といった生徒が結構いた.こうした生徒たちのために「せっかく学校にコンピュータがあるのだから可能な限りコンピュータに触れる時間を多くとってやるほうがよいのでは」と考え,時間割と施設の関係も考慮したうえで,講義と実習をおおむね1:2の割合で実施している.
 
4.教育番組の活用

 授業には,NHK教育テレビの『デジタル進化論』およびNHK高校講座『情報A』を活用させていただいた.特に『デジタル進化論』は「情報の科学的な理解」に焦点をあてた番組で,教師が説明しづらい内容や生徒が理解しづらい内容をわかりやすく解説してくれている場面が多くある.
 授業形態としては1時間の授業に対してプリントを1枚用意し,その授業のポイントなどを書き込ませていくスタイルをとった.教師が説明した後に映像を見せたり,見せてから解説をしたりとケースバイケースで活用した.生徒たちにも好評で「先生の説明よりもわかりやすい」などの声が多々聞こえてきた.

『デジタル進化論』
http://www.nhk.or.jp/denno/
平成13年度に放送,14年度・15年度と再放送された.残念ながら今年度は再放送の予定はない.

NHK高校講座『情報A』
http://www.nhk.or.jp/kokokoza/jouhou/index.html

活用例.

[1] 情報のディジタル化の講義では『デジタル進化論』の
  第2回 デジタルで行こう
  第3回 0と1はこんなに便利!?
  第8回 音だってデジタル
を活用した.

プリント例→情報のディジタル化

[2] Webページのしくみ・作成ではNHK高校講座『情報A』の
  8 Webで発信しよう(1)
  9 Webで発信しよう(2)
を活用し,講義でWebページ作成の流れを説明した後,次のような内容の実習を行った.

I.Webページ作成
  ・自分が所属しているクラブ紹介
  ・学校紹介
  ・情報の授業紹介
のいずれかのテーマでWebページを制作し,新入生に向けて情報発信しよう!

II.データベースに登録

III.相互評価

IV.BBSで相互評価した内容を発表

 
5.他教科とのリンク

 「情報」という教科の特性上,他の教科とリンクさせることも非常に重要なことである.

  例1  国語総合の授業で評論「メディアとしての顔」という教材を扱っていたので,顔が見えないコミュニケーション手段の一つである電子メールの問題点とその対策について考え,まとめるというレポート課題を出した.

  例2  本校では1年次「地理・歴史」で「世界史B」が必修である.表計算ソフトウェアの実習の後,年表を表計算ソフトウェアで作ってみようというオプション課題(提出の義務はない課題)を出した.

 
6.1年目を終えて

 免許を取得してから準備する期間が十分あったにもかかわらず,この1年は自転車操業的な毎日であった.学期の終わりに生徒に授業の感想を書かせた中に「来学期は何をやるのか今から楽しみだ」というコメントがあり,プレッシャーを感じる反面,このコメントと授業中に生徒たちのみせる表情に勇気づけられ何とか1年が終わった.今後も生徒とともに教科「情報」を育ててゆきたい.そのためには「情報」で学んだことが他教科でも生かせるような授業展開が必要になってくるのではと考えている.