情報授業実践記録
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教科「情報」としての授業1年を終えて
―パソコン技術習得の授業とならないための工夫―
愛知県立豊田南高等学校
花井和志
 
1.はじめに

 いよいよ教科「情報」が始まった。この教科立ち上げに向けては、「情報活用の実践力」「情報の科学的理解」「情報社会に参画する態度」の3つの目標をはじめとして、教科新設の背景や意義について各地で講習会・講演会・研究会が行われた。私もそういった会に参加し、「期待されるべき生徒像」について自分なりのイメージを描くことができた。ただし、その具体的な授業展開となると??であった。ややもすれば、巷で言われるような「パソコンのスキル習得」(すなわち、EXCELができるようになるetc)になってしまいそうだったからだ。
 
2.授業実践

 そこで、「新しい技術に対して、その特性を理解しながら物怖じせずに正しく積極的に活用しようとする姿勢を培う」ことを目標として、今年は特に次の2つの点に留意した。

(1)ソフトウェア使用法の解説は行わない。
 情報通信機器の進展はめざましく、情報通信社会を生き抜く生徒たちにとっては「今あるモノの使い方をマスターする(例:WORDの使い方を覚える)」ことではなく、「新しいモノを自分で使えるようになること(例:自分でWORDが使えるようになる)」「覚えたものを使いこなすこと(例:目的に応じてWORDを使いこなす)」が重要となる。
 授業では、種々のソフトを使用するが、細かい使用法についてはマニュアル本(簡潔版)を参照させ、解説はほとんど行わなかった。また、生徒たちにはいろいろなところをクリックしてみることを勧めた(「習うより慣れよ」作戦)。試行錯誤する中でいろいろなことを体験し習得して欲しかったからである。(お陰で生徒たちの活動から、私が知らなかった技!?もいくつか見つかった)。また、友人同士で教え合うことも勧めた(「情報は口コミで伝わる」作戦!?)。友達同士で教え合うことは互いに勉強になるし、教える方は気分も良い。また、クラスの質の均一化にもつながるからである。各クラスに数名は不器用(?)な生徒もおり援助したが、多くの生徒は何とか自分たちで使用法をマスターしていった。年度当初は、戸惑う生徒も多かったが(こちらも手抜きをしているようで後ろめたかったが!?)、いろいろなソフトを使ううちに要領も良くなっていった。Windowsソフトの操作はそれほど難解ではないにせよ、端で見ていて、生徒たちの学習能力が高いことを改めて認識できた。

(2)実習の題材は生徒たちにとって価値のある内容とする。
 生徒たちの授業に対するモチベーションは高い。しかし、操作技術習得のための練習のような内容では、しだいにやる気も低下してしまう。そこで、生徒たち自身にとって価値のある題材を選び実習を行った。それは、総合的な学習の時間とうまくリンクすることにより、同時に双方の目的を達するというメリットも生まれた。(学校では地位の低い(!?)教科「情報」の存在意義を高めることにもつながった)
 以下はその実践例である。

[1]WORDによる自己紹介文作成
<情報授業の目的>
・WORDの操作習得
・文書作成能力(表現力・説得力他)の向上
<生徒にとっての価値>
・互いに自己紹介を行い新クラス内での親睦を図る。
<内容>
 4月当初に実施した。文書に顔写真を張り付けたり、各自で工夫を凝らして自己アピールの文書を作成した。

[2]PowerPointによる「英語版学校生活紹介」作成
<情報授業の目的>
・PowerPointの操作習得
・プレゼンテーション能力の向上
<生徒にとっての価値>
・作成したパンフレットが、実際に国際交流の役に立つ。
・英語力育成
 本校は、海外交流事業の一環として、8月に米国アラバマ州ガンターズビルでのホームステイ・現地高校との交流活動を行っており、そこで利用する本校紹介のパンフレットを作成した。学校生活を、学習・遠足・体育大会・文化発表会などに分けグループ別に紹介パンフレットを作成した。
 生徒たちのセンスは良く、大変見栄えの良いものもいくつか作成された。ただ、本校の1年生には「英文」は少々無理があった。ネット上の英訳ソフトを利用したグループも多くあったが、長文をそのまま翻訳ソフトにかけたため、かなり苦しい英文も生まれてしまった。(英文→和文であればおかしな訳も見分けがつくが…!?)英語科の先生方に添削をしていただいたが、かなり労力をかけさせてしまった。この点は来年度の課題である。


「英語版学校生活紹介」パンフレット

[3]職業・学問・学部学科・大学研究
<情報授業の目的>
・ネット検索技術の向上
・情報を整理・分類しまとめる能力の育成
<生徒にとっての価値>
・進路に関する視野を広める
・進路意識向上
 総合的な学習の時間とリンクさせながら、「職業研究」「学問研究」「大学研究」を行った。大学研究では、調べた事柄をまとめ、PowerPointでプレゼンテーションも行った。他人の「作品」を見ると共に、様々な大学について勉強する機会にもなり有意義であった。生徒の感想も前向きなものがほとんどで、進路意識の向上に多いに役立った。


「大学研究」PowerPoint画面


「大学研究」発表風景

[4]南高校のトリビアの種を探せ
<情報授業の目的>
・Excelの操作習得(クロス集計・分析ツール)
・仮説,分析,整理・集計,まとめ等の物事を研究する手法を学ぶ。
<生徒にとっての価値>
・自分の興味に従い独自の切り口で研究を進める。
・「課題研究」(総合的な学習の時間)の進め方を学ぶ。
 まず生徒全員に対して、血液型から生年月日,性格,兄弟,好きな食べ物,得意教科など約20項目のアンケートを実施した。そして、それを基に「こんなことが言えるんじゃないかな!?」(例:冬生まれは寒がりが多い!?)というレポート、名付けて「南高校のトリビアの種を探せ」を作成した。Excelのクロス集計やグラフを利用し、より説得力のあるレポートを作成させた。実際には、相関の高い項目は少なく特徴的な事実は得られなかったが、それぞれが様々な切り口で熱心にレポートを作成していた。(血液型ABの人は他と少し変わっている!?といったユニークな結論もあった)来年度は、項目をより吟味し、相関なども出やすいアンケートを作成したい。


実習授業風景

 
3.さいごに

 この1年間は不安だらけだった。不意の機器のトラブルも頻繁だった。ネットの接続速度が遅く、検索も十分に進められなかった。実習授業(生徒たちが授業中に話をするためどうしてもざわつくのだが)にもなかなか慣れなかった。しかし、すべては生徒のやる気の高さに救われたように思う。(教室移動も早く、いつも授業3分前にはPC室で着席していた)年間を通じて「新しいモノにも積極的に挑戦していく姿勢」を強調してきたが、そういった意識は高まったように感じる。(当然、倫理面も強調したが)
 現在、私たちは、短い講習会で情報の免許を取得し授業を行っている。自分なりに努力はしているが、一方で素人っぽさは隠せない。今後は、「情報教育学」(たとえば「情報学的な見方・考え方」とか)が系統的に研究され、より効果的な授業展開が実践できるようになることを期待したい。

参考
(1)PC教室
 ・ノートPC40台(Win98…20台,WinMe…20台)
 ・教師用ノートPC(WinXP)1台,デスクトップ(WinXP)1台
 ・ファイル用サーバ(Win2000)
 ・プロジェクター1台

(2)授業形態
 ・1クラス40名、ティームティーチングで実施。
 ・教師用PCの画面をプロジェクターで提示。
(3)入学時に調査した生徒のPCリテラシー結果
 ・ワープロソフトを利用したことがない生徒…約1割
 ・表計算ソフトを使用したことがない生徒…約4割
・ プレゼンテーションソフトを使用したことがない生徒…約8割