楽しい「情報」演習 第1回
プレゼンテーションソフトで4コマ漫画を作ろう! 
〜起承転結を意識したプレゼンテーション〜
 

神奈川県立川崎北高等学校
柴田 功
isao@johoka.net
http://www.johoka.net

 はじめに
 プレゼンテーションソフトを使うと、画像やアニメーション効果などを簡単に貼りつけることができ、それをプロジェクターで表示すれば、あっという間に見る人を引きつける発表ができます。授業や学校行事など発表する機会の多い教員には大変重宝するソフトウェアのひとつといえるでしょう。
 しかし、生徒にプレゼンテーションソフトを使って発表させるには、情報収集の仕方、情報のまとめ方、プレゼンテーションソフトの使い方や発表の仕方など指導することがたくさんあり、大変長い道のりが必要です。
 それならば、研究発表にこだわらず思い切りプレゼンテーションソフトの機能を使って遊んでみる演習もよいのではないかと思い、「プレゼンテーションソフトで4コマ漫画を作ろう」といったテーマの教材を実施してみました。ここでは、その授業の実践事例を紹介します。
 DATA
1年生必修科目「情報A」(1学年1単位、2学年1単位、計2単位)
小編成クラス(20人)に2人のティームティーチングによる指導
パソコン教室PC40台、国際教室PC20台、Windows98SE、Office2000
第1週 動機付け、教師の見本作品発表
第2〜4週 4コマ漫画作成作業
第5週 クラス内での発表
第6週 学年での発表
 準備 〜まずは教員が見本を作ろう〜
 生徒に演習課題を出す場合、指導する立場の教師は当然その演習課題を事前にやっておく必要があると思います。ですから、「情報」の授業を担当する教師全員が4コマ漫画をプレゼンテーションソフトで作っておきました(下図参照)。あくまでも見本ですので、完成度が高いものよりも生徒の手が届くような見本を見せた方が、生徒はやる気が出るようです。絵も上手に描く必要ありません。大切なのは「起承転結」のまとめ方と「先生も一生懸命作ったよ!」という熱意を伝えることだと思います。

教師が作った作品見本

 導入 〜教師の見本作品の発表 〜 
 次は授業で教師の作品を生徒の前で発表しますが、ティームティーチングで指導している場合は生徒に2作品以上見せることになります。生徒は教師の作った4コマ漫画を「つまんね〜!」とか言いながら大いにウケてくれました。生徒は日頃よく漫画を見ているため目が肥えていて、教師の作品は鋭く評価されてしまいました。
 演習1 〜今度は生徒が4コマ漫画を作ろう〜
 教師の作品を見て失笑したあとは、簡単にプレゼンテーションソフトの操作方法の説明に入ります。テキストボックスに文字を打ち込んで、それにアニメーション効果を加えると文字が様々な変化をしながら移動します。その動きに生徒はしばらく感動していましたが、操作に慣れたあたりで、生徒達の作業が止まってしまいました。教師の作品を「つまらない!」とか言ってしまった手前、面白い作品を作らねばとプレッシャーになってしまったようです。いいストーリーが浮かばない人は、次回までに「起承転結」のシナリオを考えてくるように伝えて1時間目が終了しました。
 演習2 〜仲間内で小さな試写会〜
 2週目から4週目までの3時間で作品を仕上げます。2週目になると何人かはシナリオを考えてきて、着々と作品を仕上げていきます。ペイントでオリジナルの絵を描く生徒、大きな音で効果音を鳴らす生徒などでパソコン教室には活気が戻ってきます。完成に近づいた作品を仲の良い友人だけに発表する姿を少しずつ見かけるようになり、パソコン教室のあちらこちらで爆笑が起こります。このころから生徒は発表する日を楽しみにするようになってきました。
 発表1 〜友達の発表を盛り上げよう〜

クラス内での発表風景
 5週目はクラス内での発表です。1人1分程度の発表でしたのでなんとか生徒40人の発表を50分の授業内に収めることができました。授業の空いている先生にも見学に来てもらい評価に参加してもらいました。生徒は仲間の作品を見て相互評価します。コメントを書く時間が短かったにもかかわらず、感想や改善すべき点などよく書き込んでいました。たとえ4コマ漫画であってもプロジェクターのそばに立って発表する姿はこちらのねらい通りで、緊張しながらも生徒全員が発表しました。川柳やなぞかけ、だじゃれ、交通標語をひねったもの、学校生活を風刺したものなど、教師が思いもつかないようなアイデアで、プレゼンテーションソフトの機能を活かした面白い作品がたくさん出てきました。
 改善 〜どんでん返しを作ってしまおう〜
 全クラスの発表が終わったあと、生徒の相互評価も参考にして、情報科の教員で慎重に1クラス4人程度のグランプリノミネート作品を選びました。放課後に代表に選ばれた生徒を呼んで学年全体の発表会に出てもらうことを伝えると、恥ずかしがりながらも名誉に思っているようで、放課後3日間に設定した補習の時間には代表のほとんどの生徒がパソコン教室に来て、さらに面白い作品に改善していきました。
 発表2 〜体育館での発表会〜

体育館で行われた学年全体の発表会
 代表として選ばれた24作品は、体育館にセットしたプロジェクターでスクリーンに投影し、学年全体の生徒の前で発表します。発表しない生徒は評価表にコメントを書き込んでいきます。どれも力作揃いなのですが、発表順には気をつかって、比較的まじめな作品を前半に、ウケそうな作品は後半に配置しました。改善した作品はクラスメイトも知らない「起承転結」に追加された「転結」で「起承転結転結」といった展開に仕上がっており大爆笑の連続で、クラスの友人はその改善点を大いに評価していました。生徒の多くが大きな声で発表することの大切さに気づき、これも指導する教師のねらい通りの結果でした。
 評価 〜全員が審査員になろう〜

賞状には作品のスライドが印刷されている
 生徒に発表をさせた場合、その発表した作品の評価もみんなの前で発表する必要があると思います。別の日に設定した学年集会で、「第1回プレゼンテーションソフトで4コマ漫画を作ろう!グランプリ」を発表しました。また、部門賞として最優秀デザイン賞、最優秀ストーリー賞、最優秀アニメーション効果賞、最優秀スピーチ賞も決めて賞状を用意し表彰しました。既存の教科では100点満点を取ったからといって表彰することはありませんが、新教科「情報」で情報発信した作品の評価はやはり全体に発信すべきだと思います。
 おわりに
 「情報A」の授業では「情報収集」したものを「情報処理」し、まとめたものを「情報発信」するような授業が多くなると思いますが、その最終段階で「プレゼンテーションソフト」を使うのではなく、早い段階で、まずは使ってみることが大事だと思います。最終的にたどり着くであろう「シンプルなアニメーションが効果的」といった結論は、最初から教師が押しつけるのではなく、生徒自らいろいろと試した結果として実感して欲しいと思います。

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