教育改革のとりくみ 目次
 
銀河の森天文台と連携した理科教育

中野 浩光
1.はじめに

 本校では平成14年度より3年間,学力向上フロンティア事業の指定を受け,実践的な教育研究を推進してきた。研究主題は「主体的に学ぶ生徒を育てる特色ある教育活動の在り方についての研究」とし,5つの柱を基本に教育活動を展開している。その一つに「豊かな環境や素材の活用」がある。これは,地域の施設や地域住民などを教育活動に活用することで,より教育効果を高めようとするものである。

 陸別町には,「りくべつ宇宙地球科学館」(これ以降「銀河の森天文台」と呼ぶ)という施設がある。この施設では,口径115センチメートルの反射式望遠鏡をはじめ,多数の小型望遠鏡や双眼鏡を備えている。平成15年度からは,銀河の森天文台と連携し,理科の出前授業が始まった。この連携事業により,実際の星空を見ながら宇宙の学習ができるようになった。

 また,天文台には名古屋大学太陽地球環境研究所が併設されており,名古屋大学の協力によって,海外の科学者が講師となって展開する授業も今年で4年目を迎えている。


2.具体的な取組み

(1) 3年生における「出前授業」
  天文台職員による出前授業。「地球と宇宙」(2時間)

ねらい
宇宙について関心を高めることができる
  太陽系の惑星や星座を観察することができる

第1部  プラネタリウム投影「宇宙を旅する」(45分)
  「星の動きや星座について」,「宇宙のスケールと星の一生について」
第2部  望遠鏡による星空観望会(1時間程度)
 
1 星座を探してみよう
星座早見盤の使い方や実際の星空による観察
2 双眼鏡で星空を自由観察
3 望遠鏡で遠くの天体を観察
月,ベガ(織姫星),アルビレオ(二重星),星雲,星団など
移動式プラネタリウムを体育館に設置して,室内で星空の学習を事前に行った。
望遠鏡による星空観望会は,口径30cmの反射望遠鏡をはじめ,大型双眼鏡や屈折望遠鏡,双眼鏡などをグラウンドに設置して行った。

生徒の感想から

陸別人ながら外で星を見たのが印象に残りました。スバルが見られてかなり感動しています。望遠鏡で見た月がすごくきれいで思わず望遠鏡が欲しくなりました。

普段見ることの出来ない星をじっくり見れてとてもキレイで楽しかったです。私は結構「すばる」の星が好きなので,「すばる」について説明してもらったりしたのが嬉しかったです。今度は土星を望遠鏡で見たいです。

学校でやったことの復習みたいで良かった。結構知っている星もあった。外に出て空を見ても,探すのは難しかった。

事前・事後アンケート
天文,宇宙に興味がありますか?

 
(2) 2年生における「出前授業」
  外国人科学者による出前授業。理科の時数を2時間あてて行っている。

ねらい
  最新の科学に触れることにより,発展的な内容を学習する
  外国の文化に触れ,自分たちの暮らしとの相違に気づくことができる
内容
  平成15年度 講師 ブルガリア国立科学アカデミー地球物理学研究所 教授
北海道大学大学院理学研究科 教授
      内容
1 ブルガリアの文化や習慣
2 太陽風が引き起こす上空の変化を予測し,カーナビゲーションや航空機の航行などへの悪影響を減少させる狙いの研究の紹介
  平成16年度 講師 ノルウェー トロムソー大学 教授
      内容
1 ノルウェーとの文化の相違など
2 オーロラの話
  平成17年度 講師 米国大気科学研究所 研究員
       
1 中国の生活(衣食住)と文化について
2 オーロラの話と短波ドップラーレーダーの果たす役割
(陸別町にある巨大電波塔の役割の説明)
ノルウェーの科学者からオーロラやノルウェーの文化について話を聞いている生徒のようす。
 
(3) 1年生における「出前授業」
  「〜オーロラって何だろう?エアドームでオーロラを体験しよう!〜」

ねらい
  実際に身近で起きた低緯度オーロラや極域でのオーロラの見え方の特色を知る。
  オーロラの仕組みやなぞを学ぶことで自然に目を向け,「なぜ?」という科学する発想や自然や科学現象に対する興味を養う。

内容
  オーロラのメカニズム
  低緯度オーロラについて
  陸別町と研究機関及び研究者のインタビュー
  北極星の探し方  ほか
平成15年10月,平成16年11月には低緯度オーロラが北海道に出現し,銀河の森天文台においても観測された。また,それ以前にも陸別町民によるオーロラの写真が撮影されており,陸別町は「オーロラの見える町」として知られている。


3.最後に

 銀河の森天文台との連携事業による成果は,宇宙に対する子どもたちの関心が高くなったことである。また,実際に星空を見せることで,宇宙に関する知識や理解も深めることができた。

 海外の科学者による出前授業では,子どもたちにとって,最新の科学情報はもとより異文化に触れるよい機会となった。

 今後においては,教育課程への位置づけを明確にした上で,出前授業の内容充実に努めてまいりたいと考えている。


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