授業実践記録

理科 授業について
大阪市立大和川中学校
中嶋 秀勝

1.生徒の実態

 5年前の私は授業について,ずっと悩んでいました。生徒からはよく

「先生の事は好きやけど,授業は下手やなあ」

と言われていました。授業をしていても,子ども達がすぐに眠たそうにして,寝る子もいる状態でした。だから説明をもっと一生懸命すれば寝ないのだろうと思って,必死になって説明しました。しかし,説明をすればするほど子ども達は退屈そうにうつろな眼差しになっていくのを感じていました。しかし,どうしていいか分からずにいらだちを感じながらも何も出来ない毎日を過ごしていました。

2.発見!

 授業を何とかしたいと思って本屋に行って,何かいい本がないか探していたがなかなか見つからなかった。ところが,5年前のある日,本屋で向山洋一先生の本を2冊買って帰りました。家に帰って2冊の本を一気に読みました。本を読んでいくと今までの胸のつかえが取れた感じがしました。その後も向山洋一先生の本を読みあさりました。

3.授業の実際

 まずは,私自身が喋りすぎていた事を反省して,子ども達に考えさせる時間を多く取って相談する形の授業に変えました。教師の説明を出来るだけしないで,子ども達が自分で答えを出しながら理解していく様な授業にしました。

 プリントを使って授業をすることにしました。そのわけは,問題を書く時間が生徒によって大きく差があるので,遅い子を待っている時間がもったいないと本に書いてあったし自分も無駄と感じていたので,問題を書く時間を省くためにプリントを使って授業をする事にしました。

 プリントは一問ずつやっていきます。一問ずつみんなで読んで,相談して答えを書く形式をとりました。相談するのは問題の答えが分からない生徒が何もしないと言うことをなくすために相談して答えを書くという事にしました。答えを分かっている人も分かっていない人も,みんな確認するので人に聞くことが恥ずかしいと言う雰囲気を持たせないようにしました。聞くことは恥ずかしくないのだ,何もしないというのが最も恥ずかしい事だと言い続けました。そのかいあって,みんな気にせずに相談するのが当たり前の雰囲気になりました。そうすると,勉強の苦手な子も,自分にも出来ると思って答えを聞いて書くという作業を一生懸命やるようになりました。

 プリントの問題をやるときには,答えが教科書に載っているときは隣の人と相談して,答えが教科書に載っていないときは,全員立たせて教室中動いて誰と相談してもよくて,答えを書いたら座ると言う約束でやるようにしました。そうすると,答えを書いたら座るという事で,答えを書いた子と書いてない子とが分かるという利点もあります。

 とにかく一回の指示で1つの事をさせるようにしました。一度に3つ,4つの指示を出すと,一つめの指示や二つめの指示が忘れられて,勉強の苦手な子などはわけが分からないようになって,何をしたらよいかが分からないようになり,何もしないという状況が起こっていました。しかし,一度に1つの指示しか出さなかったら,指示がはっきりし,何をしたらよいかが分かって,やれるようになっていきました。

 特に勉強のしんどい子については,こちらの方で答えを教えてあげる状況をつくりました。(もちろん,その子と人間関係がしっかり出来ていることが大切ですが…)。そうすると,その子は教えてもらう立場のはずが,私に答えを教えてもらったお陰で,周りの子から聞かれて教える立場となり,とても嬉しそうでした。そんな風に授業を進めていくうちに,答えが分かるようになっていき自分一人で答えを書けるようになっていきました。もちろん,全部ではないですが…。

 また,化学反応式の矢印は必ず定規を使わせて書かせました。机間巡視して定規を使って書いていない子は書き直しをさせました。そして,化学式の間は指二本分空けるように指示しました。もちろん,空けていない子は書き直しをさせました。そうやって書かせているうちに,書いている文字がだんだんきれいになってきました。定規の使い方もやるうちにどんどん,早く,うまくなっていきました。

 もちろん,計算問題をさせるときにも筆算を書かせて,筆算も必ず定規を使って書かせて,桁を縦に揃えて位がはっきりするようにした。そうすると,計算の見直しがしやすくなって,間違いが少なくなってきた。しかし,計算は苦手だという子が多くて,全員に定着するという感じにはなかなかなりませんでした。

 漢字の間違いが多くて,困っていた。例えば,裸子植物の裸,被子植物の被という字は衣偏がよく示偏になって,テストで間違っていました。そこで,私が間違えて,子ども達に訂正させるようにしていきました。

 授業はほとんど理科室で行い(他の理科の先生には大変迷惑をかけましたが),相談しやすい雰囲気をつくって進めていました。教室で行うときも,机をつけて待たせるようにしました。そのとき理由を説明して,机はぴたっとつけるようにしました。


4.生徒の反応

 5年前は中学2年の2学期の途中から変えました。講義形式の授業から,一気に子ども達の活動中心の授業に変えたので,最初は戸惑いも大きかったが,なぜそんなやり方をするのかを,説明してやるとどんどんやれるようになっていきました。卒業前にはしっかり出来る様になっていました。そして,理科が分かりやすいという言葉を何人かの子ども達から聞けるようになりました。

 次の学年の子ども達は初めから,活動中心の授業で行っていたので,しっかりやってくれました。今では,やり方には慣れてきて,しっかりやれています。(しかし,すこし慣れすぎてだれてきているところもあります。)

5.授業のプリント

3年 理科 小小プリント(生物のふえ方編)No.2


 このようなプリントを使って,授業をおこなっています。このプリントのポイントは3,4,5の問題で減数分裂の考え方を学んで,6の問題で言葉を学ぶようになっています。

6.指導の成果

 授業で使ったプリントを2度宿題にします。だから,同じプリントを合計3回することになります。そして,そのプリントを使って,小テストを2度行います。1回目はプリントを見てもいいというテスト,2回目は何も見ないでする普通のテストです。1日目に見てもいいテストをするのは,出来ない子でもいい点数を取れると考えての事です。問題は1問1点で数えます。ただし,満点は100点と書くことにしています。まじめに取り組んでいる子は2回とも100点を取ったりしています。しかし,なかなか点数が取れない子もいます。

7.今後の課題

 今後の課題としては,討論の授業を出来るように,クラスで意見が分かれるような質問が出来るようにしていく。今以上にネタを用意して,子ども達に驚きを与えて,考えるという状況をつくって,意見を言い合えるようにしていく。いろいろな意見を言い合える雰囲気をつくって,みんながお互いの意見を認め合う様な授業を展開していけたら,理科を楽しんでくれるだろうし,理科離れも解消できると思います。

8.参考図書

 向山洋一 「授業の腕をあげる法則」 明治図書
 向山洋一 「続・授業の腕をあげる法則」 明治図書
 ※その他,向山洋一氏の関連の本を多数参考にしました。
前へ 次へ


閉じる