課題研究理科の指導


金星の満ち欠け
室蘭市立成徳中学校
加藤 信一
1.はじめに

 宇宙の単元では,地球上から見える太陽・惑星・その他の天体の動きと太陽系の構造や惑星の公転,地球の自転などの動きを関連づけて理解することが望ましい。そのためには,太陽系外から見たいろいろな天体の動きから,地球上ではどのように観察できるのかを推測する空間概念の形成が必要である。この空間概念を形成するためには,教科書の図で説明して考えさせる,コンピュータの天体シミュレーションソフトで動きをとらえさせる,ビデオを見せるなどいろいろな方法がある。
 しかし,平面的なものから3次元的なものを推察するには,高度な空間的認識能力を必要とする。図を見て,自分自身がこのとき地球に立っていたら,その天体はどのように見えるかを予測する能力は,非常にレベルが高いと言える。すべての生徒にこのことを理解させることはむずかしい。やはり,立体的なものを見せ,実際に納得のいくまでさわらせることが,一番好ましいと考えた。
 そこで今回は,金星の満ち欠けを教材にして,金星の公転の動きを太陽系外から見たようすと公転軌道上のいろいろな位置の金星を地球上から見たら(いつ・どこで),どのように見えるかということをモデルを使って理解させる実践を行ってみた。

2.テーマ,題材観

 「宵の明星」,「明けの明星」として親しまれる金星は,惑星の中ではもっとも明るく,等級は−4等級にもなる。地球の内側を公転している内惑星なので,満ち欠けや大きさの変化があり,真夜中には絶対見られない特徴をもつ。
 これらの特徴を太陽のまわりを回る公転と関連づけて理解させる授業を考えてみた。

3.授業の実際

 (1) 準備
       金星の動き,満ち欠け,大きさの変化,真夜中には絶対見られない理由,などをとらえさせるために,右の写真に示したような実験モデルを作成した。
 細長い板に,直径15cmの発泡ポリスチレンの球と60W電球を取り付け,その板をカメラの三脚にねじで固定した。

 地球儀の日本の位置にCCDカメラ(Webカメラ)を取り付け,日本から金星を見るとどのように見ることができるのかを説明するのに使った。その際,金星がどちらの方角に見えるかがわかるように東西南北の方位を書いた紙も貼った。
 CCDカメラを使うと,地球からどのように見えるかということには納得できるようであったが,画質的にはビデオカメラのほうがきれいで操作も楽であった。
 最初は,CCDカメラで演示し,2回目からは,ビデオカメラにしたほうがよかった。
 画像の出力には,プロジェクターを使用した。画面の色調整を,色の濃さ+30,色合い+30,黒レベルを−30にすると,金星の輝きに色がつき,見やすくなった。また,黒が強調され,宇宙空間らしい映像になった。


 

同じ球を手前に置いて大きさを比べる。
 

 (2) 授業展開
       実験モデルで観察したことが,実際の天体の動きと関連づけて理解できているかを確認するために,次のように設問して,図に書き込ませた。

図1の地球の夜の部分は黒に,昼の部分は黄色に,色鉛筆でうすくぬりなさい。

自転の向きに矢印を書きなさい。

A,Bの下の○の中に,朝,夕を書きなさい。

A,Bの地平線を表す線の両側の○の中に,方角(東・西)を書きなさい。


図1

図2に明け方の地平線を赤線で書きなさい。
(図2に例示したように書かせる。青線は夕方の地平線)

図3に,図2の1,2,3,4,5,6の位置のときの金星の満ち欠けのようすを色鉛筆でかきなさい。

図3にかいたものを切り取り,図2の1〜6の近くにはりなさい。

図1,図2をノートにはりなさい。


図2

図3

○金星が1,2,3の位置のとき,どのように見えるかモデルで確かめる。

○なぜ,大きさが違って見えるかを考えさせる。

○最後に実験モデルを用いて,真夜中には,金星が見えないことを確かめる。

■昼休みにこの実験モデルを解放する。


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