ツマグロヒョウモンの生活史
兵庫県明石市立魚住東中学校
竹内 良範

1.研究の目的
 初夏になると,学校の花壇や民家の庭などで,美しい豹の紋が入ったチョウをよく見かける。このチョウの名前は,ツマグロヒョウモンAregyreus hyperbius Linnaeusである。やがて学校園や家のパンジー,野生のスミレなどに産卵し,黒色に赤線の入った幼虫が見られるようになる。30年前は,県内の学校や民家,里山周辺,高山の草原などでは見ることのできなかったチョウということだ。なぜ,このチョウが最近よく見かけられるようになったのか。また,こんなに身近にたくさんの個体が見られる美しいチョウの生活史をぜひ調べてみようということから研究に取り組んだ。

2.研究材料・準備器具
 ツマグロヒョウモン(卵・幼虫・蛹・成虫),餌(パンジー,スミレ),プランター,移植ごて,飼育用カップ,ノギス,割りばし,セロハンテープ,マジック,カメラ,電子天秤,記録用紙,筆記用具

3.研究方法
 (1) なぜ,このチョウが兵庫県内に生息できたのか。
1) 神戸海洋気象台へ行って,過去の気温データを収集する。
2) 餌としてのパンジー,スミレの広がり(人と自然の博物館)
 (2) チョウの生活史
1) スミレ等に生みつけられた卵を葉とともに飼育カップに入れ,孵化後の1齢幼虫から脱皮成長するたびにノギスで体長を測定する。また,脱皮した日を記録する。
2) 4齢幼虫と終齢(6齢)幼虫の24時間での糞の数を測定する。また,終齢幼虫については,糞の湿重量も測定する。
3) 蛹の重量を電子天秤で測定し,蛹の体長,体幅をノギスで測る。測定した蛹は,セロハンテープで針ばしにつり下げる。
4) 羽化した成虫は,雌雄を識別し,前翅長をノギスで測定した後野外へ放つ。
5) 家の庭に置いた飼育プランターから,移動して蛹になった場所の位置(地面からの高さ)を測定する。
6) 庭での蛹化場所とその周囲の色を記録し,蛹の色と比較する。
7) 幼虫の脱皮,蛹化や蛹からの羽化などをカメラで撮影する。


4.研究結果
 図1より,1980年以降,年平均気温が徐々に上昇してきている。特に,日最低気温は,ここ20年間で約2℃ほど上昇し,地球の温暖化現象を示している。また,餌としてのパンジーは,1864年に英国から日本に入り,戦後に東京周辺で植えられたとされている。一般に普及しだしたのは,10〜15年くらい前からで,庭のガーデニングとして広く利用されだした(人と自然の博物館からの情報)。

図1 年平均気温,日最高気温,日最低気温の推移(姫路測候所)

 図2より,7月22日に生みつけられた卵は27日に孵化している。卵期は5日間である。
 また,1齢から5齢までの各齢の日数は,約2日(1〜3日)で,6齢の終齢幼虫は,約5日(4〜6日)の日数を要している。8月12日に蛹になった3個体は,すべて19日に羽化した。蛹の期間は雌雄に関係なく7日間である。産卵日から28日後に成虫が誕生したことになる。

図2 脱皮による幼虫の齢及び蛹化,羽化と月日

 成虫の産卵場所は,写真1のように幼虫の餌であるスミレの茎,葉などが多いが,スミレの周辺の他の植物や,写真2のように鉢に生みつけたりもする。

写真1

写真2

 図3は,脱皮まもなくで静止している幼虫の体長を測定した結果である。1齢幼虫は約1.9mmで,2齢は3.2〜4.2mm,3齢は5.6〜7.7mm,4齢は10.3〜13.6mm,5齢は14.6〜20.9mm,6齢は25.6〜34.6mmである。齢が増すにつれて急激に成長している。

図3 幼虫の齢と静止幼虫の体長

 図4は,18個の卵から成虫になるまでの生存状況を表したグラフである。2齢幼虫の時に3個体死亡し,4齢で1個体,終齢(6齢)で2個体死亡している。18個体の卵のうち12個体が成虫にまでなれた。飼育下で67%の生存率である。また,写真3では,蛹化に失敗して死亡した個体を示している。さらに,最後の羽化の段階で,成虫になれない個体もあった。

図4 産卵から成虫までの生存状況