2020年度用 中学校理科教科書内容解説資料 未来へひろがるサイエンス
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観点別特色一覧表日本古来の耐たい震しんの知ち恵えを現代に活かす世界で起こる地震の約10%が日本付近で発生しており,日本は地震大国といわれています。しかしながら,日本には幾いく度どの地震でも倒壊せずに現げん存そんする,古い建築物が数多くあります。世界文化遺い産さんに登録されている京きょう都と府の東寺にある五ご重塔は,木造の塔としては,日本一の高さです。1644年に再建され,その後,370 年以上もの間,地震で倒壊することなく現存しています。これは柱の構造をくふうするなど,地震による建物のねじれを少なくするための高度な建築技術によるものといわれています。じゅう の とう例えば,各層そうは順々に重ねて積み上げ,ゆるやかに接合しているため,地震が起きても各層が交こう互ごに振しん動どうしてゆれを吸きゅう収しゅうすると考えられています。もし,各層がしっかりと固定されていれば,上層ほど大きく振動して中層部が損そん傷しょうしてしまうことも考えられます。また,塔の内部には周囲の柱や梁はりと固定されていない心しん柱ばしらがあり,これも塔全体のゆれを小さくするはたらきをしていると考えられています。このような地震のゆれから建物を守る技術は,現代の超ちょう高こう層そうビルの建築などにも参考になることが多く,高さ 634 mの東とう京きょうスカイツリーにも五重塔の心柱に似た構造が活かされています。東寺の 「五重塔」 とその構造(京都府京都市)「東京スカイツリー」 とその構造(東京都墨すみ田だ区)震度6強相当でゆらしても損傷がなく, 高い耐震性能を示した。五重塔の模も型けいによる耐震実験(防災科学技術研究所,茨いばら城き県つくば市)各層が交互に振動してゆれを吸収する。柱や梁と固定されていない。心柱心柱ダンパー鉄骨部てっこつ水平断面心柱の約250mの範囲は,その周囲の鉄骨部との間が動くことができるようになっている。 510環境  3章 自然が人間の生活におよぼす影響241  p.282-283  ① これからの自然災害に向けて3 年  p.❻-❼  ③ 理科からひろがる日本の技術 2 年  p.241  ② 先人の知恵袋3 年0音1000500010000S波15000地震の波P波2000025000[km/h〕0100200徒歩3004005006007008001000[km/h〕900土石流(流れる速さ)台風(移動する速さ)火か砕さい流りゅう(流れる速さ)新幹線(平均の速さ)津波避難場所を知り,徒歩でどれぐらいの時間がかかるのか調べておく必要があるね。災害が起こるおそれがあるときに発表。大雨注意報警報は重大な災害が起こるおそれがあるとき,特別警報は数十年に一度の大雨になると予想されたときに発表。大雨警けい報ほう・大雨特別警報震源・震度に関する情報各地の震度に関する情報津波観測に関する情報震しん度ど5弱以上のゆれが予測されたときに発表。緊きん急きゅう地震速報(警報)津波による災害のおそれがあるときに発表。 大津波警報は,3m以上の高さの津波が予想されるとき。大津波警報(特別警報)・津波警報・注意報観測・算出された情報を発表。震度3以上のゆれが観測されたときに発表。震度速報数年に一度の猛もう烈れつな雨のデータが得られたときに発表。記録的短時間大雨情報土砂災害の危き険けん度がさらに高まったときに発表。土ど砂しゃ災害警けい戒かい情報警報・注意報に先立って発表。さらに,雨の状じょう況きょうや予想を適てき宜ぎ発表。大雨に関する気象情報大雨について 地震の情報は,地震が発生してから出されるものだけれど,台風の情報は,事前に わかることも多いね。地震について台風や竜たつ巻まきなどの強風では,看かん板ばんが飛んだり,電線が 切れたりするかも。強い地震のときには,ブロック塀べいや電柱がたおれてくるかも。強い地震や大雨のときには,斜しゃ面めんがくずれるかも。津波よりも遅おそい土石流であっても近くで起これば,避難する時間によゆうがないね。科学的に知る自然災害これからの自然災害に向けて2 中学生であるわたしたちにとって,これから数十年間,自然災害と無む縁えんであることは,なかなか難しい。これからの自然災害に向けて,どのようなことができるのでしょうか。また,どのようなとり組みが行われているのでしょうか。このサイエンス資料2を参考に,考えてみましょう。  自然災害の種類によって,得られる情報の内容や時期が異ことなります。起こりうる災害の種類や時間的なよゆうを把は握あくし,必要な準備ができれば,被ひ害がいを減らすことにつながります。  自分たちが住んでいるまわりには,どのような災害が起こる危き険けんがひそんでいるのでしょうか。通学路などにひそんでいる危険を調べておくと,いざというときに,自分の身に降ふりかかる危険を少なくすることにつながります。 自然災害の特とく徴ちょうを,移動したり,伝わったりしてくる速さのちがいで見ると,何が見えてくるのでしょうか。例えば,100 km離はなれた場所で,地じ震しんと津つ波なみが同時に発生したとすると,平均の速さが3.5 km/s(12600 km/h) のS波が到とう達たつするまでの時間は,発生してから30秒弱ですが,平均の速さが300 km/h の津波が到達するまでには20分ほどの時間があります。つまり,地震のゆれに比べると,津波からは,短いながらも,避ひ難なんする時間があることがわかります。大雨のときには,水があふれてくるかも。●●●●●●●●●●●●身のまわりの危険度を知る●●●●●●●●●速さのちがいを知る●●●●●情報を知る       それぞれの速さには幅はばがあり,図中の帯はその幅を示している。例えば,津波は水深が深いところではジェット機並なみの速さだが,岸に近づいて浅くなるほど速さは遅おそくなる。速さの比ひ較かく 避難先などを記録するカード(和わ歌か山やま県) 避難訓練をよびかけるポスター(兵ひょう庫ご県西宮市)にし の みや 速さ =速さ =速さ =距離距離距離距離距離距離÷÷÷時間時間時間 S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間 「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわかれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでの「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!距離距離距離100100100100100100kmkmkm===28.6s28.6s28.6s28.6s28.6s28.6s3.53.53.53.53.53.53.53.53.5km/skm/skm/s緊急地震速報についてはp.235参照。前日半日前数時間前2時間程度前数秒後数分後以降÷×÷時間速さ2 5 5102822830音1000500010000S波15000地震の波P波2000025000[km/h〕0100200徒歩3004005006007008001000[km/h〕900土石流(流れる速さ)台風(移動する速さ)火か砕さい流りゅう(流れる速さ)新幹線(平均の速さ)津波避難場所を知り,徒歩でどれぐらいの時間がかかるのか調べておく必要があるね。災害が起こるおそれがあるときに発表。大雨注意報警報は重大な災害が起こるおそれがあるとき,特別警報は数十年に一度の大雨になると予想されたときに発表。大雨警けい報ほう・大雨特別警報震源・震度に関する情報各地の震度に関する情報津波観測に関する情報震しん度ど5弱以上のゆれが予測されたときに発表。緊きん急きゅう地震速報(警報)津波による災害のおそれがあるときに発表。 大津波警報は,3m以上の高さの津波が予想されるとき。大津波警報(特別警報)・津波警報・注意報観測・算出された情報を発表。震度3以上のゆれが観測されたときに発表。震度速報数年に一度の猛もう烈れつな雨のデータが得られたときに発表。記録的短時間大雨情報土砂災害の危き険けん度がさらに高まったときに発表。土ど砂しゃ災害警けい戒かい情報警報・注意報に先立って発表。さらに,雨の状じょう況きょうや予想を適てき宜ぎ発表。大雨に関する気象情報大雨について 地震の情報は,地震が発生してから出されるものだけれど,台風の情報は,事前に わかることも多いね。地震について台風や竜たつ巻まきなどの強風では,看かん板ばんが飛んだり,電線が 切れたりするかも。強い地震のときには,ブロック塀べいや電柱がたおれてくるかも。強い地震や大雨のときには,斜しゃ面めんがくずれるかも。津波よりも遅おそい土石流であっても近くで起これば,避難する時間によゆうがないね。科学的に知る自然災害これからの自然災害に向けて2 中学生であるわたしたちにとって,これから数十年間,自然災害と無む縁えんであることは,なかなか難しい。これからの自然災害に向けて,どのようなことができるのでしょうか。また,どのようなとり組みが行われているのでしょうか。このサイエンス資料2を参考に,考えてみましょう。  自然災害の種類によって,得られる情報の内容や時期が異ことなります。起こりうる災害の種類や時間的なよゆうを把は握あくし,必要な準備ができれば,被ひ害がいを減らすことにつながります。  自分たちが住んでいるまわりには,どのような災害が起こる危き険けんがひそんでいるのでしょうか。通学路などにひそんでいる危険を調べておくと,いざというときに,自分の身に降ふりかかる危険を少なくすることにつながります。 自然災害の特とく徴ちょうを,移動したり,伝わったりしてくる速さのちがいで見ると,何が見えてくるのでしょうか。例えば,100 km離はなれた場所で,地じ震しんと津つ波なみが同時に発生したとすると,平均の速さが3.5 km/s(12600 km/h) のS波が到とう達たつするまでの時間は,発生してから30秒弱ですが,平均の速さが300 km/h の津波が到達するまでには20分ほどの時間があります。つまり,地震のゆれに比べると,津波からは,短いながらも,避ひ難なんする時間があることがわかります。大雨のときには,水があふれてくるかも。●●●●●●●●●●●●身のまわりの危険度を知る●●●●●●●●●速さのちがいを知る●●●●●情報を知る       それぞれの速さには幅はばがあり,図中の帯はその幅を示している。例えば,津波は水深が深いところではジェット機並なみの速さだが,岸に近づいて浅くなるほど速さは遅おそくなる。速さの比ひ較かく 避難先などを記録するカード(和わ歌か山やま県) 避難訓練をよびかけるポスター(兵ひょう庫ご県西宮市)にし の みや 速さ =速さ =速さ =距離距離距離距離距離距離÷÷÷時間時間時間 S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間S波が到達する時間 「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわか「距離」と「速さ」がわかれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでのれば,到達するまでの「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!「時間」がわかる!距離距離距離100100100100100100kmkmkm===28.6s28.6s28.6s28.6s28.6s28.6s3.53.53.53.53.53.53.53.53.5km/skm/skm/s緊急地震速報についてはp.235参照。前日半日前数時間前2時間程度前数秒後数分後以降÷×÷時間速さ2 5 510282283巨きょ大だいなプラスチックパネルが水族館を変えた軽くて強く, 熱にもたえる炭素繊せん維いで空を飛ぶ沖おき縄なわ美ちゅら海うみ水族館(沖縄県本もと部ぶ町)日本のものづくりの技術は,世界のトップレベルにあります。これまで理科で学習したことに関連する日本のものづくりを探してみましょう。プラスチックの分ぶん子しは,もととなる小さな分子がいくつもくり返してつながってできている。アクリル樹じゅ脂しというプラスチックは,透とう明めい度と強度が特に高い。沖おき縄なわ美ちゅら海うみ水族館の国内最大の水そう 「黒くろ潮しおの海」 は,高さ8.2m,幅はば22.5m,厚さ60cmの巨大なアクリル樹脂でできているが,非常に高い技術によるものである。まず,うすいパネルを十数枚まいはり合わせ,表面を手作業でみがく。そして柱を1本も使わず,このパネル7枚をさらに縦たてに接着して水そうのわくにはめこんでいる。理科からひろ炭素繊維を使った材料でつくられる航空機の胴どう体たい部分炭素繊維は日本で生まれ,現在,国内の会社で世界の炭素繊維の70%以上をつくっており,この分野で世界をリードしている。セーターなどに使われる特とく殊しゅなアクリル繊維を高温で焼くことによって,炭素原げん子しどうしが強く結びついた層そうがいくつも重なった炭素繊維ができる。炭素繊維は熱に強く,密みつ度どは鉄の約 14 と非常に軽く,強さは鉄の10倍程度ある。この性質を利用して,最新の航空機には,機体の質量の約50%が,炭素繊維とプラスチックを組み合わせた材料でできているものもある。機体の約50%に炭素繊維を使った材料が用いられている航空機炭素繊維巨大なアクリルパネルをつくる会社(香か川がわ県三み木き町)6アルミニウム板からハンマー1本で新幹線の顔をつくる安全・快適, 高速大容量のエレベーターでのぼる7新幹線の先頭車両を形づくる会社(山やま口ぐち県下くだ松まつ市)東京スカイツリーの展てん望ぼう台だい上部にあるエレベーターを巻まき上げるモーター(左,工場内で撮さつ影えい) と,エレベーターの昇しょう降こう路ろのようす (右)新幹線の車両には,アルミニウムに少量のマグネシウムやマンガンなどが加えられた特殊な材料が使われている。空気抵てい抗こうを減らすために,美しく複雑な形をした先頭車両は,このアルミニウムの板を熟じゅく練れんの職人がハンマー1本で打ち出してつくり上げている。リニアモーターカーや台たい湾わんの新幹線の車両も,この会社の技術によってつくり上げられ,世の中に送り出されている。エレベーターは,人が乗る「かご」をロープで「つり合いおもり」とつなぎ,モーターで巻まき上げるのが基本的な構造である。高速で大きな質量を昇しょう降こうさせるため,高性能のモーターが用いられている。そして,「かご」の速さや停止位置を正確に調節する技術,また,振しん動どうや騒そう音おんを低減する技術などによって,エレベーターを安全で快適に動かしている。東京スカイツリーのエレベーターは,電気を使う一方で,モーターを発電機としてはたらかせることで,電気の節約を行っている。例えば,乗車人数が多い「かご」で下降するときに発電した電気は,建物内のほかの電気設備で利用している。このような技術を使った日本の会社がつくるエレベーターは,海外の高層ビルにも使われている。東京スカイツリー(東とう京きょう都墨すみ田だ区)がる日本の技術41

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