2020年度用 中学校理科教科書内容解説資料 未来へひろがるサイエンス
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    で,力 F₃ は,力 F₁ と F₂ の2力でばねを引きのばした力と同じはたらきをしているので,2力の合力であるといえる。結果を見るとわかるように,どのような角度で引いた場合でも,力 F₁ , F₂ , F₃ の矢印の先と点Oの4点を結ぶと平行四辺形ができ, F₃ の矢印はその対角線となっている。 図9(b),(c)のように,角度をもってはたらく2力の合力は,その2力を表す矢印を2辺とする平行四辺形の対角線で表されることがわかる。これを力ちからの平へい行こう四し辺へん形けいの法ほう則そくという。実験2力の平行四辺形の法則2力を表す矢印を2辺とする平行四辺形の対角線が,2力の合力となる。F₂F₁O                 (b)と(c)のように,F₁ ,F₂ の大きさが同じでも,2力の間の角度が小さいほど,合力 F₃ の大きさは大きくなる。(a)と(b),(d)では,合力 F₃ の大きさは同じでも,F₁ と F₂ の大きさや向きが異ことなる。(d)のように,一直線上で反対向き(2力の間の角度が 180°)にはたらく2力を合成すると,合力の大きさは2力の大きさの差,合力の向きは大きいほうの力と同じ向きとなる。   2力の合成とその合力9図   力の平行四辺形の法則を使った合力の求め方10図 定規を使う方法  コンパスを使う方法 F₂ に三角定規を合わせ,三角定規をずらして,矢印 F₁ の先を通り,矢印 F₂ に平行な線を引く。①力 F₁の矢印の長さを半径として, F₂ の先を中心に弧こをかく。①と同様にして, F₂ の矢印の長さを半径として,F₁ の先を中心に弧をかく。点Oから,①と②の弧の交点まで矢印をかくと,それが F₁ と F₂ の合力になる。①②③点Oから,①と②で引いた線の交点までの矢印をかくと, それが F₁と F₂ の合力になる。③①と同様にして,矢印 F₂ の先を通り,矢印 F₁ に平行な線を引く。②OF₂F₁F₂F₁OOF₂OF₂F₁①②③F₂F₂F₁F₁F₂F₁F₂F₁F₃F₃F₃F₃(a)(c)(b)(d)OOO 12 510148    やこれまでの学習から,電気エネルギーは運動エネルギー,化学エネルギー,熱エネルギー, 光エネルギー,音エネルギーなどに変換されていることがわかる。また,手回し発電機のハンドルを手で回すとき,回路がつながっているときのほうが手ごたえがある。これは,手が発電機に対して仕事をしているということである❶。このように,エネルギーはさまざまな装そう置ちを使うことによってたがいに変換できることがわかる❷(65図)。実験8発電機に対して手が仕事をすることによって電気エネルギーが発生している。❶これまでに,電流を流すことによって熱が発生すること,化学変化によって熱の出入りがあること,化学変化によって電流をとり出すことができること,植物が光によって有機物を合成していることなどを学習している。これらの現象でも,エネルギーが変換されている。❷光こう合ごう成せい消化・吸きゅう収しゅう石油・石炭・天然ガス太陽火力発電所(大おお阪さか府大阪市)鳥とっ取とり県伯ほう耆き町熊くま本もと県熊本市自動車化学エネルギー熱エネルギー熱エネルギー熱エネルギー熱エネルギー化学エネルギー核かくエネルギー光エネルギー   エネルギーの移り変わり65図 16位置エネルギー運動エネルギー静しず岡おか県富士宮市   ふ    じ  の みや伊い勢せ湾わん化学エネルギーから電気エネルギーへの変換についてはp.104参照。水の蒸じょう発はつ風 5186仕事とエネルギーの単位はなぜ同じなのかなるほど物体に対して仕事をする能力をエネルギーとよんでいるので,エネルギーの増減は,物体にした仕事の量や物体から受けた仕事の量で表すことができる。そこで,仕事もエネルギーもともにジュール(記号J)という同じ単位で表す。また,エネルギーはさまざまな種類のエネルギーに相互に変換するので,どのようなエネルギーもジュールで表すことができるのである。位置エネルギーと運動エネルギーが相そう互ごに変換し,位置エネルギーと運動エネルギーの和である力学的エネルギーが保存されることを学習した。しかし,摩ま擦さつなどの影えい響きょうで力学的エネルギーは保存されない場合があるが,その場合でも熱エネルギーなどをふくめると,エネルギーの総量は保存されている。このように,エネルギーが移り変わっても,エネルギーの総量は変化せず,つねに一定に保たれる。これをエネルギー保ほ存ぞんの法ほう則そくといい,自然界のもっとも基本となる法則の1つである。ソーラーパネル水力発電所(静しず岡おか県静岡市)風力発電施し設せつ(愛え媛ひめ県伊い方かた町)電灯電気ストーブ化学エネルギー電気エネルギー食事光エネルギー地ち熱ねつ発電所(北ほっ海かい道どう森もり町)運動エネルギー運動エネルギー運動エネルギー運動エネルギー熱エネルギー熱エネルギー熱エネルギー原げん子し力りょく発電所熱エネルギー扇せん風ぷう機きエネルギー  4章 多様なエネルギーとその移り変わり 5187実験2をもとに,本ほん冊さつp.148の力の合成とp.152の力の分解について,作図して考えてみよう。力の合成・分解実験2からの 作図図(a)は,2人で荷物を持っているところです。図(b)の荷物AとBでは,どちらの荷物のほうが重いか考えてみよう。なお,矢印は2人が荷物を引く力を図示しています。❶同じ重さの荷物を2人で持つ場合,左側の人が引く力F 1の大きさや向きが変わったとき,右側の人が必要とする力F 2の大きさや向きがどのように変わるのかを調べてみよう。❷イ.図 (b)に作図した2つの合力を比ひ較かくすると,荷物AとBでどちらのほうが重いか考えてみよう。ア.2人が荷物を引く力の合ごう力りょくを,図(b)に作図してみよう。合力や分力の求め方を覚えたかな。3B-12-AE-ex023B-12-AE-ex01荷物A荷物B(b)(a)3B-12-AE-ex03F1F1F1F1F1F2①④②⑤③イ. 力F 1の大きさは同じで,引く力の向き(角度)が異なる場合のF 2を,④と⑤に作図してみよう。ア. 力F 1の向き(角度)は同じで,大きさが異ことなる場合のF 2を,①を例として,②と③に作図してみよう。12 5101520平成24年度用教科書からのおもな改訂点・熱の伝わり方は,エネルギーの変換効率の学習とともに,1つの節として独立させて扱うようにしました。→p.188-189・エネルギー資源とその利用では,エネルギー資源の特性,発電のしくみ,放射線などをわかりやすく解説しました。     →p.190-197力と物体の運動の関係を,実験や日常生活の例から見いだします。さらに,仕事をもとにエネルギーを定義して,エネルギーの変換や保存,エネルギー資源の特性とその利用など,エネルギーについて総合的に理解できるように構成しています。1年での力の学習をふり返り,力のつり合いや力の合成・分解を丁寧に扱っています。力のつり合い1物体の運動の表し方として速さや運動の向きを導入し,力と物体の運動の関係を調べていく展開としています。物体の運動2理科としての仕事を日常生活の例を通じて理解させ,仕事をする能力としてエネルギーを定義し,仕事とエネルギーの関係を理解できるように配慮しています。仕事とエネルギー3さまざまなエネルギーを扱い,エネルギーの変換や保存を,実験や身近な例を通じて理解することができるようにしています。多様なエネルギーとその移り変わり4エネルギー資源の特性を理解し,エネルギーを利用するうえでの課題や有効利用を考える視点を示しています。エネルギー資源とその利用5運動とエネルギーエネルギー章の構成と学習内容  p.186-187 3 年 ルギー 編 マイノート  p.12 3 年  p.148 3 年エネルギーの移り変わりを,見開きでわかりやすくまとめています。配色は色覚の個人差に配慮して,カラーユニバーサルデザインを採用しています。実験を通じて力の性質を理解するとともに,力の作図を丁寧に扱い,理解が深まるように配慮しています。マイノートにも,本冊とリンクした作図の場面を設定しています。各学年の学習内容19

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