2020年度用 中学校理科教科書内容解説資料 未来へひろがるサイエンス
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生物は子をつくる。このように,自分(親)と同じ種類の新しい個体(子)をつくることを生せい殖しょくという。生殖によって親から子へと生命はつながっていく。生殖には,無む性せい生せい殖しょくと有ゆう性せい生せい殖しょくとがある。両親を必要とせず,親の体の一部が分かれて,それがそのまま子になる生殖を,無性生殖という。両親がかかわって子をつくる生殖を,有性生殖という。 無性生殖 単たん細さい胞ぼう生物の場合 アメーバやミカヅキモなどの単細胞生物は,体たい細さい胞ぼう分ぶん裂れつによって体が2つに分かれることでなかまをふやすことが多い(図6)。生物のふえ方   単細胞生物の無性生殖6図2   動物の無性生殖7図               胃の中で親の体の一部が分かれて新しい個体ができ,それが口から出される。(c)ウメボシイソギンチャク      親の体の一部から芽が出るようにふくらみ,それが分かれて子となる。(a)ヒドラ                 みずから体を切断し,切り口から体が再生することでふえる。人工的に体を切断してもふえる。(b)プラナリア (ナミウズムシ)1ぴきの体を3つに切断して10日後のすがた。3びきになっている。新しい個体になる部分アメーバの分裂ミカヅキモの分裂口胃触しょく手しゅ体の断面 51010純系の親をつくる方法1子の組み合わせを考える2孫の組み合わせを考える3モデル実験を通して遺伝の規則性を理解する。目的   1より,優性形質は 「青」 と 「透明」 のどちらと考えればよいか。   2より,孫で 「青」 の形質を示すものと 「透明」 の形質を示すものの割合を整数の比で表すと,どうなるか。考察1.結果2.結果2人1組になり,青色シート2枚と透とう明めいシート2枚を用意する。このシート1枚が,生殖細胞の遺伝子を表すものと考える。①青色シート2枚を重ねて,純系 「青」 の親とし,2人のうち1人がもつ。透明シート2枚を重ねて,純系 「透明」 の親とし,残りの1人がもつ。②     でできた子を,それぞれがもつ。⑤2青色シート (2枚まい),透とう明めいシート (2枚) その他 記録用紙実習に必要なものモデルを使って,遺伝子がどのように伝わるのか確かく認にんしてみよう。     の結果を下の表にまとめる。結果1.2     の結果を下の表にまとめる。2.3透明透明青青青透明青透明遺伝のモデル実験1実習どのような色の子ができるか,どのような組み合わせがあるかを考える。④それぞれからシートを1枚ずつ出し,重ね合わせて子(親からみれば孫)をつくる。⑥どのような色の子ができるか,どのような組み合わせがあるのかを考える。⑦「青」 と 「透明」 それぞれからシートを1枚ずつ出し,重ね合わせて子をつくる。③ 51015202522成長から生殖,遺伝へと展開することで,親から子に形質が伝えられていく,生命の連続性を示しました。また,遺伝子やDNAに関する最新の研究成果も紹介し,理科の有用性を伝えています。この単元の学習を通して,生命を尊重する態度が育てられるように配慮しています。生物の特徴である 「成長」 と 「体が細胞からできていること」 を,関連づけて考えることができる展開にしています。 また,観察を通して体細胞分裂を学習するだけでなく,豊富な資料や模式図を示すことで,実感をともなって理解できる構成にしています。生物の成長とふえ方1生徒が混乱しやすいメンデルの法則については,エンドウの実物写真を模式図とともに用いることで,親の形質が子に伝わるようすを視覚的に理解できるように工夫しています。遺伝の規則性と遺伝子2平成24年度用教科書からのおもな改訂点・1章で生物の成長とふえ方について,減数分裂まで扱う構成とし,2章ではメンデルの法則を重点的に学習できるようにしています。      →p.10-16・遺伝のモデル実験を設定することで,メンデルの法則について実感をともなって学習できるようにしています。   →p.22動物の無性生殖についても,資料を豊富にとり上げています。章の構成と学習内容日本人がうみ出した人工多能性幹かん細さい胞ぼう (iアイPピーSエス 細胞)前あしを切断約2か月後約3か月後約5か月後ヒトiPS細胞 (丸く集まっている部分)受じゅ精せい卵らんが細さい胞ぼう分ぶん裂れつをくり返す発生のはじめは,その1つ1つのどの細胞も,どんな種類の細胞にもなれる。しかし,発生が進んで体のいろいろな細胞に分かれていくと,それぞれ決まった役やく割わりの細胞になる。そのような細胞では,細胞によって異ことなる遺伝子がはたらいていて,受精卵のようにどんな種類の細胞にもなれるという能力は失われている。これが,わたしたちが失った体の一部を再生できない理由の1つである。しかし,動物の中にはヒトとはちがい,体の一部を再生することができるものがいる。例えば,イモリやプラナリア(p.10     )は,高い再生能力をもつ動物として有名である。発生のはじめのころの細胞のように,いろいろな種類の細胞になることができる能力をもつ細胞を,幹細胞という。イモリは,ひとたび体のある部分が失われると,一部の細胞が幹細胞となり,この幹細胞が,分裂をくり返して失われた部分の細胞となり,体を補おぎなう。わたしたちの体の組織にも何種類か幹細胞(組織幹細胞)があるが,その能力は限定されていて,イモリの幹細胞のようにすべての種類の細胞になることはできない。そこで,イモリの幹細胞のような能力をもつヒトの幹細胞をつくり出す研究が進められてきた。2007年11月,山やま中なか伸しん弥や博はかせ士がヒトの皮ひ膚ふ細胞から人工的に幹細胞をつくり出すことに成功した。これが人工多能性幹細胞(iPS細胞)である。iPS 細胞を使えば,臓ぞう器きや組織を人工的につくり出すことが可能になると期待されている。7図イモリの前あしの再生 イモリはあしや尾おを切断してしまっても,切断面から筋きん肉にくや骨ほねが再生し,数か月でもとどおりになる。山中伸弥博士 2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞。 51015生命  2章 遺伝の規則性と遺伝子27  p.27 3 年  p.22 3 年  p.10 3 年ニュースや新聞でもとり上げられることの多いiPS細胞について,何がすごいのかをわかりやすく解説しました。遺伝の学習に,青色シートを用いたモデル実験をとり入れました。生命の連続性生命生命・ 各学年の学習内容 3年16

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