2020年度用 中学校理科教科書内容解説資料 未来へひろがるサイエンス
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誘導電流検流計誘導電流検流計誘導電流検流計誘導電流検流計    で, 棒磁石とコイルの両方を静止させたときには,コイルの中の磁界が変化しないので,誘導電流は流れない。どんなに強い磁石を使っても,コイルの中の磁界が変化しないと誘導電流は流れないことに注意しよう。また,コイルの中の磁界が変化すると誘導電流が流れるのだから,棒磁石を動かさず,コイルを棒磁石に近づけたり遠ざけたりしても,コイルに誘導電流は流れる。62図誘導電流の発生                    棒磁石を近づけたときと遠ざけたときで,またN極とS極で誘導電流の向きが異なる。   磁界の変化と誘導電流の向き62図    の結果から,コイルと棒磁石が近づいたり遠ざかったりして,コイルの中の磁界が変化すると,その変化に応じた電圧が生じて,コイルに電流が流れることがわかる(62図)。このような現象を電でん磁じ誘ゆう導どうといい,このとき流れる電流を誘ゆう導どう電でん流りゅうという。誘導電流の大きさについては,次のようにまとめることができる。実験8〔 考 察 〕1.・ 磁石をコイルに出し入れすると, 電流が発生する。・ 磁石にコイルを近づけたり遠ざけたりすると, 電流が発生する。・ 磁石を動かさずじっとしたままだと,電流は発生しない。2.・ 磁石やコイルを速く動かすほど, 発生する電流が大きい。・ 巻数が多いコイルのほうが,発生する電流が大きい。3.・ 磁石をコイルに入れるときと出すときで,電流の向きは逆になる。・ 磁石の極を逆にすると,電流の向きも逆になる。気がついたことや不思議に思ったことなどを書いておく。磁石をコイルに連続して出し入れすると,発生した電流の向きが磁石の動きに合わせて変化するのが興味深かった。〔 感 想 〕磁石を速く動かす(コイルの中の磁界を速く変化させる)ほど,誘導電流は大きい。誘導電流の大きさ1磁石の磁力が強いほど,誘導電流は大きい。2コイルの巻数が多いほど,誘導電流は大きい。3(a)N極を近づけたとき(c)S極を近づけたとき(b)N極を遠ざけたとき(d)S極を遠ざけたとき 510236回転子(磁石)かいてんし固定子(コイル)こていし電磁誘導を利用して,電流を連続的に発生させる装置が発電機である。63図 は,自転車の発電機のしくみを示している。発電機の内部の磁石を回転させると,電流が発生して,64図 (a)~(d)のように電流が流れる。   自転車の発電機63図                    磁石は (a) → (b) → (c) → (d) と回転し,力を加えているかぎり, (a) にもどって発電し続ける。   自転車の発電機に流れる電流64図コイルA から N 極が,コイルBから S 極が遠ざかり,どちらのコイルも,回転子がつくる左向きの磁界が弱くなる。コイルAにS極が,コイル B に N極が近づき,どちらのコイルも,回転子がつくる右向きの磁界が強くなる。磁石電流コイルAコイルB回転子(磁石)が回転する向きコイルAコイルB 22(a)(b)コイルAにN極が,コイルBにS極が近づき,どちらのコイルも,回転子がつくる左向きの磁界が強くなる。コイルAコイルB(d)(c)コイルAからS極が,コイルBからN極が遠ざかり,どちらのコイルも,回転子がつくる右向きの磁界が弱くなる。コイルAコイルB電磁誘導では,コイルの中の磁界が変化するのを妨さまたげるような向きに誘導電流が発生する (このとき発生する電圧を誘導起電力という)。これをレンツの法則といい, ロシアのレンツが1834年に発見した。例えば,62図で磁石のN極を近づけるときには,下向きの磁界が強くなるのを妨げる向き,つまりコイルの中に上向きの磁界ができるような向きに電流が流れる。このとき,磁石を動かすには力が必要になる。レンツの法則 510エネルギー  3章 電流と磁界237平成24年度用教科書からのおもな改訂点・電気用図記号と回路図を丁寧に説明し,配線や回路図の作図をすることができるように配慮しました。→p.187・モーターが回転するしくみを理解しやすくなるように,大きく丁寧に扱いました。 →p.233発電所からの送電を扱った導入で電流や回路を意識することからはじまり,実験を通じて,電流の性質やはたらき,その正体を理解できるようにしています。小学校で学習した回路や電流の学習をふり返り,実験を通じて回路における電流や電圧の関係を見いだすようにしています。電流計・電圧計の使い方は実習のほか,マイノートでも扱い,その使い方・読みとり方を習熟できるようにしています。電流の性質1静電植毛という静電気の利用例を紹介して興味を喚起し,電気の性質や電気力の学習へと展開しています。次に,静電気と電流の関係を,放電現象の観察を通じて見いだし,電子の存在を理解できるようにしています。電流の正体2小学校で学習した永久磁石や電磁石の学習のふり返りから,磁石の性質やはたらきを確認し,磁界や磁力線,電流と磁界の関係を扱っています。そして,モーターや発電機のしくみ,直流・交流のちがいを考えることができるようにしています。電流と磁界3「なるほど」では,間違いやすいことなどを正しく理解するポイントを説明しています。ここでは,誘導電流の発生で注意するポイントを示しています。電流の性質とその利用エネルギー章の構成と学習内容  p.236-237 2 年 ルギー 編各学年の学習内容発電機のしくみの解説では,発電機内の磁石が回転するようすを大きく丁寧に扱い,理解しやすくなるように配慮しています。「発展」では,発展的な学習内容を扱っています。 ここではレンツの法則をとり上げ,誘導電流の向きのきまりを扱い,理解が深まるようにしています。15

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