2020年度用 中学校理科教科書内容解説資料 未来へひろがるサイエンス
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緊急地震速報は,どのようなしくみで,わたしたちに情報が伝えられているのですか? 情報は,どのように利用されているのですか?大きな被ひ害がいにつながる S 波が伝わる速さは, 3~5km/sです。一方,情報を伝える電気信号の速さは約30万 km/sです。緊急地震速報で S 波が到達する前に身を守ったり,列車をすばやく止めたり,工場の機械を止めたりして災害を減らすことが期待されています。緊急地震速報は,地震が発生したときに,震源に近い地震計でP 波を感知し,その情報をもとに瞬しゅん時じに各地のS 波の到とう達たつ時刻やゆれの大きさを予測して,実際にS 波が到達する前に知らせる気象庁のシステムです。緊急地震速報について,気象庁ちょうではたらく人に聞いてみました。5図 は,地震計の記録をもとに,震源からの距離と,地震の波が届くまでの時間をグラフに表したものである。震源で発生したP波とS波は, それぞれ伝わる速さがちがうため,震源からの距離が遠くなるほど,初期微動継続時間(届いた時刻の差)が大きくなっていくことがわかる。このことから, 地震が発生したときに,その地点の初期微動継続時間がわかれば,震源までのおよその距離を知ることができる。初期微動継続時間200100204060800震源からの距離〔km〕〔秒〕P波・S波が届くまでの時間福井彦根S波P波   震源からの距離とP波・S波が届くまでの時間の関係(兵庫県南部地震)5図地震波を監かん視しする気象庁職員緊急地震速報のしくみ伝わる速さの比ひ較かく緊きん急きゅう地震速報で減災をめざす速い電気信号を利用して,情報をすばやく伝えるんだね。気象庁地震発生発生直後10秒後ごろ20秒後ごろS波P波地震計主要動初期微動緊急地震速報S波:3~5km/sP波:5~7km/s電気信号(電波など)音:約340m/s約300000km/s 5101520地球  1章 大地がゆれる658図 の地震は,ともに伊い豆ず半島付近で発生した, 震源の深さがほぼ同じ地震である。(a)の関東地震と(b)の伊豆半島沖おき地震を比べると, (a)の地震のほうが震央から遠くまでゆれが伝わっていて,震度が大きな範はん囲いも広い。したがって,関東地震のほうが,伊豆半島沖地震よりも規模が大きな地震であるといえる。このような地震の規模の大小はマグニチュード(M)で❶表される。                                               震度はマグニチュードの大きさや,震源からの距きょ離りによって変わる。例えば,マグニチュードが小さくても,震源に近いと震度は大きくなる。   マグニチュードのちがいによる震度分布のちがい(は震央の位置を示している)8図マグニチュードは M 7.9,M 6.9のように表される。マグニチュードが1ふえると地震のエネルギーは約 32 倍に, 2ふえると約1000倍になる。例えば,    の関東地震のエネルギーは,伊豆半島沖地震の約32倍にあたる。また,東北地方太平洋沖地震 (M 9.0) のエネルギーは,伊豆半島沖地震の1000倍以上になる。❶8図震度5弱以上の地震が発生すると,たなから物が落ちたり,家具がたおれたりすることがあります。このような大きさのゆれを感じると,自動的に安全装そう置ちがはたらくものが身近にあります。例えばガスメーター内のマイクロコンピュータがゆれを感知してガスを遮しゃ断だんしたり,暖だん房ぼう機の自動消火装置が作動したりします。ほかにも身近なものがないか,さがしてみましょう。感震器のおもりが傾かたむくと火が消える。石油ストーブ暖房機の自動消火装置(感震器)の一例ファンヒーターおもり感震器地震のゆれから生活を守る(a)関東地震(1923年,M7.9)(b)伊豆半島沖地震 (1974年,M6.9)2~1356344452~12~1M6.9M7.9M7.9 51015地球  1章 大地がゆれる67平成24年度用教科書からのおもな改訂点・地震の学習で防災・減災への視点を育んだうえで,火山災害についても考えることができるようにしました。  →p.60-78・終章では,津波堆積物についての研究を紹介し,学習した内容の有用性が実感できるようにしました。→p.108-1101年生の段階から学習を通した防災・減災への意識が芽生えるように,地震の実習やマイノートなどで,東北地方太平洋沖地震の教材化をはかっています。資料性の高い図や写真によって,効果的な展開が行えます。地震災害の写真は,章の導入部で興味・関心を高める資料として用いるのではなく,地震のゆれの伝わり方やゆれ方,規模,起こるしくみなどを学習したうえで掲載し,学習した内容をもとに,科学的な視点での写真の読みとりができるように展開しています。大地がゆれる1本文と写真・資料を照らし合わせやすい見開きでの紙面構成を心がけ,火山や火成岩の特徴・分類をわかりやすくまとめています。富士山の噴火の歴史や,はやぶさが持ち帰った鉱物など,効果的な話題も紹介しています。大地が火をふく2風化・侵食,運搬,堆積,堆積による地層の形成から,大地の歴史・変動へと,時系列に思考を組み立てやすい展開に改訂しています。全国各地の博物館の化石の写真を用いた見開きや,地層の観察の代替として使える露頭の写真など,資料性豊かな章になっています。大地は語る3活きている地球地球章の構成と学習内容 地球 編各学年の学習内容近年,地じ震しんに備えた建物の診しん断だんや改修が,全国的に進められている。地震はどのようなしくみで起こり,どのような影えい響きょうを与あたえるのだろうか。地震が起こると,そのゆれは地震が発生した場所から,まわりの岩石の中を波として伝わる。この地震が最初に発生した地下の場所を震しん源げんといい,震源の真上にある地表の位置を震しん央おうという(1図)。大地を伝わる地震のゆれ1地震が起こると,大地にどのような変化が見られたか。小学校6年】1地震による災害にはどのようなものがあったか。小学校6年】2断だん層そうが動いて地震が起こると,地じ割われができたり,山くずれが起こったりする。建物や道路がこわれたり,火災が発生したりする。海の近くでは津つ波なみが押おし寄せることがある。12「波」 についてはp.199参照。   震源と震央1図紙の模も型けいを使ったゆれ方のちがいを調べる実験窓まどわくに耐たい震しん補ほ強きょうがされた校舎(広ひろ島しま県広島市)震央震源地表 5大地がゆれる1章60  p.60 1 年  p.65 1 年  p.67 1 年耐震補強された校舎や緊急地震速報,自動消火装置など,身近な防災・減災の話題を紹介しています。9

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