紀州のみかん星について
- カタカナ、音読みキシュウノミカンボシ
兵庫県と香川県の一部の地域で、りゅうこつ座のカノープスの星名「紀州のみかん星」が伝えられています。
地域ごとの伝承は次の通りです。
① 兵庫県神戸市深江
明治39年生まれの漁師は、神戸市深江の南に相当する地名「紀州」とともに、紀州の産物「みかん」が反映された「紀州のみかん星」という星名を伝えてました。
「紀州の方、和歌山の方、まあ大きい星出まんのや。紀州のみかん星いう。三時頃によう出よった。紀州のみかん星出たら間(ま)ないわ。夜明けてくる」(明治39年生まれの漁師の話)
「みかん」が星の名前として付けられたように、蜜柑の実る時季から見えはじめ、この星によってまもなく夜明けと判断したと伝承されていました。
② 香川県坂出市沙弥島
磯貝勇氏が沙弥島において記録した星名で『瀬戸内海島嶼巡訪日記』に「キシューノミカンボシ旧九月頃紀州の上の方に出て、金比羅さんの方に歸る。蜜柑の出る頃でなければ出ぬといふ」と掲載されています。(アチックミューゼアム編『瀬戸内海島嶼巡訪日記』アチックミューゼアム、1940)
北尾氏は、「坂出市付近からは南より約 17 度、東より出て約 17 度西に沈む。従って、金毘羅さんの方向に沈むのはよいとして紀州の上は東過ぎる。紀州が見えるわけではないので、おそらく漠然と東よりという意味で使用したのであろう」と記しています。
(北尾浩一『日本の星名事典』、カノープスの項参照)
※神戸市深江からは、カノープスは紀州の方向に見えますが、沙弥島から紀州は見えません。



