タイ最北部に住む部族の物語が伝わっている。現代ではこの三ツ星はミンタカ、アルニラム、アルニタクと呼ばれている。ベテルギウス星にはタイ北部の言葉でウペムというもう一つの名前がある。
この名前はある村に住んでいた猟師夫婦の娘の名にちなんでいる。
娘の母親は三年身ごもっていたが一向に出産する気配がなく、村の人々は生まれてくる子は悪魔に違いないと怯え、夫婦を村から追い出した。夫婦は三か月も森の中をさまよい歩いたあと、母親が女の子を産んで死んでしまった。父親は女の子をウペムと名付けた。ウペムはタイ北部の言葉で「父の最愛の子」という意味である。娘は非常に美しく成長した。

娘が住んでいる川向こうの村にクン・サルム・ロルという青年がいた。勤勉で気立てのいい商人だった。ある日川を渡ってウペムの住む村に商売に行き、ウペムを一目見て恋に落ちた。青年はウペムに愛を囁き、互いに深く愛し合うようになった。互いの両親は思うところがありながらも結婚を了承し、ウペムは青年の村で生活することになったが、青年がいないときに姑はいつもウペムに意地悪をするのだった。

ウペムは身ごもっていたが我慢できなくなり、青年の家をでたが途中で流産してしまった。なんとか実家に帰り着いたものの、父親の腕に抱かれて死んでしまった。父親は怒り狂った。青年は家に戻るとウペムがいないのですぐにウペムの実家にむかったが、村人みんなの怒りの目を向けられて家に近寄ることもできず、ウペムの亡骸にも会わせてもらえなかった。そこで青年は家の門から離れたところにたくさんの硬貨をまき、村人たちが硬貨に群がっている間にウペムの家の中に忍び込んだ。

そこにウペムの亡骸が横たわっているのを見て、悲しみに打ちひしがれ死んでしまった。悲しみに怒っていたウペムの父だがこの出来事に驚いて二人が永遠に一緒にいられるよう二人を並べて埋葬することにした。息子のあとを追って来た青年の母親は怒りと憎しみでいっぱいで、ウペムの隣に息子を埋葬することを拒否したがすでに埋葬されたあとだった。どうすることもできない母親はそれでも二人を隔てたいと二つの墓の間の地面に棺を運ぶのに使った三本の竹竿を突き刺した。この言い伝えからタイ北部の人々はオリオン座の三ツ星をダオ・カン・サルム・タルと呼ぶようになった。
これは赤いウペムの星（ベテルギウス）と明るく青いクン・サルム・ロル（リゲル）隔てる三本の竹竿星という意味である。