英語授業研究
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3年間を通した指導のポイントあれこれ
−入試に対応でき,実用に耐える英語を身につけさせるには−
愛知県立安城東高等学校
牧 野   厚

1.はじめに

 英語教育の目標は [1]知的刺激に満ちた授業 [2]大学入試に対応できる学力の養成 [3]実用に耐えうる英語に発展する学習法の修得,基礎力の養成にあると思う.
 各高校はそれなりの歴史を重ねつつも,各指導のノウハウは蓄積され伝承されているであろうか.ただ年月を重ねた事実を伝統と称するのはおかしいように思われる.企業が歴史を祝うのは競争に生き残ってきた努力への祝福である.企業と同じような経営努力を学校はしているのだろうか.我々はよほど自らを戒める姿勢と,努力,工夫を保たないと十年一日変化なしといった有様になりかねない.指導のポイントはきちんと伝えられ,失敗は反省として伝えられ改善されるべきである.

2.学年ごとの目標

 勤務校は現役,浪人合わせて毎年150〜200名程度が国公立大に進学する地方の公立高校である.私なりに次のように目安を立てている.

1年

*毎日の学習習慣の確立
*中学校後半において不足がちになった音声指導の復活
*基本文法事項の理解
*やさしい長文英文の読解訓練

2年

*語彙,語法,熟語表現の充実と文法事項の定着
*文法の復習を兼ねて基本的な作文演習
*読解と作文につながる構文,文構造の理解
*音声も伴った長文読解技術の向上

3年

*発展的な単熟語,文法,語法の整理
*実戦的な長文速読読解
*英作文能力の向上
*センター試験と各自の入試形態に対応した答案作成技術の向上

3.日々の授業のあり方

 まず生徒に予習を要求する厳しい姿勢.教師の説明をすべて聞き取ることは不可能に近い,だから聞くポイントを絞り込むために予習は不可欠となる.プリントなどを使って予習がしやすい工夫が必要.ただし,つい熱意のあまり細かなことまで調べさせがちなのでポイントを絞ることが大切.プリントの嵐にならぬように気をつけたい.
 授業は全員が指名され,活動が明確であり,教師の一言一言に生徒が聞き耳をたてるような問いかけ方,説明の仕方を工夫すること.生徒の目を見て頭が働いているかをチェックすることが必要.手も動かさず,座っているだけの状態に生徒をさせないために作業的なことを指示し,できれば授業ごとに評価を与えれば緊張感を持続させることができる.
 板書が多いのも問題である,思考する時間を奪ってしまうからだ.板書事項はなるべく少なくするために,プリントを穴埋め形式で作る.流れの必要な説明や複雑な解答のみに板書はとどめたい.

4.英語I,英語II,Readingの指導

 予習でまず新しいレッスン全体についてのおおまかな質問を与えておいて速読させ,質問に答えさせる.QAがあれば利用するのもよい.300語〜700語の長文読解トレーニングを毎レッスンでしていることになり,長文へのアレルギーを減らすことができよう.速読チェックは本文のみのプリントを作り,英文にスラッシュや括弧などをいれさせパラグラフごとにQAをつけておけばよい.センター試験第6問のB問題の演習になる.
 速読のためにはパラグラフリーディングの指導がいる.探し読み(Scanning)によるトピックセンテンス探し,拾い読み(Skimming)によるKey Phrase Read,展開パターンを踏まえた予測読み(Predict Read)等を早い時期で教えたい.しかし英語I,IIの教科書でこれらの観点から編集されたものを見たことがない.3年で扱うリーディングの教科書で一部散見される程度である.パラグラフリーディングを取り入れた教科書の発行を切に願うものである.
 次回授業分については精読の予習を生徒には要求しておく.
 音声は漫然と聞かせないように,チャンク(語群)ごとに聞いて訳すListen and Translate,QA活動を1年ではとりわけ重視したい.コーラス音読の際に前出プリントにスラッシュなどを入れさせてゆくのも集中度を高めるのに役立つようだ.
 発音記号の指導は一気にやっても効果は薄い.新出単語のコーラス音読の時,綴りではなく発音記号で読むように指導すれば,いずれは定着するであろう.
 内容把握についてはパラグラフごとにTopic(Key)sentence,Key wordsとレッスンごとのConclusionを前もって探させ,木を見て森を見ずということがないようにしたい.英語IIの後半,Readingでは聞いて訳すListen and Translateは難しくなるのでテキストを見てもよいとする.とにかくパラグラフリーディングの技術を1年のうちから指導したいものだ.
 1度理解した文は何回も音読させたい.後戻りしない読み方が身につくはずである.正しい発音のために全員にCDかテープを持たせるのがよいだろう.

5.文法の指導

 学習指導要領から文法が消えて久しいが,受験のために文法の時間はほとんどの学校で相変わらず設けられている.皮肉なことだ.文法には強いが,会話は苦手といった英語教師の再生産を永遠に続けていてよいのであろうか.教師という英語の知識が豊富な者にとっては,文法は非常にまとまった便利なものであるから,生徒に強く理解を求めるようだ.ここに教師と生徒の間に差ができる.競技を知らずにルールの理解ができないのと同様に,文法(しかも例外がいっぱい)を教えられても,英語嫌いを生むだけだ.
 しかし軽んじることはできない.例えば,英語I,IIの各レッスンでの文法事項で必要十分と文部科学省は考えているようだが,現実には,2年の3学期でしかも基本的な文法が終わるようでは受験にはおよそ太刀打ちはできない.
 要は1年ではミニマムの文法に絞り,2,3年のWritingで文法項目立ての教科書,問題集や作文問題集を利用して厚みを加えていくのがよいであろう.例えば,条件の副詞節では現在が未来を代用するというルールは1年の5月に教えるが,何回取り扱っても定着しない生徒がいることを考えると,指導方針を最初から何回も繰り返すと決めておく方がよいであろう.1年でやったのだから,分からなければ自分であの厚手の文法参考書を見ておけといっても誰も本を開く気を起こさないであろう. 
 例文などを授業の冒頭,最後で音読することもおろそかにはできない.
6.Writingの指導
 教科書通り復習を兼ねて文法項目立ての作文から始める.なるべく考えさせるヒントをたくさん与えて,低学力者も参加できるように工夫をした予習プリントを用意する.その上で,予習もせず写すだけということがないように,予習チェックと授業中の添削チェックを徹底する. 1課ごとのプリントが有効だろう.若干の自由作文の添削もできるように少人数編成のクラス展開ができればさらによい.
 文法項目別が終わったら,構文パターン利用の作文演習そしてテーマ別のやや高度な作文に移行する.3年では学力差も大きいので能力別クラス編成を利用して作文指導をする.センター試験を重視し過ぎて,作文演習が不足気味である.作文をすれば何のために文法,語法があるか痛感するはずである.2次試験直前にあわてて作文に取りかかっている生徒がいかに多いことか.
 Writingにおいても例文等を音読させたい.50語程度の文章が冒頭にあるならばオーラルメソッドでの作文も可能である.

7.Oral Bの指導

 入試などのペーパーテストでは音声の配点は少ないという理由で軽視されがちである.音声に力点を置いた学習は聞く,話す力のみならず,直読直解で後戻りせず速読する力,聞き慣れた表現の再現で作文力にも直結しているのでおろそかにはできない.
 学校では時間が限られているし,個人の能力差も大きいので家で前もって聞くことを徹底させ,そのチェックとしてテスト形式の授業をする.スクリプトの訳は与えておく.
 通しで聞くときはテープ等もよいが,その後のTFQuestion,QAは日本人教師が生徒の目を見ながら,生声でやればよいと思う.言葉は道具であり,authentic にこだわって目の前の生徒とのやりとりをせずに,テープ機器をいじっているのは本末転倒の姿であると思われる.下手な発音でも,多少間違っていようとも構わない(むしろその方がよいかもしれぬ),とにかく英語は道具にすぎないという認識を生徒の目に焼き付けさせたい.さもなければ,いつまでたっても英語を話せない日本人を再生産する恐れがある.
 本文を適当な長さに分け,聞かせてQAを行う.学級規模は少人数が望ましい.何回も指名され,緊張感を持続しつつ英語に慣れてゆくことができる.完全な解答は求めない方がよい,生徒を萎縮させては元も子もないからだ.入試や英検の対策としてオーラルのテキストやCDを活用するように生徒にも伝えたい.

8.まとめとして

 学校経営を任されたある企業人が教員組織を見て草野球のチームだと言い放った.監督はただ見ているだけ,選手は各自のポジションをルールを外れない程度で守っている.それでよいのだろうか.
 進学校と称される学校は入ってくる生徒が優秀で,さらに教科指導が優れているということではないのか.学校という組織として,どの教師も一定水準の力量を維持した,切磋琢磨しあう教えるプロの集団としての組織力を持ち,かつその指導力を蓄積,継承していくことが必要と思われる.
 さて最後に,一番大事な誠実さと生徒への気配り,ユーモアと余裕に欠落していないか.これは自らも大いに気をつけなければならぬことである.

愛知県立安城東高等学校
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