英語授業研究

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私のWRITING指導法
−ALTの来校は週一日,LL教室はなく毎日教科書と黒板中心で,
どのように生徒に書く力をつけるか−

 

徳島市立高等学校

北 原 顕 彦

 

はじめに

 現在私が勤務している徳島市立高校では,ライティングを第二・三学年で二単位ずつ行っている.平成9年に現在の学校へ赴任して以来,私はこの科目の授業を次のように展開している.

1.授業の実際

1-1.まず発音練習
 とかくライティングの授業は文法事項の説明と板書した英文の解説という,比較的「静かな」授業になるきらいがあるが,私は「まずはじめに言葉ありき」をモットーに,20分〜25分かけ,声に出して教科書の本文と例文(特に後者)を覚えてしまうぐらい発音練習させている.

1-2.例文は暗記するまで
1-2-1.一回目は教科書の日本文と英文を見ながら.その際,文はchunkごとに,文末から練習する.
 例えば,He studied Japanese classics hard at the library two hours every day.という文なら,以下のように練習している.
(注:tは私,sは生徒)

t :two hours every day
t&s:two hours every day(二回)
t :at the library two hours every day
t&s:at the library two hours every day(二回)
t :He studied Japanese classics hard at the library two hours every day.
t&s:He studied Japanese classics hard at the library two hours every day.(二回)

 ここで大切なことは,まず生徒が発音するとき私も一緒に発音していることである.多くの生徒は恥ずかしがってなかなか大きな声を出さない.ところが,私が生徒たちに負けないぐらい大きな声で一緒に発音していると,生徒たちもだんだん声が大きくなってくる.
 それと,「chunkごと」はともかく,「文末から」という,一風変わった方法をとっているのだが,これには,各文の文末ほど発音練習の回数が多くなる(例えば前出の例文なら,two hours every dayは六回)ので,生徒は文末ほど発音慣れしていることになり,文末に近づくほど大きな声が出るようになる.従来の方法だと,息が続かなかったり,途中で発音のわからない語があったりで文末では声が小さくなったり,読み終わるのがバラバラになることが多いが,この方法を続けると,クラス全員の声がピタリと揃うようになってくる.

1-2-2.板書の虫食い例文を見ながら
 二回目は,教科書の例文を先頭の語と前置詞,冠詞を除きすべて( )の虫食いにして板書し,生徒はそれを見ながら私の声に合わせて発音練習する.
 例えば,前出の例文なら,

He(  )(  )(  )(  )at the(  )(  )(  )(  )(  ).

と書き,必要にて応じ該当する( )の下へ,「毎日」「二時間」「一生懸命」「日本の古典」のように書く.この時の発音練習も,第一段階と同じようにchunkごとに文末からやっていく.

1-2-3.仕上げは生徒だけで
 以上の練習でほとんどの生徒は例文を「口で」覚えてしまっている.仕上げとして,( )の下へ書いた日本語を消し,私が例文の日本語を口頭で言い,先ほどの虫食い例文を,文頭から指さしながら全員に発音させる.ただし,例文が長いときには,第一段階と同じようにchunkごとに,文末から言わせるようにする.
 もうこの時には,クラス一同が驚くほど大きな声ですらすらと例文を次から次へ発音できるようになっている.毎年新学期一回目の授業からこのやり方でライティングの授業を行うのだが,約20分後にはすらすらと例文を発音している自分の姿に生徒自身が驚くのである.例文が長ければ長いほど,それをすらすらと暗唱できた時の喜びは大きく,生徒の目つきががらりと変わり,「ライティングの授業っておもしろい!!」という気持ちが台頭してくるのが手にとるようにわかる.

1-3.この練習を継続させるために
 このように,私のライティングの授業と「劇的な」出会いをしたといっても,やがて発音練習が面倒臭くなり,怠ける生徒がでるようになる.これを防止するため,「強制力」を持たせている.

1-3-1.暗唱を平常点に
 生徒は,この発音練習が終わって原則的に一週間以内に私のところへ来て暗唱しなければいけないことにしている.例えば定期考査から次の定期考査までに10課進んだとすると,その全部の課の暗唱を終えていれば15点を与えるようにしている.定期考査のペーパー試験の方は85点満点で採点している.
 生徒は昼休みや放課後に自分の教科書持参で私のところへやって来て,例文のページを半分に折って英文が見えないようにする.
 私は,「Aの2番と,Bの1番」のように,二個ないし三個の例文の番号を指定し,生徒が日本文を見ながらその例文を言えるかどうかを確認して,きちんと言うことができれば合格の旨を告げ,教科手帳に記録している.
1-3-2.実施上の問題点
 今年度は三年生2クラス(計76名)でこの「暗唱」を実施しているが,教師にとって一番大変なのは,暗唱するために私に会いに来る生徒に追いまくられることである.授業で発音練習をした日から一週間以内に言いに来ることにしているのだが,大半の生徒が授業のあった日か,締め切り日の前日または当日の昼休みや放課後に大挙して押し寄せるので,とても落ち着いて昼食を食べることはできない.

1-4.生徒の感想
 ここで生徒の感想の一部を紹介したいと思う.

三年の英Wの授業は音を大切にしてきたから良かったと思う.今までの英語の授業では,発音をあまりやったことがなく,自分で勉強をする時でも,大変苦労して,模試でも発音,アクセントの問題が不得意だった.しかし,三年になって極端に発音,アクセントの問題が出来るようになった.やはり,授業中に声を出して英文などを読んだのが大変良かったと思う.

2.和文英訳添削指導

 これまでに述べてきた発音練習に並んで私が力を入れているのは,和文英訳の添削指導である.

2-1.問題集の作成
 過去約10年間に国公私立大学で出題された和文英訳の問題を集め,問題文の難易度と分量に応じて,初級と中級の二種類作成し,文書ファイルとして自分のパソコンの中に保存している.

2-2.受講生徒募集
 毎年4月の最初の授業で,添削指導の概略について説明し,希望者を募集する.この時点では多数の生徒が申し込んでくる.一人ひとりに初級の問題集を渡し,提出方法などの説明を行う.

2-3.添削方法
 生徒は一回あたり日本文を3問英訳し,その日本文と訳文をルーズリーフに書き,白紙のルーズリーフを添え,クリアーフォルダーに挟み込み,翌朝指定された場所の箱の中へ投函する.私は下校時に提出箱の中のフォルダーを回収して,その日の夜に自宅で各生徒の答案を添削する.3問とも誤りがなければ,生徒が添付した白紙のルーズリーフに解説をプリントアウトして,答案とともにフォルダーへ戻す.もし一問でも不十分な箇所があれば,その部分に赤線を引き,ヒントを書いてフォルダーへ戻す.次の日の朝,元の提出箱の横へフォルダーを積んでおくと,登校してきた生徒が自分のフォルダーを抜き取り,前夜自宅で作成した次の3問の答案と,新しい白紙のルーズリーフをフォルダーに挟み,提出箱の中へ再び投函する.
 数名分なら大したことはないが,これが何十名分にもなると添削するのに毎日4〜5時間もかかり,大変な重労働になる.少しでも負担を軽減し,効率的に添削するため,以下の点を厳しく受講生に守らせている.

@.ルーズリーフに書くときの書式を統一.
A.何日休みが続いても4問以上提出しない.
B.3問とも「やり直し」の時は,新しい問題の答案を提出せずに,その3問をやり直して提出する.
ただし,やり直しが1〜2問の時は,新しい問題の答案3問と,やり直した答案を提出する.
C.定期考査・校内模試一週間前から一週間後は添削指導は休講.
D.来る者は拒まず,去る者は追わず.

 受講者全員に継続するように督励するのが理想であるが,私の一日あたりの処理能力は30人弱が限度なので,仕方なくDをモットーにしている.毎年最終的には,毎日提出しているのが5名程度,数日間に一回程度が10名程度,一週間に一回程度が15名程度に落ち着き,これらの生徒はほぼ全員が進路の希望を叶えている.

2-4.長期休業中等の指導
 夏休み等長期休業中も補習がある間は上記通りの指導を基本としているが,希望者はfaxやインターネット,あるいは郵送による答案の提出も受け付けている.特にセンター試験終了から前期日程までの間は自宅のfaxが大活躍している.

2-5.添削指導から得られるもの
 添削しづらい答案に出くわすと赤ペンを握りながら血圧が上昇し,「もー来年は絶対やらんぞ!!」と思うのだが,4月にはまた希望者を募っている.それほどまでに私はこの添削指導に夢中になっている.その理由は,以下の通り.

1.生徒の弱点がよく分かる.

 和文英訳は,持っている「英語力」を総動員して取り組むものであり,受講生徒個々の,そして全体の弱点が手にとるようにわかり,それを日々のライティングや文法の指導に活かすことができる.

2.自分の英語に対するセンスが磨かれる.

 日本文を見て答えを作るだけなら,自分の知っている語彙や文法の知識だけで事足りる.しかし生徒の答案を前にして,この語彙,あるいは用法が正しいかどうか,常々から判断に迫られていると,英語教師として間断なく刺激が与えられていることになる.

3.指導を通して生徒と心が通い合う.

 生徒が質問する.私がそれに答える.納得いかなければ,いろんな例を引き合いに出しながら再度説明する.生徒の疑問が解け,その語彙や用法が使えるようになる.生徒に和文英訳の面白さがわかり,夢中になり,それが成績に反映される.この過程の中で生徒との心の触れ合いを感じるのである.そして,この「心の触れ合い」があるからこそ,昼は「発音練習」に,夜は添削指導に情熱を燃やすことができるのである.先生方の忌憚なきご意見・ご感想をいただければ幸甚であります.

 

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