授業に生かす
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オーセンティック・アセスメントと
ポートフォリオ評価(2)
兵庫教育大学助教授
吉 田 達 弘

 前号では,ポートフォリオによる評価法について説明しました.ポートフォリオとは,生徒の学習の過程や成果を蓄積していく評価方法です.ポートフォリオの中身を見ていけば,教師は,生徒たちの成長を知ることができ,また,生徒は,自己評価をおこなうことで,自らの学習の姿を確認することが可能になります.本号では,英語科での,ポートフォリオを使った具体的な評価方法を述べたいと思います.

ポートフォリオのタイプ

 まず,ポートフォリオのタイプですが,(1)「作品発表型」,(2)「蓄積型」,(3)「評価型」ポートフォリオの3つに分けられます(O'Malley & Valdez-Pierce,1996).
 (1)の「作品発表型」は,これまで,書いてきた文章や作品の中で最も優れたもの,他の生徒や教師にも公表したいものを入れるポートフォリオです.したがって,学習のプロダクトが蓄積されることになります.
 (2)の「蓄積型」は,授業中,宿題で出てきたあらゆるレポート,作品を一時的に集めておくもので,“working folder”とも呼ばれます.このポートフォリオには,生徒たちの学習の過程や作品作りの過程が見えてきますし,蓄積された記録を再吟味することで「作品発表型」へつながる作品も生まれてきます.
 (3)「評価型」では,生徒たちの自己評価,教師の評価を蓄積し,学習を振り返ることに焦点を当てていきます.
 ポートフォリオというと,最終的にすぐれた作品を作り上げていくことに焦点が当てられがちですが,実は,目標に至る過程での教師の評価,生徒の自己評価が非常に重要となります.そして,評価の際に「評価基準(criteria)」がしっかりと示されていることが大切です.ポートフォリオの評価基準は,教師だけが決めるものではなく,生徒も一緒に決定していくものです(例えば,自己到達目標)が,教師,生徒は,この評価基準を参照することで,学習をシステマティックに振り返ることが可能になります. 

リーディングにおけるポートフォリオ

 さて,具体的に英語科の中で,どのようにポートフォリオを使用していくかについて述べていきます.ここでは,リーディングに焦点を当てたいと思います.オマーリーら(O'Malley & Valdez-Pierce,1996)は,リーディングの中で評価の対象となる活動をいくつかあげています.その中には,(1)「リーディング・ログ」,(2)「作品に対する批評の記録」,(3)「作品についてのディスカッション」などがあげられています.
 (1)「リーディング・ログ」は,生徒たちの読みの記録表です.読んだ作品の題名,著者名,ページ数,短い感想などを書き込んでいきます.
 図1は,実際に子どもが書いたものを再現したものです(スペリングのミスなどが多数見られます).このログを参照することで,教師は,生徒のリーディングのレベルや進み具合を把握し,次に与える読みの教材を選択することができます.また,生徒も自分がどのくらいの時間でどのくらいの量の作品を読むことができるか,どのようなジャンルを主に読んだかを,把握することができます.
 (2)「作品に対する批評の記録」では,作品に対して個人がどう考えたかが記録されます.したがって,ただ内容をまとめただけでは不十分で,教師は,生徒と対話をしながら,生徒の作品に対する反応を引き出してやります(後述するカンファレンス).教師の側も,生徒の反応をシステマティックにみるために,評価の基準をあらかじめ準備しておきます(図2).
 (3)「作品についてのディスカッション」では,短い作品を読み,小グループで,ディスカッションをおこないます.ここでは,生徒個人が残しておいた記録から,作品についての質問を出し合いながら,ディスカッションを進めていきます.この方法は,生徒たちが協調的に作業に取り組むので,相手の意見を聞きとるためのリスニング力や自分の意見を表明するためのスピーキングの力を高めることにつながる統合的な活動となります.また,グループの他のメンバーの質問から,自分が読みとれていなかった内容を理解したり,その後のストーリーの予測などもおこないます.生徒たちは,図3に示すような自己評価表に記録を残していきます.教師は,この自己評価表に書かれた生徒の反応に対して,コメントをフィードバックしますが,その際に,やはり,あらかじめ準備した評価基準を参照します(図4).
 以上,(1)〜(3)であげた活動で出てくる作品,記録や自己評価,教師のフィードバック,補助教材などは,すべてポートフォリオに蓄積されていきます.「作品に対する批評の記録」などは,グループディスカッションや個人の振り返りを経て,さらによい批評に仕上がっていくでしょう.
 上であげた3つのやり方は,一斉授業で同じ教材を読んでいく日本の授業では,なじみにくいとお考えになられる方もいらっしゃるかもしれませんが,教科書を使う場合でも,教材によっては,言語材料よりもコンテンツ(内容)に比重を置き,時間数をかけて展開した方がよいものがあります.このような教材の場合は,生徒間で読み方や意見に差がでてくるので,上であげたような活動,また,ポートフォリオ評価が効果的であると思われれます.教師と生徒がこのようなシステマティックなやり方に慣れていくには,言語スキルの向上とともに,かなりの時間を要すると思われますが,4技能を「有機的に関連」させた授業を展開し,生徒たちの学習を評価していくときには,非常に有効な手段だと思います.

ポートフォリオとカンファレンス

 ポートフォリオ評価をおこなっていく際に,もう一つ重要なのは,個人での振り返り(リフレクション)とともに,できあがったポートフォリオについて,教師と話し合うカンファレンスという作業です.リーディングの場合,教師は作品を読み,ログを記録させた後に,数人ずつを集め,小グループのカンファレンスを開きます.ここでは,作品に対する生徒の反応を十分に引き出すために,音読させたり,内容についての質問をしたり,生徒自身のポートフォリオに収められたリーディングログを確認する作業をおこないます(“Book Talk”とも呼ばれる作業です).生徒は,教師と対話することで,作品についての内容を深めたり,次に読みたい材料を教師に伝えることができますし,教師も生徒のリーディングの力を把握し,フィードバックしていくことができます.日本の教室では,時間的,クラスサイズ的に難しい側面もあるかもしれませんが,ティームティーチングやグループ活動をうまく使って,取り組んでみたい作業です.

最後に

 今回は,リーディングに焦点を当てましたが,ポートフォリオを使った学習,評価は他の技能にも十分に応用できます.ただし,これまでの,評価とは異なり,生徒の成長の過程を時間をかけてとらえていくこと,教師から生徒へ十分なフィードバックをすること,生徒の自己評価を重要視することなどから,従来の評価観を大きく転換して取り組む必要があるようです.筆者は,ポートフォリオによる評価が,伝統的な評価を補完するかたちで機能してほしいと考えています.

参考文献(前号も含む)
加藤幸次・安藤輝次.1999.『総合学習のためのポートフォリオ評価』黎明書房.
大隅紀和.2000.『総合学習のポートフォリオと評価』黎明書房.
堀江祐爾.1997「アメリカにおける<新しい>国語科学力評価の方法−習者の学びの過程と成果を蓄積するポートフォリオ評価−」『国語科教育』第44集:31-40.O'Malley,J.M.& Valdez-Perce,L.1996.Authentic assessment for English language learners.Addison-Wesley.
Paris,S.G.& Ayers,L.R.1994.Becoming reflective students and teachers with portfolios and authentic assessment. American Psychological Association.

図1

図2

図3

図4