| 英語授業実践記録 |
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| スキーマ理論を応用した 英文読解の指導について |
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| (宮崎)日向学院高等学校 森戸真吾 |
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1.はじめに
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英語教育において、実践的なコミュニケーション能力の育成が目標として掲げられてから、英語の会話能力が今までよりもさらに注目を浴びるようになった。文科省の学習指導要領においても第8節外国語の目標として「言語を通じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成」があげられている。しかし外国語学習において会話力は能動的なものであるが、読んだり書いたりする能力は受動的なものであると誤解されがちである。指導要領にもあげてある通り「情報や相手の意向を理解」することもまた実践的コミュニケーション能力の大切な一部であるといえる。つまり外国語における読解能力も大切な実践的なコミュニケーション能力なのである。本稿では、受動的な技能であると誤解されがちな、読解能力は受動的なものではなく、能動的な技能であるということを、スキーマ理論に照らし合わせて説明し、そのプロセスを明らかにし、英語読解の指導への応用について考えたい。 |
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2.学習理論の変遷とスキーマ理論
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D. Ausubel (1965) の学習理論によると、学習は新しい情報を、旧情報の中に取り組んでいく作業であると捉えられている。つまり、学習者の中に情報の階層構造があり、そのなかに新情報が取り組まれていくとされている。つまり、学習者の中で確立された知識体系、階層構造に重点が置かれている。この理論について H. D. Brown (1994) は “Meaningful learning, on the other hand, may be described as a process of relating and anchoring new material to relevant established entities in cognitive structure.” と解説している。
スキーマ理論においては、知識が階層構造的に表されているということに加えて、むしろ意味のネットワークと新情報の交互作用によって行われる概念駆動的処理という点に重点が置かれている。
上のマクドナルドでの会話を読んで、会話1はよいとしても、会話2に違和感があったはずである。なぜ、そのように感じたのであろうか、実は私たちの知識体系の中に店に入ってから注文をして帰るまでの会話について、暗黙の了解があるからである。このような暗黙のうちにある変数の集合体がスキーマである。このスキーマが英語の学習にどう関係してくるのであろうか。 |
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3.英語読解におけるスキーマ理論の応用
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3.1.読解を困難にする要因:語彙と文構造 英語の長文読解を指導している際に、真面目に辞書を引きながら悪戦苦闘している生徒を目にする。段落の一番最初から、一生懸命に文章を読みすすめようとしているのであるが、2、3分ぐらいすると、顔が赤らんできて、いらいらしてくる。そのうち辞書を投げ捨てたくなるのである。その生徒に対して「ここであきらめるな、語学は忍耐だ!」と精神論を唱えても生徒はいやになるばかりである。なぜ、外国語の読解は困難に感じるのであろうか。 “Quantum mechanics is a more fundamental theory than Newtonian mechanics and classical electromagnetism, in the sense that it provides accurate and precise descriptions for many phenomena that these “classical” theories simply cannot explain on the atomic and subatomic level. It is necessary to use quantum mechanics to understand the behavior of systems at atomic length scales and smaller. For example, if Newtonian mechanics governed the workings of an atom, electrons would rapidly travel towards and collide with the nucleus. However, in the natural world the electrons normally remain in an unknown orbital path around the nucleus, defying classical electromagnetism.” 何か英語で書かれているようであるが、なんとも理解しがたい。上の文章はウィキペディアから量子物理学についての説明してある部分を段落の途中から抜き出したものである。この文章を理解しがたくしている要素は、1)語彙の難易度 2)文の構造の複雑さ などが挙げられるであろう。 3.2.読解を困難にする要因:スキーマの不足 上で、読解を困難にしている原因を語彙、文構造の面から考えてみたが、生徒が英語の長文を読む際に他にどのような困難を経験するであろうか。まず、読解において 1)文化的な知識の不足による読解の困難さ が上げられるであろう。例えば、次のような象徴的な語、candy cane, Mrs. Claus, bells, trees, light などから何を想像するであろうか。上の語は本校に留学中のアメリカ人の生徒にクリスマスについて連想する単語を列挙してもらったものである。このような語も、文化的な知識がなければそこから派生する意味ネットワークにアクセスすることができない。文化的知識に限らず、一般教養として地球温暖化について知識がなければ、温暖化についての文章を読むのが困難になるのと同じである。これは内容についてのスキーマの不足からくる困難さといえる。つぎに 2)読解のフォーマルスキーマに対する知識不足による原因 が挙げられる。 Kaplan (1966) によると論説文などは文化的に構造が決められており、第二言語学習者は言語そのものだけでなくテクストの構造についても理解しなければならないと述べている。このフォーマルスキーマとは具体的にいえば、日本語の起承転結という文章構造などのことである。日本語の論説文をそのままの構造で英語に翻訳した場合、英語として読みにくいものになり、理解不能になってしまうことも少なくない。 Driscoll (1997) は、読者は具体例、分類、比較、対比、原因、結果などのテクストにおけるフォーマルスキーマを使用して読解を行っていると述べている。英語の論説文において、段落構造の理解などは欠かすことのできない知識であると考えられる。以上のようなことから判断すると、読解の授業において単に、各文の日本語訳、文法的な説明だけでは不十分であるといえる。文章の読解においては、文と文とのかかわりあい、文章の構造を明示的に指導することは有益であると考える。 |
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4.パラグラフについての指導
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上で述べたフォーマルスキーマの例として、英文におけるパラグラフの構造の理解も読解に有益である。英語の論説文では、原則として段落にまとまった内容が述べられる。そのなかで主題を表す文のことをトッピックセンテンスという。また、その具体例を示す文をサポーティングセンテンスとよんでいる。トピックセンテンスは文頭に置かれるのが多いが、文中、文末に出てくることもある。実際の英文 を例にとって考えてみることとする。 Until recently, humans did not live very long. In the past, there were not many old people. When archaeologists looked at one of the oldest cemeteries in the world, they found that most of the people there were less than twenty-five years old when they died... この短い段落においては下線部が主題でありその後の部分は具体例となっている。英文読解の際に、生徒に鉛筆を持たせて主題文に下線をつけ、サポーティングセンテンスに波線を引かせるなどの活動は、受動的な読み方でなく生徒による能動的な読解活動につながる。また、論説文をこのように読む癖をつけることによって、英文を批判的に読む critical reading の力の育成にもつながっていく。 |
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5.文章の展開についての指導
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上では、各段落におけるボトムアップ的な段落内での理解についての指導について述べたが、まとまった英語の文章を読む際に、文章の展開についての知識があることが望ましい。英語の論説文においては、まず全体のイントロダクション的な段落がおかれ、筆者の説明しようとすることについての簡単な命題が述べられる。その後の段落では、その命題を証明するための具体例、比較、対比などのための段落が続き、最後に結論部分が述べられ最初の命題について筆者の考えが述べられる。このようなメタ言語的な知識も英文を解釈するためには必要な知識で、読解は受動的に読んで解読をするというよりも、フォーマルスキーマに照らし合わせてテクストの再構築をする作業であるといえるかもしれない。 |
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6.実践的な指導例
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これまで述べてきたような、技能を英語の授業において教授するには具体的にどのような方法が適切なのであろうか。 |
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7.まとめ
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本稿では、スキーマ理論を大まかに概観して、文章読解がいかに能動的な活動で、テクスト再構築型の活動であるかを確認し、読解における困難がメタ認知的な読解ストラテジーに対する理解の不足が原因になっていることを指摘した。またその具体的なストラテジーの内容、指導方法についても論じた。英語長文読解の指導はこれまで、各文の訳読、文法的な分析で終わりがちであったが、これからはもっと広い視点での指導が求められている。しかし、このような技能、知識は基本的語彙の習得、文法的な理解などのうえに成り立つものであり、それ自体で独立しているものではない。生徒にも求めるものは求め、さらなる英語教育の発展に貢献したいと思う。 References |