5文型の諸問題
学習英文法を論じる際、必ずといっていいほどその功罪を問われるのが5文型である。そこで5文型の中から次の3構文を取り上げ、その活用法を紹介する。
[1] 第3文型の同族目的語構文
多くの文法教材が同族目的語構文を第3文型の特殊例として取り上げている。しかし、取り上げるだけで詳しい説明はほとんどなされていない。たとえば、次のように目的語に形容詞がつかないと非文法的になるという事実は挙げられていないので、教師が補足する必要があるだろう。
ア. She smiled a happy smile.
イ. *She smiled a smile.
また、第3文型に分類されるということの大きな利点は、「動詞の後ろにある名詞句が目的語であり、受動態にできる」ということである。ところが、同族目的語構文はその限りではない。
ウ. I dreamed a funny dream last night.
エ. *A funny dream was dreamed (by me) last night.
多くの授業でこのようなところが指摘されないでいる。しかし、こういう事実を指摘することで、「第3文型であるなら受動態にできるはずだ」という推論を生徒に促すことができ、さらに「目的語」という文法役割を意識させることもできる。ちなみに、同族目的語構文は英語にしかない現象であると思い込んでいる生徒が少なからずいる。そのような生徒には日本語の同族目的語構文(「歌を歌う」や「踊りを踊る」など)を提示することを心掛けておきたい。
[2] 第4文型の「所有者制約」
第4文型に分類されるいわゆる「授与動詞」の間接目的語には所有者しか来ない。したがって、次のようなコントラストがある。
ア. John sent a letter to Mary.
イ. John sent Mary a letter.
ウ. John sent a letter to London.
エ. *John sent London a letter.
このような事実はまったくといっていいほど文法教材には記載されていないが、提示すると、間接目的語と直接目的語の関係が「受取人−贈り物」の関係であることがスムーズに理解される。さらに、上記のような書き換えの意義(新情報が文末に置かれるという談話の方略)も伝えておきたい。そうすれば、直接目的語が代名詞のときに第4文型ならない事実もはっきりと示すことができる。
オ. I gave the boy an interesting toy.
カ. *I gave the boy it.
[3] 第5文型と「常識的解釈」
英語を理解するためには第5文型を習得しておくことが重要であることは言うまでもない。しかし、多くの生徒が理解に苦しんでいる。特に補語に現在分詞と過去分詞のどちらがくるのかということが生徒にとっては難しいようである。そこで、文脈がないと一義的には決まらないにもかかわらず答えとして現在分詞と過去分詞のどちらかを選ばせる問題を取り上げて、両者の違いを説明することができる。たとえば、次のような問題を考えてみる。
ア. 誤りを訂正しなさい。
You should not keep her studied for three hours.
答えは当然 studied を studying に変えるわけだが、それは「一般的常識に照らして」そうなるに過ぎない。「研究者である彼女が自らすすんで人体実験の被験者となっていて研究が続られているが、実験が過酷で3時間も続けて行うと被験者である彼女に申し訳ない」という文脈ではbeingを補うという訂正も「文法上」誤りではない。(もちろん、英語話者はこのような文を発しないのではあるが)このような突拍子もない文脈設定を提示することで生徒の興味を喚起することができる。ただ、注意しておきたいがこのような文を提示する際は「文法上」正しいに過ぎないということも併せて伝えておかなければならない。あくまで、興味喚起のための手段であることを意識することが肝要である。
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