| 英語授業実践記録 |
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| 実用英語技能検定準2級の 指導を通しての一考察 〜‘reading, writing’ 指導から自主性を育む ‘listening, speaking’ の指導へ 〜 |
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| 長崎県立清峰高等学校 松尾幸祐 |
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1 はじめに
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多様な教員の仕事がある中,英語教員としてのライフワークの1つに「実用英語技能検定」の調査研究を定め,ここ10数年間,その調査研究を続けてきた。生徒に「英検」と関わらせることは,まず第一に英語という教科に興味・関心をもたせるためである。次に,生徒の希望する級に向かって取り組ませ,合格させることで,生徒に自信を付けさせることができる。最終的には,自分の目指す小さな目標に向かって生徒自らが努力を重ね,目標を達成し,成功感や成就感を味わうことができる。つまり,小さな目標を1つ1つクリアし,次の目標に向かって努力するということの大切さを知ること,英検合格を目指している生徒一人一人が自ら「生きる力」を育成することにあると私は考えるからである。調査・研究から判ることの1つに,この10数年,オーラル・コミュニケーション重視の傾向により,これまでの4技能の「読む」,「書く」から「話す」,「聞く」に重点が置かれ,それにより出題内容が変化してきていることは顕著になっている。そのために過去の出題傾向を調査してきた結果,英語教育の流れと共に新傾向の問題が出題されてきた傾向がある。新傾向の問題に対しては何らかの対策と指導をしなければならないと,ここ10数年の間,強く考えてきた次第である。私が本校に赴任してきた平成13年度から,対策と指導に取り組んできた経緯の中で,生徒との出会いや合格までの試行錯誤の過程を ALT との共同作業も含めて,これから述べることにする。 |
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2 合格への軌跡1
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この生徒を頭文字のイニシャルを取って,Y.H さんとし,これからは Y さんと呼ぶことにする。
'01年度以降,2級合格者が出てきたのは本校の英語科の英検特別補習プログラムでの成果が現れた結果だと言えよう。'03年度より本校が学科改編により「総合学科」に移行し,4級受験者が'03年度よりいなくなった。しかし準2級,3級は受験者数の割には合格者の比率が高くなく,3級受験者に対しては,中学校単語の復習,準2級受験者に対しては,受験単語を含めた単・熟語の習得が必要である。対策としては,過去の問題に取り組ませ,慣れさせることが大切だということを認識させることであった。また,3級に合格しても準2級となると英語学習を学校だけでなく,自宅でも継続的に学習することが必要である。しかし,高校生活の中では,英検取得に対する熱意が学年ごとに薄らぐ現状があり,いかにその熱意を継続的に意識させ,より高い級の習得に向けさせるかが課題である。 |
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3 合格への軌跡2
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Y さんは1年次はすべての教科で常に上位の成績を保っていた。彼女の成績なら1年次の2回目や3回目で準2級を受けられる実力があると思われたが,他の検定試験を受けたいという申し出があり,1年次は英検は受験しなかった。2年次には必ず英検を受験することを指導しておいた。しかし,秋の2年次のクラス編成希望調査の際に,彼女が選択した進路は就職という選択だった。クラス希望も進学クラスではなく,就職希望者の多い総合クラスを希望した。何事にも積極的に取り組み性格的に明朗活発な彼女のことであるから卒業後,社会に出ても十分にやっていけると思った。しかし,何一つも資格を取得せずに卒業するのは,彼女の将来性が危ぶまれた。再度話し合った結果,いろいろな資格検定を取って卒業するという約束をした。その中で英検は準2級を3年生の1回目で合格することを約束に指導することに決めた。しかし,問題の傾向の対策なしに合格は厳しいので,指導及び方法を下記のように計画して,今後の取り組みを確認した。
ここで,彼らが参加するに当たっては,
以上の3点を約束事として,計画とともに提示した。このようにして,2年生の新学期から5名の参加者で実質的な指導が始まった。
当初の取り組みのうちは,緊張感もあり,出席状況や課題も良好であった。しかし,単語テストを毎回実施した結果,「英検合格のための語彙力が不足している」ということを痛感するようになった。
3級までは中学生の範囲内での知識で合格できたが,準2級からは何らかの対策が必要となる。中学時の単語も十分に習得していないのに,準2級の単語は急には詰め込められない。当然,上記の領域や内容も簡単には達成できない。もう1度中学校からの単語を復習させようかと思ったが,時間に制約があった。そこで,これまで教科書や問題集で出てきた基本的な動詞を抽出し、意味や文型で分類し,それに簡単な例文を作り,どういう時にどの単語を使うかを徹底的に覚えさせた。
基本的な動詞140語を2ヶ月間,6月まで復習後,また準2級の単語テストに戻り,授業も従来のやり方に戻った。驚いたことには,上記の単語より難しい準2級必須の単語を全員ほぼ満点の点数を取るようになった。その理由をたずねてみると,「単語の意味は分かっていても,それらをどういう場面で,どの単語を使うかに戸惑っていた」と話してくれた。しかし,「2ヶ月間の単語学習を行ったために,これらの疑問が解消されて,単語がどんどん入ってくるようになった」と言う。この言葉を聞いて,私たちは,そのことを気づかずに単語を詰め込むだけの授業をしていなかっただろうか,という反省の機会を得た。それから月数回,ALT の協力を得て会話の時間を設けた。ここでは140の単語を会話中に生徒に意図的に使わせるように ALT が方向づけをしてくれたが,これによってYさんたちの会話力が回を追う毎に向上したのである。改めて,会話においては難しい単語は必要なく,基本的な単語を繰り返し使うことが大切だということがわかった。 ALT と Y さんたちの間で交わされた会話を通じて,自分自身も140の単語を再認識することができたのである。
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4 ALTによる分析と共同作業
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平成13年7月に来日した ALT の Andrea(Andrea Leigh Rhynard:カナダ出身,H13年7月〜H15年7月勤務)に,日頃の取り組みと並行して準2級の問題をさまざまな角度から分析してもらい,共同作業を行った。これは後任の Deirdre(Deirdre Kirsten Roberts:アイルランド出身,H15年7月〜H16年7月勤務)まで協力してもらい,Y さんたちの試験直前まで従来の取り組みとともに,放課後学習で実践した内容である。当初,分析の方法が問題であったが,分析の視点を明確にする方針を決定して,次の2つの視点から準2級の問題の分析作業を進めていくことにした。
実際,準2級は平成6年度に新設された。それ以前は3級をクリアした受験生が,2級を目指していたが,ハードルが高すぎて挫折する者が多々いた。しかし,中間レベルの準2級の設置で目標を徐々にクリア出来るということで,この準2級と併せて準1級はこのレベルの受験生には歓迎された感がある。当初は6問の構成で,問題数55問,満点55点,試験時間65分であった(リスニングテスト除く)。そして平成14年度に至るまでに内容にも変化が見られ,問題数も5問減となっている。
オーラル重視の傾向を反映して,わずか8年間で問題傾向がこんなにも変化している。
そして,私たちが最後の取り組みとして行ったことは,過去問の「空所補充問題」の全解答から,データとして頻度の高いものを抽出し,それを分類して指導することであった。平成6年度第1回から平成14年度第3回まで問題数が580問あり,まとめるのに多少時間がかかったが,納得いくものに仕上げることが出来た。ここでは代表的なものとして,最も頻度の高いものを,カテゴリーを問わずに挙げることにする。
上記にあげた最も頻度の高いものは,38語(句)あるが,意外なことに580問ある中で,3度以上頻出したものを合計しても,44語(句)で,他はすべて1度ずつということになる。準2級と2級の問題は,大学入試レベルであるので,ほとんどの文法とこの語彙の使用数は納得できる。そして,この作業で気づいたことは,私たちが単・熟語集で見る語(句)の頻度数が少ないように見える。しかし,これは1文1文をよく読むと,一見,見落としがちであるが文中の解答以外の所でしばしば書かれており,重要語句が解答のみで出されているとは限らないということに注意し,併せて指導しなければならないことに着目したい。 |
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5 合格への軌跡3
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そして,今年3月1日に無事卒業。自分にとっても Y さんたちを含め,担任として,自分のクラスの生徒たち全員を無事卒業させることができ,充実感の大きい年であった。「なんだ,たかが準2級じゃないか。」と考える先生や生徒がいるかもしれない。しかし,各々のレベルの生徒が目標にする級の試験に努力することが大切である。アンケートの中には,紙面の都合上掲載はしていないが,「周りから実力があると認められるのは,何級からだと思いますか。」の質問に,ある生徒の「すべての級ですごいと思います。英検は級にこだわらず,受けることに意義があると思います。」の回答が印象に残る。 |
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6 アンケートの実施と一考察
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平成16年度第1回の1次試験の終了後,本校生徒の英検や英語学習に関する内容を18項目に及ぶ質問事項にして実施した。
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7 終わりに
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これまで,自分が学校の中で,継続的に携わってきた内容のものを文章にまとめたいという気持ちが,今回のこの論文となって現れた感がある。英検を中心に内容を展開してみたが,改めて自分なりに「英語学」を学んだような気がする。大きな社会の変化に伴って教育現場も変革期を迎えている。教科としての英語もこれからますます成長(あえて「変化」という言葉は使わない)していくだろう。実際,「英語をコミュニケーションのツールとする時代」に向けて,いろいろな発想で,いろいろな試みが,従来の英語教育のフィールドの外から始まっている。私たちもそれに合わせて成長していかなければならない。「言語は生きている」。英検を指導してきてつくづくそう思った。これは自分の経験でもあるのだが,ある日突然,「どんな英語でも,苦労せずにすらすらと頭に入ってくる」と感じられる日が来るのである。それは,とても感動的な瞬間だ。リスニングで言えば「このことは,英語で聞いたのだったろうか,それとも日本語で聞いたのだったろうか」と後から思い出して区別できなくなる。こうした経験をすると,英語の勉強は,楽しくてやめられなくなる。このような私と同じ思いをする生徒を1人でも多く増やしていくために,これからも実りある実践を続けていきたい。 |