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To Read between the Lines
行間を読む
旭川工業高等専門学校教授
十河 克彰
 手書きであろうが,印刷であろうが,line と line の間は空白です。何も書いてありません。その空白を「読め」,と言うのですから,おかしな話です。「何もございませんが,どうぞ召し上がってください」,と言うのと似ています。How do you eat nothing? 「何も無い物をどうやって食べるのか」,と英語人に言われます。反対に,How do you read between the lines? と言いたくなりますが,日本語も同じ言い方をします。「行間を読む」,です。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

 「この文のどこがよいのか」,とWales出身の先生に聞かれたときの話を,我が旧師から聞いたことがあります。川端康成がノーベル賞をもらった頃だそうです。雪のないUKで生まれ育てば,たとえ,Wales からEngland へ国境を越えたからと言って,その瞬時に風景が変わるわけではありません。ところが1月,何らかの花が咲く関東平野から,トンネルを抜け北陸に入ると,まったく違う風景が車窓に飛び込んできます。一面の雪景色です。スキーに行く人は歓声をあげるでしょうし,雪の嫌いな人は思わず暗い気持ちになるかもしれません。トンネルを通過するわずかな時間で,別世界に入るのです。「どこでもドア」を実感します。

「大根引き大根で道を教えけり」(一茶)

 大根は,「ダイコン」でしょうが,江戸っ子は,「デエコ」と発音したようです。大工は「デエク」,痛いが「イテェ」,無いが「ネェ」,つらいが「ツレェ」,になります。生まれも育ちも,葛飾柴又の寅さんは,「そこが渡世人のツレェところよ」,と啖呵を切ります。
 「デエコ引きデエコで道を教えけり」,と当時の江戸人は読んだと思います。
 「この句の季語は大根で,冬である」,と教わり,北海道で生まれ育った私はまったく理解できませんでした。旭川から1時間半ほど飛行機に乗れば,東京に着きます。白一色の国から,緑の国に短時間で移動すると,いつも,気持ちは高揚します。夏場の移動とは違います。一月,緑の大根畑をみると感激するのです。一茶も雪国,信州信濃の出です。

 英語も行間を読まなければなりません。とある男女の会話です。

Stopping the car in front of her place, he said to her, “Thank you for tonight.”
Then she replied, “Thank you,” placing the stress on ‘you.’

「女の家の前で車を止め,男は女にいった。『今夜はありがとう』。すると女は,you を強調しながら,『ありがとう』といった。」

 この訳では,この場の二人の雰囲気が伝わってきません。you にストレスを置いて,thank you と言えば,感謝すべきは私の方で,「こちらこそ,ありがとう。お礼を言うのは私の方よ」の意味です。要するに,この女性はこの男性と過ごした時間が楽しかったわけです。