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Two Holer
所変わればトイレも変わる
旭川工業高等専門学校教授
十河 克彰
 日本最初の英語教師, Ranald MacDonald のことを書いた吉村昭の『海の祭礼』に,日本式便所を Ranald が初めて使うところがあります。Ranald は戸惑います。使い方が分からないのです。現物を見れば一目瞭然,この悪臭付の施設の使い方は,なんら説明などせずとも分かるだろうに,と役人は思います。一方,Ranald は使い方を理解できず,立ちすくみます。役人は日本式便所しか知らないのです。便所は世界共通のものと,思っていたのかも知れません。
 Ranald が慣れ親しんでいた当時のアメリカのトイレは,『大草原の小さな家』にも出てきますが,戸外にありました。ですから,outhouse と言います。地面に穴を掘りそれに合わせて仮小屋を置きます。移動するのが前提ですので固定しません。穴,cesspit がいっぱいになると,また別の場所に移動します。
 outhouse は,辞書に記載されています。LECD (2003) には,

“AmE. a small building over a hole in the ground that is used as a toilet in a camping area or, in the past, behind a house.”

「アメリカ英語,地面の穴の上の小さな建物,トイレとして,キャンプ場で用いる。かつては,家の裏にあり」


 ところが,outhouse の別称,two holer は私の辞書には記載がありません。two holer に初めてお目にかかったとき,調べるのに苦労しました。「two holer を一度も見たことがない」と,アメリカの友人にメールをすると,open museum で写した写真を送ってくれました。上の写真です。穴は1つですが,two holer です。
 これは破格の英語だと思います。英語教師的発想では,ハイフンで結んで,a two-holer-toilet とすべきでしょう。Long time no see. 「久しぶりですね」,と同列のものかと思います。
 「どこの誰が触れたか分からない洋式腰掛トイレより,どこにも触れずに使用する,日本式の方が清潔で,私は好き」,といったU.K.のご婦人を思い出します。最初,日本式の使い方が分からなかったそうです。