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Miller Time
ビールの時間ですよ
旭川工業高等専門学校教授
十河 克彰

 本を読んでいて、理解不能な言葉に出会いました。話の内容は次のようなものです。会社の上司が部下に、野外での仕事を手伝ってもらいます。仕事を終え、上司は彼らに、 “Miller Time” に来てくれないかと頼みます。原文は、

 “They helped me with branding on my small home ranch. After we finished I asked them to my home for Miller Time.”
 Les Schwab, Maverick Publications, 1996, p.100.

 「私の小さな牧場で焼印押しを手伝ってもらった。終わってから我が家へ “Miller Time”.に来てくれるよう頼んだ」(筆者訳)

 さて、 “Miller Time” が分かりません。私のどの辞書も反応を示しません。想像をたくましくしてもダメです。 その後、 “Miller Time” についての記述はありません。もしこれが、教室で教えるとなると本当に困ります。学生諸君の中には、英語教師にわからない英語はない、と思っている人がいるのです。
 こんなときに頼りになるのが、生まれも育ちもカナダの、私の walking dictionary であり informant です。たまたま同席していた彼の友人、アメリカ人も、私の質問を聞くなり、声をあげて笑いました。そして曰く、 “Miller Time” を載せている辞書はないであろう、とのことでした。そもそも辞書で、 “Miller Time” を探すのは的外れ、というわけです。
 サッポロ、キリン、アサヒと並べれば、日本人なら誰でもビールを連想するでしょう。 “Miller Time” は、 Miller という全米第二位のビールメーカーのTVコマーシャルなのです。このコマーシャルがヒットして、 “Miller Time” は「ビールタイム」になったのです。
 上記の英文は、仕事の後、「ビールでも飲んでいかないか」、と自宅に誘ったのです。
 TVコマーシャル出身で、すっかり一人前の生活語になったのに、 “Kodak moment” があります。これは想像がつきます。Kodak はカメラ・フィルムメーカーです。パーティーなどで、「写真を撮るから集まってください」、に当たるのが、 “Kodak moment” だそうです。