|
映画、 The Great Escape、日本名、『大脱走』を懐かしく見ました。第二次世界大戦中ドイツの捕虜収容所で、連合軍捕虜が大規模な脱走を企てる話です。会議を開き、収容棟の床下からトンネルを3本同時進行で掘ることに決定します。一つが露見しても、他の成功が望めます。名前ですが、第一トンネル、第二トンネルとは命名できません。敵地です。code、 符丁で呼ばなければなりません。 指導者は、こともなげに、一番目は Tom、次は Dick、3番目は Harry、とみんなに言い渡します。異議を唱える者はいません。瞬時で決まりました。 以前この場面を見た時は、全く気がつきませんでした。これは慣用句なのです。「猫も杓子も」にあたる慣用句、 “every Tom, Dick, and Harry” を踏まえての命名なのです。Tom, Dick, Harry の順序は不変です。しかも、ごくありふれた名前なので、 “How's Harry?” とか “Dick is under the weather.” と言っても、怪しまれません。おまけに、収容所には女性捕虜はいないので願ったり叶ったりです。
しかし、ふと、「この慣用句には、 “Man is mortal.” 同様、女性も含まれるのだろうか」と思い、それとなく以下の英文を書き、2、3のアメリカ人に見てもらいました。
He had promised me not to tell my trouble to others, but he told it to every Tom, Dick, and Harry.
Every Tom, Dick, and Harry knows that Mt. Fuji is the highest peak in Japan.
問題なしとのことです。そこで、女性名のないことを指摘すると、初めてこの矛盾に気づいた様子でした。私たちも「猫も杓子も」と言っても「猫」など念頭にありません。英語人も男女の区別は頭にないようです。
売り込み口上 ( sales talk / sales pitch) の clich に、 “Not every Tom, Dick, and Harry gets a chance like this.” 「こんなうまい話はまたとない」がありますが、こう言って、女性にも売り込むそうです。
註:この慣用句には、人を見下すようなニュアンスもあるようです。
Marvin Terban, Scholastic Dictionary of Idioms: more than 600 phrases, saying & expressions, p.58, Scholastic Inc., 1996.
|